事業期間はおおむね15年を想定
大規模更新・大規模修繕は約3700億円
阪神高速道路株式会社
参与
西岡 敬治 氏
法円坂の高架部も架替えへ
構造は橋梁にこだわらない
――次に法円坂の高架橋鋼床版疲労損傷について
西岡 法円坂の高架橋鋼床版疲労損傷は、通常我々が考えている疲労損傷とは少し異なっていると思います。法円坂の高架部は7本主桁の橋梁ですが、受けている主桁は3本しかないんですよ。
――橋脚ごとに支承は3つしかないということですか
西岡 そうです。下の難波宮遺跡への影響を最小限に抑えるため桁の軽量化を図ることが目的で、もともと径間長は10㍍しかありません。それに対して幅員は20㍍もあります。通常の橋梁の橋軸および橋軸直角方向とは逆なわけです。
法円坂の高架橋鋼床版の損傷と更新計画概要および現況写真
最初は橋軸方向にクラックが入りました。それは当然直したのですが、直角方向にもクラックが生じました。やはり法円坂高架橋は構造形式が無理をしていたのだと思います。現在は桁を連続化して対応していますので、当面は大丈夫ですが100年という大規模更新・大規模修繕が想定する供用期間を考えた時には、構造形式を抜本的に変える必要があると思います。
――想定している構造形式はどのようなものですか
西岡 今、アイデアとして出ているのは橋梁だけでなく、軽量盛土を使った高盛土構造なども検討しています。
SFRC補強が標準
リブ内充填補強なども検討
――法円坂以外の鋼床版の疲労亀裂への対策は
西岡 トラフリブやバルブリブの鋼床版に出てくる疲労亀裂は当社でも数多く生じています。全損傷個所数は5000程度ですがその半数近くはバルブリブの縦リブと横リブ交差部です。貫通亀裂はバルブリブとUリブ含めて11となっています。。今、考えている補修補強方法は鋼繊維補強コンクリート(SFRC)の床版上面打設です。
大規模修繕の対策概要(左)と鋼床版の疲労亀裂(中)、(右)
しかし実際の現場では排水性舗装が損傷すると打ち替える必要があります。その時に基層まで打ち替えるとなるとSFRCも合わせて削る事態が予想されます。
――SFRCはこの場合、従来グースアスファルトを舗設していた舗装の基層部分に打設するわけですよね。であれば、表層の排水性舗装と基層のSFRCの上にある防水層を除去し、新たに防水層、排水性舗装を打ち替えればよいのでは
西岡 ところがそうもいかないのです。実際の現場では舗装厚で縦断調整しているところもあり、薄くなったり厚くなったりしているところもあります。そんなにうまく表層だけを剥ぐことはできず、基層のSFRCを傷つけてしまう可能性があります。もう1つはSFRCを打設しようとするとどうしても通行止めを伴います。今のように面積が限定されていると影響も少ないのですが、疲労ですから例えば神戸線や湾岸線のように重交通路線では現在生じていなくてもいずれ損傷が出てくることが予想されます。そうすると広大な面積をSFRCにより補強しなくてはなりません。