疲労による損傷、環境要因による損傷
床版の劣化と最適な対策をなすためには
大阪大学名誉教授
大阪工業大学教授
松井 繁之 氏
白舗装も選択肢
松井 一方、この前の第8回道路橋床版シンポジウムでは白舗装(コンクリート舗装)が話題に上っていました。切削した後、コンクリート舗装を打設し、被りを回復させるのは1つの有力な案だと思います。舗装全面をコンクリートにするのが理想ですが、現状は難しいので被りをロストした分+舗装の基層分(40~50㍉程度)をコンクリート舗装にし、その上に防水した上でアスファルト舗装をしていくという風にしても良いかもしれません。白舗装をするということはすなわち断面復旧を行うということです。そうした方が良いと最近の現場を見るとつくづく思います。削りしろを考えた床版増厚を予め設計していてもいいわけです。
――既設床版の補修についてはとかく交通量が多い現場ほど時間がない、という声が多く上がります。
松井 そこはエンジニアが説明責任を果たして、粘り強く警察などと折衝して時間を確保しないと。エンジニアは社会基盤の安全・安心にこそ責任を有するわけですから。「構造物の適切な維持管理こそが交通の安全に繋がるのだ」ということを言っていかなくては。
――床版増厚の再劣化なども生じています。
松井 増厚の継ぎ目の位置と舗装の継ぎ目の位置が同じ継ぎ目位置になっているそれを変えることが必要です。しかもその継ぎ目の一部が走行車両の最頻通行帯になっています。だからそこに水が入れば剥離していくのは当たり前と言えます。理想は舗装あるいは床版も含めて全幅員を一挙に打ち替えてシームレスにすることです。
新しい継手構造の開発進む
プレキャスト床版
――高速道路会社を中心に床版の取り替えもこれから本格化していきます。
松井 プレキャストPC床版については、道路会社としてはいろいろな技術開発をしている最中だと思います。具体的には全面通行止め、片側通行止め、夜間のみ全面通行止めなどを想定した床版の取り換え施工技術の開発を進めているはずです。ただ、プレキャスト床版間の橋軸方向の継手に採用されているループ継手は架設が簡易化できる一方で施工の一つの弱点になる可能性もあり、新しい継手構造が開発されつつあります。
プレキャスト床版の活用はこれから
地方道でも床版の打ち替えが必要な個所は出てきている