事業期間はおおむね15年を想定
大規模更新・大規模修繕は約3700億円
阪神高速道路株式会社
参与
西岡 敬治 氏
Aランク損傷箇所は33,000
鋼製フーチングをPC構造化
――その他、基礎、橋脚、コンクリート桁、鋼桁、床組など部材や損傷部位、特殊な形式などをどのように補修・補強・更新していくかについて
西岡 阪神高速道路の中で、計画的に修繕していかなくてはいけないAランク損傷箇所は、大体33,000個所ほどあります。これらは従来の維持管理業務の中で粛々と対策していかなくてはなりません。しかし特異な損傷や、特異な形式に基づいて出てくる損傷については、大規模修繕、あるいは大規模更新の中で対応していかなくてはいけないと思っております。
その1つが湊町付近の鋼製フーチングです(9基)。ここは阪神高速道路の高架橋基礎だけでなく、そのさらに下に地下街、さらにその下に地下鉄や近鉄の鉄道構造物が存在している非常に複雑な構造です。同箇所の損傷要因は地下水の上昇による鋼製部材の発錆、腐食ですから、早い時期に手をつけたいと考えています。構造的に地下鉄や地下街を抱いている関係上、そう簡単に直せる構造物ではないため、先日共同研究のアイデア募集をして2社と進めています。
鋼製フーチングが損傷している15号境線湊町付近
――以前に重防食、電気防食を用いて対応したが損傷が起きたようですが、どのような手法で対応していきますか。基本としては上部構造を仮受けし、フーチングを取替えるということですが、単なる取替では同様の損傷を惹起することになるかと思いますが
西岡 例えば軽量化されたプレキャスト部材によるフーチングの取替も選択肢として考慮しています。重防食塗装や電気防食による効果は全てのフーチングで効いてないかといえば、そうではないと思います。何しろ現場は地下水などがたまっている状況のため、まだ詳しい調査は行えていません。今後は詳細に調査してみて、損傷状況を確かめながら具体的な対策を煮詰めていこうと考えています。
――地下水はフーチングを覆うような状況ですか
西岡 詳細な調査を行ってみないと分かりませんが、マンホールから水が伝い次の部屋に順番に浸水し、(フーチング部材の)継手部からも水が入ってしまっているようです。加えて、フーチングの内側は地下水の状況がある程度把握できますが、外側が分からない。その腐食状況や板厚の測定などをしっかりしていく必要があると思います。
――進め方は
西岡 地下街や地下鉄、鉄道との協議をする必要があります。来年度いっぱいはその準備にとられ、平成28年度から工事着手になると思います。
有ヒンジ部PC桁を鋼桁に架替え
ASRの疑いあり、沈下の下げ止まり困難
――喜連瓜破のPC桁について桁そのものを架け替える理由は。喜連瓜破高架橋のような中間ヒンジを有するPC桁はNEXCOや首都高速などにもありますが、たいてい当該部分を連結する形で直していますが
西岡 有ヒンジのディビダーグ橋は阪神高速道路に4カ所ほどあります。今回そのうち神戸線の京橋付近と喜連瓜破高架橋を大規模更新による架け替えを行う個所として挙げています。共通するのはヒンジ部付近の桁の沈下が止まらないという点です。喜連瓜破はその対策のためにヒンジ部直下にサドルを設けて外ケーブルで緊張するという対策工事を施していますが、これもいつまで効果があるか分かりません。
もう1つはアルカリシリカ反応による劣化(ASR)が疑われる損傷が見えていることです。実は(喜連瓜破において)大偏心の外ケーブルで引っ張り上げた時も数センチしか回復できませんでした。本当はもう少し回復できると見込んでいました。それができなかったのは(設計値通りに回復させようとすると)その張力に脆くなったコンクリートがもたないからです。また、直下には地下鉄も走っており基礎工事も難しくなることが予想されるため、軽量な連続鋼床版箱桁で架け替えようと考えています。
喜連瓜破高架橋の更新計画概要と現況の写真
一方、京橋付近の高架橋は港内にあり、船の利用があったためスパンを飛ばしていましたが、現在はその船の利用が減っていることを鑑み(当時は設置できなかった個所に橋脚を建てるなど)、いろいろな条件を考慮しながら整備を進めていきたいと考えています。
京橋付近高架橋の更新計画概要と現況写真
――喜連瓜破高架橋を架け替える場合は仮橋をどのように設置するのですか
西岡 偶々ですが、両側部の歩道と車道の間に用地が少しあります。2車線はとれませんが迂回路の仮橋をそこに設置することで対応したいと考えています。