県管理橋梁は2,346橋
約8割が供用後30年を経過
――次に保全について山形県が所管する橋梁・トンネルの概要は
上坂 県内にある橋梁は約9,000橋あります。そのうち県管理は2,346橋です(県道路公社管理の3橋を含む)。橋種別では鋼橋609、PC730、RC581、ボックスカルバート423、石橋3という内訳です。橋長別では5㍍未満が522橋、5㍍以上100㍍未満が1,602橋、1008㍍以上が222橋となっています。県管理最長橋は最上川河口部にある庄内出羽大橋(800㍍)です。石橋については3橋とも供用から100年以上経過しています。昨年度の豪雨災害で1橋被害(小岩橋)を受けましたが、土木遺産に認定されていることもあり、原形復旧する予定です。
供用後の経過年数は8割以上が30年以上となっています。
――対策の進捗状況は
上坂 県は平成16年度から橋梁点検を始めており、19年度には橋梁長寿命化修繕計画を策定しています。県下の市町村については昨年の8月までに策定を終えました。県は昨年度2巡目の点検について概ね半分(1,188橋)を終えました。
対策状況ですが、山形県は要対策橋梁が(1巡目で)約1,428橋ありましたが、平成25年度末でその半分程度(699橋)の対策を完了しています。平成26年度はさらに259橋の対策を進めている所であり、平成27年度は156橋(別途横断歩道橋2橋)で対策を進める予定です。
一方市町村は要対策橋梁のうち4.5%程度しか対策を完了していない状況です。
県は橋梁長寿命修繕計画の性能向上目標として現在60年を想定している寿命を90年に延ばすことを掲げています。対症療法と予防保全的な手法を使い分けて対策を進めており、今後100年間で25%、額にして2,000億円のコスト縮減が期待できるという試算をしています。平成20~26年度までは損傷の大きい橋に対策を施すファーストステージということで年平均38億円以上の集中投資を行ってきました。26~30年度はセカンドステージということで20億円台に金額を落としていますが、的確に対策していきます。
県で橋梁点検車を2台購入
市町村対策については、他県と同様、「山形県の道路メンテナンス会議」を立ち上げております。国交省、県庁、NEXCO、県道路公社、オブザーバーとして東北大学のインフラマネジメント研究センターと山形県の建設技術センターが参加しています。活動内容としては橋梁については、長寿命化研修(8、11月の2回)、JRの一括協議、NEXCOの跨道橋の点検(山形県管轄は完了)などを行っています。市町村から頂いた意見としては予算の確保、人員部族不足の支援、台帳・補修履歴のデータベース化、点検・補修の事例紹介などのニーズがあります。点検の一括発注については県建設技術センターで行うという方向で、昨年度は4件発注しました。 県の新しい取り組みとしては、橋梁点検車の導入(2台購入)があります。点検車がないために点検が進まなくなる恐れもありますので、県が購入し受注業者に貸し出すことで点検を円滑に進めることを目指します。東日本の県レベルでは初めての取り組みです。また、点検診断に必要な資格を取る際の助成も拡充します。今でも自治体レベルでは道路保全のトップランナーと自負していますが、今後とも先頭を走っていけるように努力していきたいと考えています。
鋼桁は防食機能の劣化が主
PC桁は鋼材が腐食膨張、破断している個所も
――点検を進めてみての傾向は
上坂 部位別に申し上げます。鋼桁では1巡目の点検で約4割の橋梁に防食機能の劣化が生じていました。また劣化が著しく腐食に至った橋梁は約26%に達しています。また、少数ではありますが、亀裂およびボルトの脱落も確認されています。2巡目の点検でも傾向は似ており、約6割の橋梁に防食機能の劣化が生じています。腐食にまで至った橋梁は約3割に達しています。
