――他の今年度着工、施工中、完成予定の構造物は
安川 須川新橋と宮脇橋は完成しており、宮脇橋は現在三吉山トンネル工事の掘削土の土運搬路として使用しています。
土運搬の状況(宮脇橋) 新思川橋橋台施工状況(打設後養生中)
新思川橋、新藤吾橋、新関根橋については、それぞれ基礎のベノト杭の施工を完了し、フーチングなど躯体を施工中です。
上部工ですが、新思川橋、蔵王川橋、黒沢高架橋(Ⅱ期線)、第二須川橋、蔵王川橋、蔵王の森橋、白竜大橋、高畠深沼橋、屋代川橋で、現在契約手続きや公告などに入っています。
また、国道13号との並行区間部分のボックスカルバートの拡幅が完了した状態です。
――上部工について特徴は
安川 白竜大橋と高畠深沼橋は先ほど紹介しましたのでそれ以外の橋梁として、黒沢高架橋(Ⅱ期線)は、山形新幹線上を横過することから、き電停止から始発までの間での架設が求められます。JR委託を基本に協議中です。鋼桁の搬入並びに架設は既供用路線の交通と安全確保が必要です。
――トンネル構造物は
安川 まず管内最長(2,980㍍)の三吉山トンネルは、300㍍の掘削を完了しています。現在、掘削方法(爆破掘削)ならびに土搬出方法(ベルトコンベヤー)の段取替えを実施中です。
三吉山トンネル施工状況
高度な技術力が必要なのは、山形蔵王トンネル(944㍍)です。蔵王火山の泥流二次堆積物の土砂山を通過するトンネルであり、蔵王温泉に近く、酢川の酸性(ph2.5)の影響で土壌も酸性から弱酸性です。また、土被りが全区間で2D以下の土砂山トンネルでもあります。このことから本体の品質確保と合わせて、施工時の安全性や周辺への影響が懸念されたため、有識者を交えた技術検討会を実施してその知見を基に設計しました。
具体的には、一次支保工(コンクリート吹付け)のみに期待することなく、覆工コンクリートにも適切な荷重を分担させる設計としました。そのため通常であれば、(覆工コンクリートは)コンクリート強度18Nの無筋であるところを30NにしかつRC構造化しました。
また、100年間の耐久性を考慮して、かぶり厚を20㌢とった上で耐酸性能の高い高炉セメントを用いています。地下水位も高く、施工時に多量の湧水が出る可能性もあります。また、実際のph値はさらに高くなる可能性もあります。
山形蔵王トンネル地質状況
土かぶり厚は全区間で2D(24.6㍍)確保できず、最小で13㍍しかない箇所もあります。また、掘削施工予定地上にはゴルフ場や国道13号があります。この国道13号は日交通量が約37,000台の重交通路線ですので、掘削による影響を最小限に抑え安全性を確保する必要があります。山形県の基幹道路ですのでその安全性確保は施工上の最重要課題です。そのため補助工法は慎重な選定が必要です。