「ガラパゴス」に陥ることを避ける
水準に応じてカスタマイズが必要
――旧宗主国の規格ではなく、日本の規格によって構造部を建設し、維持管理を行うということは、今後の国際建設市場への展開ということを考えても有意義ですね
幸 そうですね。しかしこうした契約は一朝一夕に成し得たわけではなく、JAICAをはじめとする取り組みによって日本が信頼され、評価された結果であると思います。
ケニアなどアフリカへも展開
一方、残念な結果に終わった一例としてはETCのタイ高速道路会社への売り込みがあります。タイでは数年程前に一旦ETCの導入に踏み切ったようですが、普及率が10%にとどまったというこで、1年程でヨーロッパ方式のETCに変更することになったようです。議論をしていくうちにわかったことは、「日本のETCは性能が良いことは分かるが精緻過ぎる」とのことでした。「そんなに精緻で価格の高いものより、ある程度の精度のものをもっと安価でほしい」とのことでした。」
「ガラパゴス」だったのか知れませんね。もっと安くて扱い易いものを作るべきだった。そうして運用していくにつれて足らないものを付加していくべきでした。良いものをそのまま持って行っても売れない。その国の社会的、経済的な状況を鑑みてカスタマイズしなければいけないということを強く感じました。
様々な緩和策を導入
不調・不落対策
――人件費・資材費の高騰や不調・不落対策について
幸 弊社も何回も不調不落を経験しており、それを打開すべく試行錯誤している状況です。総合評価方式を専ら採用していますが、昨年は指定技術者登録について、橋梁などの架設現場に入るまでに一定の期間がある現場では、架設担当の配置予定技術者の登録を必要としないなどの施策を導入しました。また、実績要件についても従来は阪神高速道路での実績を求めていたのを他の発注機関、あるいは工種(施設など)によっては民間の実績も認めるなどの緩和策も導入しています。
一番多い、「金額が合わない」というのが一番厳しいのですが、現在は入札時の単価設定を原則とするということになってきていますから、昔ほどの金額的離隔はないと考えています。
――発注ロットの大規模化は
幸 点検・補修の分野は阪神高速技術が基本的に施工しており、足場を有効活用して点検し、軽微な損傷個所はその場で補修するなどし、コスト縮減を達成しています。
オープン工事では発注ロットを可能な限り大きくして受注業者の知恵を出しやすくし、コストの縮減につなげるようにしています。例えばひとつの路線の中で箇所が分かれている工事個所をひとまとめに発注し、工事規制などを効率的に行うなどしています。
――ありがとうございました