アルカリ骨材反応の疑いある橋は10橋前後
伸縮装置交換は約60橋を予定
――伸縮装置や支承の交換は
上坂 平成26年度は63橋で伸縮装置、埋設型ジョイントは橋長の短い4橋で採用しています。支承3橋で交換しました。27年度も同程度を予定しています。
――塩害やアルカリ骨材反応の有無および対策工法は
上坂 塩害について実数は把握しておりませんが、沿岸部の庄内地方を中心に、凍結抑制材散布の影響もあり、全県で主桁・床版・下部工等において損傷が報告されています。アルカリ骨材反応対策の疑いがある橋は10橋前後です。
最近の施工事例としては、アルカリ骨材反応対策として施工した東宮新橋(上山市からの移管橋)があります。下部工の損傷が著しく、亜硝酸リチウム注入工法で補修しました。
東宮新橋(アルカリ骨材反応の疑いのある橋脚) 亜硝酸リチウム注入工法の実施状況
塩害の代表橋梁としては金沢陸橋(鶴岡市金沢)があります。PC桁が塩害による損傷を起こしており、外ケーブルや炭素繊維シートによる補強を施しています。
金沢陸橋全景 外ケーブルによる補強
また、シラン系含浸材を塗布することで予防保全的に補修する手法も採用しています。
27年度以降で塗り替え予定は24橋
基本的に1種ケレンを採用
――今年度の鋼橋塗り替え予定(橋数と面積)と、来年度の見込み(同)はまた塗り替えの際の全体的・部分的な用途でもいいので溶射など新しい重防食の採用などについてもお答えください。また、PCBや昨年の厚生労働省・国土交通省からでた文書を受けて、鉛など有害物を含有する既存塗膜の処理についてどのような方策をとっているのか教えてください
上坂 26年度は26橋で重防食塗装に塗り替えを実施中です。また27年度以降に現在着手を予定している橋梁は24橋です。塗り替えに関しては1種ケレンを基本にしています。既存塗膜の処理については塗膜剥離剤の使用やブラスト処理時の適切な作業員の安全対策を考慮しながら工法を選定していく方針です。
――耐候製鋼材で建設した橋梁の損傷事例は
上坂 悪性錆が出ている事例もあります。損傷理由としては湿潤雰囲気にある個所や凍結防止剤がかかる場所で損傷が起きているようです。補修はブラストをかけて損傷部を再塗装しています。
2年連続で大きな水害が襲った置賜地域
H29年度までかけて改良復旧
――一方、近年頻度を増す水害などへの対応は
上坂 南陽市を中心とした置賜地域で2年連続大きな水害が起きています。特に昨夏は南陽市の吉野川、織機川流域で甚大な被害が生じています。例えば織機川は並行して県道・市道が走っており、その氾濫によって県道・市道が流失してしまいました。応急復旧は終えていますが、本格的な災害復旧は計画洪水量を見直し、平成29年度までかけて改良復旧を行う予定です。例えば吉野川では、流域の河川の改良およびそれに伴う橋梁の架替えを6橋(国、県、市がそれぞれ2橋ずつ)で行う予定で現在設計を進めています。1967年8月26日~28日に起きた羽越水害で、被害を蒙った多くの河川が改良されましたが、吉野川は被害がなく改良されておらず今次の被害を受けました。橋梁では下部工が洗掘したり桁が損傷したりしており、応急復旧で仮橋を架けています。今回はそこをしっかり治し、橋梁はできるだけ1スパンでとばし、河積阻害率を少なくするなど、安全を確保したいと考えています。
(一)赤湯宮内線 吉野橋 橋脚部が洗屈を受け沈下、路面が10㌢下がった(左写真)
(一)原中川停車場線 小巖橋(選奨土木遺産 山形の石橋群 の一つ)も損傷を受けた(右写真)
(主)米沢南陽白鷹線
一級河川織機川(おりはたがわ)と並行する区間で4.7kmに渡り護岸の崩壊、路肩欠損等の被災を受けた。
土砂災害については、土砂災害警戒区域の指定については、当県は非常に進んでおり、来年度中に全て完了します。今も要配慮者支援利用施設のうち24時間入居型の施設については、集中的に砂防堰堤等を造る取り組みを今までもやってきましたが、今後は人口集中地区(50戸以上)でそこにやむをえず避難所もある区域の砂防堰堤等の設置を優先的にやっていきます。
