各年代で数人の技術者を選抜
外部委託の内製化
――個々の技術者の育成について
幸 入社後10年ぐらいの間は広く、浅く、技術者が将来経験するであろう仕事、調査~計画~設計~積算~施工管理~維持管理のすべての分野を経験し、幅広く、道路事業全体について、一定のマネジメント能力が発揮できるように知識を習得してもらう。その中で自分の得意分野あるいは必要とされる分野をさらに深く勉強、経験してもらい、一流の技術者に育っていくというものを従来からやってきましたが、今後はそれをさらに細かく計画的に進めていくことでプログラムを作っています。
技術力向上のためのプログラムも作成している
――具体的には
幸 最初のステップで非常に幅広い技術力を付けてもらいます。その次にはそれらの技術力を総合してマネジメントと技術の総合みたいなものを合わせ持つように育てます。ここまでは同じですが、さらにその次の段階では本当に専門家としてマネジメント力も専門技術力も合わせ持つ理想的な技術者に育成するための様々なプログラムを作成しています。
各年代で数人の技術者を選抜し、一定の分野に継続して研究会活動を行ったり(学会などの)各種委員会の議論に参画したりする専門性を磨くプログラムです。
もう1つは今までアウトソーシングしていた部分についてのインハウス化です。効率性を重視して外部委託していた仕事のうち、当社が保持すべきと判断した業務をインハウス化することで、技術力の向上を図るものです。
――例えばどのようなものがありますか
幸 例えば、他発注機関と阪神高速道路の現場が近接しているときにどういう対策を講じれば構造物に悪影響を及ぼさないか? こういうものについては、従来外部委託していましたが、これからはその解析や、評価を阪神高速道路ないしはグループで行っていきます。
また、構造物とは離れますが、ETCの活用も今後自社で行っていく方針です。利用率が9割を超え、そのデータは質量ともに非常に豊富なものになっています。上手く使えば、ビッグデータとして、非常に多くの知見を得られる可能性があります。これは個人情報で、その取り扱いには非常に慎重にならねばなりませんが、阪神高速道路にはそのノウハウがあり、こうしたデータをうまく活用することによって高速道路ネットワークの運営、安全走行等を効率的に実現することが可能です。
このように自分たちの経営に近いところをインハウス化していくことで、組織としての力量を挙げていきます。
限られた人材・資金をどのように配分するか
専門知識・マネジメント力の両立
――新設事業が残る中で大規模更新・修繕に対応するためどのように人材を育成しますか、また組織のあり方を変えていきますか
幸 現在、検討中でして、来年度から進めるにあたって建設事業のこれから、従来からの維持管理の業務量、役割分担などを考えながら検討中です。非常に限られた人的資源と資金をどのように配分するか難題です。
「兼ね備えた」人材の育成を目指す
――人材の育て方をもう少し具体的に、より専門的な人間の集団を目指していく方向ですか
幸 阪神高速道路は社員全体が720人ぐらいで、技術職はそのうち340人(土木250、施設90)弱ぐらいという状況です。そのためマネジメント力と技術的知識を兼ね備えた人材を育てることが大方針です。しかし一方でずば抜けた専門的知識を有する人間の活躍する場を作ることも模索しています。ただ、そうした者はマネジメント能力も高いレベルで有していることは言うまでもありません。
また、阪神高速技術(約350人)、阪神高速技研(約100人)などグループ会社との人材交流も活発に行っており、現場力、マネジメント力、専門力ともにバランスよく身に付けられるよう配慮しています。
技術戦略総括マネージャーを新設
また、技術戦略総括マネージャーというポストを作り、非常に能力の高い技術者を充てています。また、技術戦略、技術者の指導や人材育成などについて相当の信頼を寄せながら任せています。