道路構造物ジャーナルNET

計画的に対策しLCCを縮減

ひょうごインフラ・メンテナンス10箇年計画を策定

兵庫県
県土整備部 土木局 
前 道路保全課長(現 姫路土木事務所長)

濱 浩二

公開日:2015.05.01

塗替えは1種ケレンが基本
 塗膜剥離剤の採用を予定

 ――鋼橋の塗替え実績と今後の予定は
 濱 平成26年度は9橋で塗り替えを行いました。27年度は6橋で施工する予定です。塗替えは基本的に1種ケレンを施しています。また、腐食が進行しやすい鋼橋の桁端部など、限られた範囲で部分的に塗装劣化が進んでいる箇所には修繕コストの縮減や環境負荷の観点から部分塗替え塗装を実施しています。
 ――ポリ塩化ビフェニール(PCB)や鉛などを含有する塗膜の除去はどのように行っていますか
 濱 従来型のブラストや電動工具による除去工法と比較し、鉛・クロム・PCBなど有害物質を含む廃棄物の処理が容易で環境面およびコスト面に優れる塗膜剥離剤の採用を予定しています。
 ――耐候性鋼材を用いた橋梁の損傷事例はありますか
 濱 現状では桁端部も含めて深刻な損傷はないようです。尤も当県では供用年数が最長でも20年たっておらずまだ短いということもあります。
 ――トンネルは
 濱 平成24年度に起きた笹子トンネル天井板落下事故を踏まえて、ジェットファンなど重量構造物の緊急点検を実施しました。25年度には照明施設や非常用施設等の設備点検を実施しました。その上で同年度に覆工コンクリートや照明施設などの修繕更新計画を策定し、ひょうごインフラ・メンテナンス10箇年計画の中に位置付けています。

法面、自然斜面など要対策箇所は1,700
 重点450箇所を10年間で対策

 ――全国的に異常気象などによる土砂災害が相次いでいますが、兵庫県として道路に面する斜面や古い法面などをどのように補修補強して道路を守っていきますか
 濱 平成8、9年度に「道路防災総点検」を実施し、点検個所を「要対策箇所」、「経過観察箇所」、「安定している箇所」の3つに区分して評価しています。このうち緊急輸送道路上の要対策箇所626箇所は優先的に対策を実施し、すでに完了しています。
しかし近年、集中豪雨の多発など気象の変化や森林の荒廃(写真は平成21年台風9号水害後の佐用町内)などにより、過去の点検箇所以外でも土砂崩壊などの被害が発生しているため、未対策の「要対策箇所」をはじめ、「経過観察箇所」や「安定している箇所」、大雨などにより土砂崩壊が懸念される箇所など、約7,700個所で平成24年度に防災点検を実施しました。
その結果、自然斜面において要対策箇所に約1,700箇所を指定し、緊急輸送道路上や交通量の多い箇所(一日1万台以上)などの約450箇所について26年度からの10年間で重点的に対策を進めます。特に、緊急輸送道路上にある約180箇所については、「地域の防災道路強化プラン」に位置づけ、平成28年までに対策完了を目指します。
加えて26年度に行った道路ストック総点検と併せて実施した法面構造物等の点検結果を27年度にひょうごインフラ・メンテナンス10箇年計画へ反映する予定です。具体的には点検で見つかった危険箇所約80箇所を27、28年度の2年間で対策する予定です。豪雨によるがけ崩れなどの災害は、過去に被災した個所の近くで再度起きることが圧倒的に多く、法面構造物が劣化した個所やその近くの未対策の自然斜面を対策していくことは重要であると考えています。
 ――具体的な対策は
 濱 検討中です。ほとんどは積みブロック程度の小規模なものですが、日本海側などでは過去に対策した巨大な法面もあり、どう対策するか費用の面も含めて悩んでいます。

県単位で初めて橋梁点検車を購入
 トンネルではレーザー3次元計測システムを採用

 ――新技術やコスト縮減策または県独自の技術・材料の活用について
 濱 都道府県の自治体では全国で初めて橋梁点検車を購入しました。
また法面構造物等の点検に、全方位360°カメラによる健全度判定を導入することで路上での点検作業を大幅に削減し、コスト・工期共に縮減を図っています。平成26年度は同手法を用いて県下の全路線を撮影して健全度判定を行いました。
尚、カメラで判読できない箇所については、踏査の上、構造物の健全度を把握しています。また、トンネル点検では、通行規制することなく覆工コンクリートの損傷を把握するために車からレーザーを照射し、コンクリート表面の凹凸など変状を計測できる「レーザー3次元計測システム」による調査を今年度試行しています。
 ――県内市町村の橋梁長寿命化修繕計画の進捗状況について
 濱 政令指定都市を除き、県内には40の市町があります。その内平成27年3月末時点で市町が管理橋梁数は約20,300橋に上ります。長寿命化修繕計画策定済みは33市町でなお7市町が計画を策定中です。今後は市町の負担を減らすため、県の外郭団体である兵庫県まちづくり技術センターが希望する市町の点検を一括で受けていく方向です。同センターも橋梁点検車をリースで確保すると聞いています。なお策定済みの市町数には、計画策定対象橋梁を全管理橋梁ではなく、当面の計画策定対象橋梁を指している市町を含みます(例:15m以上に限定、ボックスカルバート以外など)。
 ――付言して、今後の課題は
 濱 橋梁の対策はある程度進んできましたが、法面構造物等の老朽化対策は未だ手探りです。また、もっと基本的な問題として、修繕業務を業者が受注してくれないという状況があります。PC橋の大きな修繕事業などは特にそうです。ある程度数をまとめないと一般管理費からして合わないという声を聞いたりしますが、都合よく現場が近い修繕工事というのは中々なく、技術的に優れた大手PCファブは手を挙げない状況もあり、昨年度は橋梁の新設と修繕を合冊で発注し、施工していただきました。

調査・設計・施工一括発注を試行
 保全事業の不調・不落対策

 ――抜本的な対策は何か考えておられないのですか
 濱 調査、設計、施工までを一括して発注する方式を26年度に試行しました(姫路土木事務所内で10㍍以下のRC床版橋4橋で試行)。平成27年度は更に橋長の大きな橋梁へも試行の対象を拡大する予定です。点検時の不備や実施段階で追加工事が発生することで請負業者の負担を増大させるケースが多いのは県も認識しています。その対策の一環として施工前調査から施工業者で実施し、施工業者がきちんと橋梁の状態を把握して設計することで、調査設計にかかるコストと時間を抑制する施策です。
 ――ありがとうございました。

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