PC桁では主要な損傷としてひび割れ、剥離・鉄筋露出、漏水・遊離石灰があります。一巡目の点検で著しい剥離・鉄筋露出や有害なひび割れが生じている橋梁は5%程度です。ひび割れについてはPC鋼材(シース)に沿ったひび割れが主であり、グラウト充填不足などが原因とみられます。庄内地域の一部では塩害によりPC鋼材が腐食膨張してコンクリート表面にひび割れが生じている橋梁や鋼材の破断が生じている橋梁(前川新橋など)も見られました。剥離・鉄筋露出は被り不足による中性化が原因により生じたものと考えられます。2巡目の点検で著しい剥離・露出や有害なひび割れが生じている橋梁は約1割程度となっている。
RC桁では主要な損傷内容はPC桁と同様、ひび割れ、剥離・鉄筋露出、漏水・遊離石灰となっています。1巡目の点検では1割以上の橋梁で著しい剥離・鉄筋露出が確認されました。有害なひび割れも5%程度の橋梁で確認されました。2巡目でも約1割で著しい剥離・鉄筋露出が確認され、有害なひび割れも同じく約1割の橋梁で確認されました。
――桁補強で特徴的な事例は
上坂 また、RC橋を中心に10㍍以下の橋長のもので劣化が著しい橋梁は、県独自に策定したボックスカルバートのガイドラインに沿って、ボックスカルバートも比較検討していく方針です。また、長大橋については外ケーブルや炭素繊維による補強、架替えなどで対処していきます。
――PC桁の上縁定着の損傷対策は
上坂 あります。対策は充填や(塩分におかされた部分の)断面修復、外ケーブル補強などを状況に応じて対策しています。
鋼床版は腐食、防食機能の劣化が主
RC床版は防水工の未設置が原因と考えられる損傷も
――床版は
上坂 鋼床版について申しますと主要な損傷は腐食、防食機能の劣化です。1巡目の点検では約4割に防食機能の劣化が生じていました。経年による劣化のほか、床版防水工の未設置による漏水も主な原因と推定されます。著しい腐食に至った橋梁は約1割です。亀裂や破断などの重大な損傷はみられていません。2巡目では対象径間数が少なかったため傾向は得られませんでしたが、腐食のほか、亀裂、破断などの重大損傷もいくつかの景観で生じていました。
鋼橋のRC床版の主要な損傷は剥離・鉄筋露出、漏水・遊離石灰、床版ひび割れです。1巡目の点検では、格子状の床版ひび割れが生じた床版は1割未満でした。また、著しい剥離・鉄筋露出が生じている橋梁は約1割ありました。劣化の要因としては凍害や被り不足などが挙げられます。また、損傷の大半は床版防水層の未設置が原因と考えられる漏水・遊離石灰でした。
2巡目の損傷傾向は1巡目同様約1割の床版で著しい剥離・鉄筋露出が確認されたほか、有害な床版ひび割れも6%程度で確認されました。
PC床版の主要な損傷は剥離・鉄筋露出と漏水・遊離石灰です。1巡目の点検では、著しい剥離・鉄筋露出が約1割の橋梁で確認されています。張出床版の端部に凍害や被り不足による中性化が原因により生じたものと見られます。損傷の大半は間詰め部などからの漏水・遊離石灰です。
2巡目でも6%程度のPC床版で著しい剥離・鉄筋露出が見られました。有害な床版ひび割れも2%程度で確認されています。
RC床版は、1巡目の点検では著しい剥離・鉄筋露出が生じている床版は約2割でした。損傷要因としてはPC床版同様の凍害や被り不足が考えられます。なお損傷の大半は間詰め部からの漏水・遊離石灰です。2巡目は4%程度で著しい剥離・鉄筋露出が見られたほか、有害な床版ひび割れも約1割程度の橋梁で確認されました。
炭素繊維部材による下面補強や上面増厚
床版防水工の設置と伸縮装置の非排水化を徹底
――床版の補修補強はどのように行っていますか
