事業期間はおおむね15年を想定
大規模更新・大規模修繕は約3700億円
阪神高速道路株式会社
参与
西岡 敬治 氏
リブの内部を充填
確認手法や材料的な課題を研究
――他に代わる策はあるのですか
西岡 床版下面からの補強方法を民間との共同研究により進めようと考えています。具体的には炭素繊維シートによる補強、鋼板接着による補強などもありますが、他にもトラフリブの直上に輪荷重が懸った時の活荷重が心配ならば、トラフリブの内部を充填して剛性を上げていけばよいと思います。
――鋼板接着の方法を具体的に。鋼床版の鋼板接着による補強は母床版の微妙な変形などにより補強効果が限定されるとも言われていますが。
西岡 リブ間の補強ではうまくいかないと考えています。リブを巻き込んだπ型みたいな格好で鋼板を当てていけば補強効果は発現でいると思います。課題は接着方法ですが、基本はボルトによる添接を考えています。
――トラフリブの充填補強はすでに実績もあります
西岡 実績はありますが、充填の確認手法や材料的な課題があります。
橋脚のASR対策
損傷している梁部だけを取り換える個所も
――下部工については
西岡 大規模修繕の項目でASR対策があります。阪神高速は昭和50年代からASR対策に取り組んでいます。水の供給がASRを促進するため、コンクリート表面の保護工をやってきて安心感があったと思っていました。しかし、平成14年頃に偶々、既設の橋脚の梁の部分をはつってみたら、鉄筋の曲げ加工をしている箇所で破断が生じていました。
損傷が進んだ橋脚(左)、矢印部の拡大写真(右)
ASRが生じている個所について把握するとともに症状に応じて4つのランクに分けて、一番重い症状の12基については鋼板巻き立て、炭素繊維シートによる巻き立てを行っています。
幸いに我々が管理している橋脚の目立ったASRは梁部のみです。
ただ、1点西船場JCTで拡幅するために基礎を少し補強しなければいけない個所があるのですが、そこで掘削してみると通常のクラックでないASRの可能性があるクラックが生じていました。今後の検討課題です。
――大規模修繕ではこうしたASR損傷個所にどのように対応していきますか
西岡 橋脚の(ASRで損傷した)梁部だけを取り換える方針です。
――供用中の高架で梁部だけをどのように取り替えるのですか
西岡 阪神・淡路大震災の時に経験したのですが、支保工で桁を仮受けした上で、RCの柱をそのままに梁部分を撤去して新しい鋼製の梁で繋ぐ方法です。
グラウト再充填や外ケーブルにより補修補強
新しい点検手法の開発やビッグデータ活用も研究
――PCのポストテンション橋の対策について。損傷状況として主桁部の損傷、シースの露出などを示していますが。また、損傷している箇所はどの程度あるのでしょうか
西岡 グラウト充填不足個所の再注入や、外ケーブル、アウトプレート工法などによる補強を検討しています。ただグラウトの注入方法も実際どのように施工するかを考えると難しいものがあります。現在新技術として、京都大学と阪神高速道路、西日本高速道路で共同研究講座を行っており、そこでは(シース内部など)見えない個所の点検手法やビッグデータの活用などの研究を行っています。
ポストテンションPC橋の損傷事例
――点検を進めてみての管内各路線の劣化の傾向について詳しくお答え下さい
西岡 大きくコンクリートと鋼という比率でいいますとAランク33,000個所のうちコンクリート(桁、橋脚含め)が24%、鋼(同)が13%ぐらいです。残りはジョイントが19%、高欄が8%、支承が4%で、付属物が32%を占めます。
構造物比率と供用年次 要補修損傷数(Aランク)33,000個所の内訳(平成25年度末)
――付属物とは
西岡 排水設備や遮音壁、検査路、そして舗装が入っています。
圧倒的に舗装とジョイントと塗装が非常に多いと言えます。コンクリートも鋼も損傷している部位は圧倒的に上部工です。原因は輪荷重と水の問題だと思っています。