表面被覆工やシラン系の表面含浸材で塩害対策
上部工補修は27年度41橋施工
――塩害・アルカリシリカ反応による劣化は
濱 塩害から申し上げますとコンクリート橋では、表面保護工を実施し、鋼橋では塗装塗替えを順次実施しています。なお、日本海側、山間部、海岸線に隣接している淡路島のRC床版橋などについては(凍結防止剤や飛来塩分による)塩害による損傷が著しく補修が困難であると判断されたものについては、学識者の意見も頂きながら架け替えを行っています。補修補強は、損傷の進行抑制として外部からの水分や塩分の侵入を防ぐ表面含浸工法(シラン系)や表面被覆工法を採用しています。
アルカリシリカ反応による劣化が疑われる橋梁は橋台などを中心に数か所あります。損傷が大きい場合は構造体としての機能を回復させるひび割れ注入工法や劣化個所をはつり飛ばして断面修復を施しています。塩害による補修と同じく含浸工や被覆工を併用するケースもあります。
――補修補強の具体的事例は
濱 少し前になりますが、西脇市の県道上鴨川西脇線 鹿野大橋ではゲルバーヒンジ部に大きなひび割れを伴う損傷が多数発生しました。そのためヒンジ部を補強した上で、下部工にはシラン系の表面含浸工、上部工には表面被覆工を施した事例があります。
――上部工の補修補強の実績と平成27年度の予定は
濱 23~25年度の3年間で118橋の補修が完了しており、26年度は46橋で対策が完了しました。27年度は41橋で補修が完了する予定です。
床版防水工設置の有無は未把握
ジョイントのシームレス化も一部で実施
――桁や床版、支承周り、下部工に至る漏水による損傷は、床版防水の敷設と伸縮装置の止水構造の有無が大きなウエイトを占めいていますが、その状況は
濱 防水は断面修復工やクラック注入工と合わせて実施しており、既設橋梁には塗膜系(アスファルト加熱型)の採用事例が多くなっています。橋梁ごとの床版防水の設置の有無は把握していません。
アスファルト塗膜系の床版防水を採用
補修する半数以上の橋梁で伸縮装置の取替えを行っています。
伸縮装置は、取り換えの際は止水性を有する製品に取替えています。また、近年はヒートロック工法などシームレスジョイントで更新する事例も数橋で実施しています。平成26年度は25橋で更新しました。27年度は30橋で更新する予定です。
――ジョイント止水構造のフェールセーフや桁座のテーパー付けは
濱 現状ではありません。
――支承は
濱 伸縮装置と同様、半数以上の橋梁で補修および更新しています。とりわけ支承は更新するケースが多く、損傷が軽度であれば溶射による若返り工法などの補修を行っています。26年度は33橋で補修・更新しました。27年度は40橋で対策する予定です。
2橋でリパッシブ工法を採用
グラウト未充填部のPC鋼材腐食対応
――その他の対策は
濱 国道373号線の馬場橋、宮前橋において、グラウト未充填箇所が確認されました。そのため、補修工法について神戸大学の森川秀典教授に助言を頂きながら、リパッシブ工法(亜硝酸リチウム水溶液での洗浄、亜硝酸リチウム添加補修材の再注入)を平成25~26年度に実施しました。リパッシブ工法を採用したのは両橋のPC鋼材の腐食が進んでおり通常のグラウト充填では長期的に見て危険と判断したためです。現在、その効果についてモニタリングを継続していますが、少なくとも短期的には効果を発揮しているようです。
馬場橋の損傷状況
宮山橋の損傷状況
同橋のPC定着部は上縁定着ですが、こうした対策をするときは舗装が傷んでいなくても床版防水もセットで施工し、水の進入を防止しています。