上坂 炭素繊維部材による下面補強や上面増厚などが主です。特徴的な手法としては当初の舗装厚70㍉の標準設計を50㍉に落として、路面の天端高を下げて死荷重を減らすなどの工夫も行っています。また、床版防水工の設置と伸縮装置の非排水化を徹底します。ただし、伸縮装置を非排水化しても数年後に漏水を起こしている橋もあり、対策を検討しています。
複合床版防水も試験的に採用
――床版防水の敷設率はいかほどでしょうか。また床版防水はどのような材料を用いていますか
上坂 敷設率は未集計ですが、予防保全型の橋梁では原則として床版防水工の施工を順次 進めています。また、材料としてはアスファルト系防水が主ですが、橋梁上に消雪パイプを配置した個所で複合床版防水を試験的に施工した実績もあります。今後は点検で漏水の有無など性能を検証した上で、防水工については判断していきたいと考えています。
伸縮装置からの漏水により損傷
下部工 著しい剥離・鉄筋露出が見られる個所も
――下部工は
上坂 主要な損傷は、ひび割れ、剥離・鉄筋露出および漏水・遊離石灰です。1巡目の点検では、約3割の径間で伸縮装置からの漏水・滞水が確認されており他の損傷を助長することが懸念されています。また、約1割の橋梁で著しい剥離・鉄筋露出が確認されています。これは伸縮装置からの漏水に起因した凍害が原因と推定されており、伸縮装置の(非排水化やフェールセーフなどの)対策を考えていくことが必要です。2巡目の点検でもほぼ同様な傾向が確認されています。
――支承部は
上坂 主要な損傷は腐食および防食機能の劣化で、桁部と同様の傾向を示しています。
1巡目の点検では鋼支承の約6割で防食機能の劣化が生じていました。劣化が進行し著しい腐食に至った箇所は1割弱あり、伸縮装置からの漏水が原因と考えられます。また、土砂詰まりも約2割の箇所で確認されています。これは伸縮装置からの漏水が支承の腐食や防食機能の劣化を早めたものと想定されます。2巡目も同様の傾向です。
――対応策は
上坂 伸縮装置部の堆積土砂を撤去するとともに伸縮装置の非排水化などを実施することで長寿命化が期待できると考えています。また、劣化した個所は金属溶射等で対応します。
――付属物は
上坂 排水管は防食鋼管かステンレス管を基本にしています。VP(ポリ塩化ビニル)管は使いません。
昭和55年道示より前の145橋で耐震補強進める
平成40年をめどに
――耐震補強の進捗状況は
上坂 山形県では、平成8 年度以降、昭和55 年道路橋示方書よりも古い基準適用橋梁かつ「緊急輸送道路上の橋梁」について、フルスペック(H8 道示対応レベル)での耐震対策を実施しています。また、平成17 年度以降、対策対象橋梁に「山形新幹線をまたぐ橋梁」を加え、効率的かつ効果的な対策を早急に進めるため、フルスペックから3 プロ(※)レベルを基本とする方針に変更しました。今後は先ほども申し上げました通り、『山形県地域防災計画(震災対策編)』に基づき、緊急輸送道路及び孤立集落アクセスルート等に架かる橋梁の耐震対策を進めていくこととしています。加えて、東北地方太平洋沖地震を踏まえ、『既設橋の耐震補強設計に関する技術資料(平成24 年11月:国総研)』が公表されましたが、県においても、平成25 年4 月、供用性までを考慮した『山形県既設道路橋耐震補強計画』を策定し、それに基づき戦略的に推進することとしました。当面(平成40年を目処)は、昭和55 年道路橋示方書よりも古い基準適用橋梁(145 橋)について耐震対策を進めていきます。
耐震補強の対策状況
――進捗状況は
上坂 緊急輸送道路に指定された路線の橋梁については耐震補強をおおむね完了している状況です。平成24年度からは孤立する恐れのある集落へのアクセス道路に対する耐震補強に着手しておりまして、合わせて昨年度から跨線橋の耐震補強にも着手しています。(詳細は下表)。また、新設の項で述べましたが架け替えで対策する橋梁も11橋程あり4橋を完了しています。