瀬底大橋で無機塗料
塗替え時に塗膜剥離剤を採用
――塗装の塗り替えについて
嘉手納 今年度は瀬底大橋、上福地橋、福美橋、大保福地橋で約13,300平方㍍塗り替えています。来年度は港原第一橋、伊那嘉原橋の2橋3,600平方㍍を塗り替える予定です。
――瀬底大橋では無機塗料を採用していますね
嘉手納 はい。中央径間部の鋼ニールセンローゼ桁の全面積7,160平方㍍に無溶剤無機系封孔材塗料「パーミエイト」を採用しました。昭和60年の供用開始以来、平成7年~9年に塗り替えをしましたが再度塗り替えが必要な状況で、できればもう少し塗り替え周期を長くしたい。できれば残り30年を想定している耐用年数の間はメンテナンスフリーでもたせたいと考えました。但し、塗り替えに際してはより塩害に強く耐久性の高い材料を選定すること、施工期間の短縮を図ること、海洋汚染につながる材料・工法を避けることが必要でした。そのため平成20年に制定された「沖縄地区鋼橋塗装マニュアル」、17年に作られた「鋼道路橋塗装・防食便覧」を参考にして既存塗料や新材料など5つの塗料を比較検討した結果、15年以上の施工実績および耐久性があり、30年間のLCCが小さい無機系無溶剤塗料を1案、15年以上の耐久性を有している沖縄地区鋼橋塗装仕様を2案として塗料仕様を選定しました。
瀬底大橋の中央径間、鋼桁部では塗り替えに無機系無溶剤塗料を採用した
そして、その2案を①本施工時の仮設工を含めたLCC(長期防錆)、②環境負荷の低減(無溶剤)、③施工性(塗装の層数が少なく施工性向上、工期短縮)、④耐候性(紫外線劣化が少ない)、⑤また、本橋の架設環境が海上架設であり、橋梁のたもとにはビーチがあるため、環境への負荷低減(VOC排出抑制:揮発性有機化合物)――などを検討した結果、30年間でのLCCが小さい無溶剤無機系封孔材塗料の採用に至りました。
同塗料は完全一液の無溶剤タイプであり、有機溶剤の含有および使用はありません。また、無溶剤であり塗料の粘度および表面張力が低いため、塗装面の微細孔へ浸透し、硬化して完全に塞ぎ塗装面を緻密な状態にすることができます。
また、有機塗料系のような紫外線劣化もないため、耐候性は非常に高いと言えます。
今回の瀬底大橋では一般部においては4層、劣化しやすい下フランジ上面などは5層塗りを施しています。
――塗装の塗り替えにあたっては、昨年5月30日に厚生労働省と国土交通省が出した「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落としにおける労働者の健康障害防止について」文書に基づき、どのような塗膜除去手法を用いていますか
嘉手納 ケレンを行い塗り替える橋梁については、上福地橋で「インバイロワン」工法、大保福地橋で「パントレ」工法(いずれも塗膜剥離剤で前者が高級アルコール系、後者が水系)で塗膜を除去した上で電動工具などで2種ケレンして塗り替える予定です。
塗膜剥離剤を採用した
大保大橋で架替えを検討
――大規模橋梁の架替えや大規模補修を予定している構造物はありますか
嘉手納 老朽化が著しい大保大橋(172.85㍍)の架替えを検討しています。また、トンネルの補修・補強は今年度に5カ所で漏水対策を主とした小規模な補修を行う予定です。
――新技術やコスト縮減対策は
嘉手納 羽地奥武橋で橋脚の耐震補強に仮締切が不要で経済性に優れ、掘削および残土処理も少なく環境に優しいピアーリフレ工法で施工しています。
仮締切を必要とするSTEP工法と比較するとコストは4,500万の縮減、工期は6.7ヶ月の短縮になります。また環境につきましても、周囲を浚渫する工法と比較すると水質汚濁等を抑える効果が期待できます。
――ありがとうございました