5項目の基本事項遵守を徹底
空気量の「下限」を4.5%に設定
――南三陸国道事務所は急ピッチで復興道路事業を進めなくてはなりませんが品質確保のためにどのようなことを行っていますか。
佐藤 効率的な事業進捗のため、発注ロットは大型化しており、短期間で多くの構造物を建設するため、設計や施工が不適切だと、不具合箇所が大量に発生するリスクがあります。そのため、コンクリート構造物については、①凍害に強いコンクリートを製作するため、空気量を4.5%から6%に上げる。②凍結防止剤による塩害が起きないように防錆鋼材(主にエポキシ樹脂塗装鉄筋、エポキシ樹脂被覆PC鋼より線など)を使用する、③排水流末を適正に処理する、④コンクリートの初期欠陥を防止するために施工の基本事項を遵守する、⑤コンクリートを密実にするため適切で十分な養生を施す、という5点です。
まず①から言いますと、現在のJISコンクリートの空気量の規定は4.5%±1.5%ですが、4.5%未満では耐凍害性が低下してしまうため、空気量の下限を4.5%にし、目標として6.0%±1.5%を設定し、特記仕様書に規定しています。
エポキシ樹脂塗装鉄筋・鋼線を採用
――防錆鋼材の使用については
佐藤 エポキシ樹脂塗装鉄筋は現場打ちの場合、RC床版やPC箱桁の上鉄筋、地覆・高欄の鉄筋など凍結防止剤によって損傷しやすい個所に使用します。プレキャスト製品は全ての鉄筋にエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用します。PC桁はエポキシ樹脂被覆鋼より線も採用しています。
床版についてはそんなに楽観視していなくて、施工は丁寧にしようとするんだけれども、ひび割れしやすい板状の構造物じゃないですか。コンクリートが仮に密実でも、ひび割れが一本入ればそれに沿って塩分を含んだ水が入っていくので、やはり鉄筋を被覆して守ってやる必要があります。
ただし、エポキシ樹脂塗装鉄筋は、施工時の引きずりによる損傷が懸念されます。そのため施工の手引書のようなものを各受注者に提出してもらうとともに、(損傷が頻発するようであれば)ステンレス鉄筋の使用も検討しています。
向定内橋の床版に打設されたFAコンクリート 向定内橋の養生中床版
――床版は現場打ちを想定されているようですが、プレキャスト化は考えておられないのですか
佐藤 プレキャスト化されたPC床版は、工場製品だけに品質も安定しています。しかし、現場でPC床版どうしをつなげるために必ず現場打ち部分が発生します。この現場打ち部分は、RC床版と同じように高耐久化が必要で、それらの対策を行わないと床版全体として高耐久化は図れません。
――床版防水についてNEXCOが採用しているような高性能防水化は考えませんか
佐藤 性能は否定しませんが、舗装の寿命(約13年を想定、密粒アスファルト)と同時に防水層も切削されてしまうわけです。(舗装の打ち替え)施工はおそらく時間を区切って半断面ずつ行うことになりますが、そうした条件で高性能防水を施工できるかといえば、コストの面からも施工性の面からも上手くいかないのではないでしょうか。従来の防水工でも継ぎ目部分をよほどしっかりと施工しなければ防水の継ぎ目部分から床版内部に塩水が浸透しかねないと考えています。また、三陸道の想定通行台数は1日1万台程度、大型車混入率は2割弱と踏んでいます。疲労による損傷はまず考えにくく、それ以外の凍害や塩害など水に起因する損傷を考慮して徹底的に対策すれば耐久性は飛躍的に向上するはずです。いずれにせよ多重防護を考えた対応が床版には必要です。
FAを床版に採用
――フライアッシュ(以降FA)を床版に使うとも聞いています
佐藤 横断道路の向定内橋でRC床版にフライアッシュ(JIS2種灰、東北電力能代火力発電所産)を遮塩性の向上を期待して使用しています。副産物としてワーカビリティーの向上も期待しています。但し2~3カ月の長期養生が必要です。施工は3月頃の条件がいい時期に打設(3月20日に打設した)します。
――手厚いですね
佐藤 床版さえ壊れなければ中間支点上の塗装の塗り替えサイクルは30年、40年というスパンに長期化できます。大きな補修も舗装の打ち替えのみに限定できますのでライフサイクルコストを考えれば合理的です。