道路への法面崩落危険地域の指定、対策については、平成19年に落石・崩壊、岩石崩落、雪崩の3項目に重点をおき、見直しをしています。特に緊急輸送道路や孤立集落へのアクセス道路について重点的に対策を施しています。また、笹子トンネルの崩落事故を受けて、橋梁・トンネル・(ロックシェルターやスノーシェルターなど)道路構造物、法面関係などのストック総点検を行っています。危険な個所が見つかれば直していく方針です。
要対策1,227個所に対し対策済みは449個所
今年度末まで優先対策箇所を完了予定
ただ平成19年に定めた要対策1,227個所に対し、平成25年度の対策済み個所は499個所にとどまっています。特に優先的に整備することにした164個所に対しても要対策箇所は25年度末で90個所と半数を超えた状況です。特に優先的に整備すべき要対策箇所については30年度の完了を目指していましたが3年前倒し、27年度末の完了を目指し整備を進めています。
――人工法面の健全性について
上坂 道路法面など構造物の点検については平成26年度から始めました。モルタル吹付け法面については台帳整備もやっていなかったため施工時期もつかめておらず、箇所の把握も含め台帳を整備していく方針です。老朽化している箇所もあり補修が必要な箇所もあると考えています。点検は数年かかる見込みで点検と補修は並行して行っていく方針です。
――トンネルについては
上坂 県管理のトンネル58本ありますが全て長寿命化修繕計画を策定しており修繕の必要のあるトンネルは全て対策工事を行っていく予定です。緊急的に対応が必要なトンネルはありません。なお工種はNATMが36、在来矢板工法が22となっています。県単独の管理トンネルとしての最長トンネルは大井沢トンネル(1,565㍍)です。在来矢板工法で最長は下向2号トンネル(723㍍)です。損傷としては従来は漏水が確認されていましたが、平成23年度から行った1巡目の点検の結果、ひび割れが併合してブロック化する恐れのある箇所や縦断方向のひび割れのある箇所(背面空洞の可能性が懸念される)については適宜当て板やモルタル充填などで補修しています。県管理では笹子トンネルのような天井版のあるトンネルはありません。
――今後、人口減に伴いコンパクトシティなどが推進される方向にありますが、それに伴って道路の取捨選択は考えておられるのでしょうか
上坂 国道・県道については幹線道路でありしっかりとした管理が必要と考えています。問題は毛細血管的な位置づけにある市町村道路で、これらは全て現在のレベルで維持管理していくのは難しいかもしれません。しかし、大型車の交通を規制するなどの工夫を施せば橋梁などの寿命は延びます。そうした施策や(限界)集落の動向を見ながら考慮していく課題でしょう。県として対策を示すということは現在は考えていません。
橋梁調査会や東北大学から識者を招いて講演
市町村の維持管理レベル向上図る
――市町村の管理レベルは、国や県に比べてどうしても劣ることは事実だと思います。浜松市の原田橋(崩落して市職員2人が死亡した)などの事例もあります。県としてそうした市町村をどのように支援していきますか
上坂 維持管理レベルを向上させることが重要です。先日も県が主催した市町村向け技術講習会に橋梁調査会の西川和廣専務理事、東北大学の久田真教授に来ていただいて、講演していただきましたが、ある程度目視でチェックする見分けはインハウスエンジニアリングが見て、判断が難しい箇所は専門家になるべく一括で見てもらうというように点検・診断業務を分けて考えていかなくてはいけないと思います。それと危険な個所は思い切って通行止めにするような措置も必要です。そうしなければ予算的に回っていきません。
ただ、現在はやっと市町村が補修を始めたわけで、これから課題を吸い上げてメンテナンス会議などの場で意見を述べていただき改善していきたいと考えています。
――点検だけでなく、たとえば老朽化したもの、著しく河積阻害している橋梁などの架け替えについても県が指導するようなことは考えておられますか
上坂 そうした課題も今後メンテナンス会議の中で議論されていくと思います。
――ありがとうございました