橋自体の耐久性に大きな疑義
既設ポストテンション橋のPCグラウト問題への対応
公益社団法人プレストレストコンクリート工学会
既設ポストテンション橋のPCグラウト問題対応委員会
委員長
京都大学教授
宮川 豊章 氏
橋梁の状況に応じた点検手法の確立必要
漏洩磁束法などでPC鋼材の健全度を把握
宮川 問題はコストです。該当橋梁全てにこうした調査を行うことは莫大な費用がかかります。そのため、鋼線と鋼棒に分けて、橋梁の建設された時期、形式、部位、損傷要因、損傷度に応じて点検すべき手法を確立したいと考えています。
――PC鋼材の健全度把握手法について具体的な内容を教えてください。
宮川 漏洩磁束法と残存プレストレス量測定の2つを検討対象にしています。前者はコンクリートの上から磁石で着磁させ鋼棒や鋼材の破断を計測することができます。通常破断してない鋼材および鋼棒は、S極-N極は一つずつ計測されるわけですが破断している場合は、新たなS極-N極が見つかります。それを持って破断個所を推定する方法です。箱桁のようにコンクリートが相当厚い躯体でも計測できることが確認できています。また、磁力を用いるため鋼製シースの場合、影響が懸念されましたが、実橋で施工した結果、その影響も織り込んだ上で正確に計測することができます。元々漏洩磁束法は、アルカリシリカ反応(いわゆるアルカリ骨材反応)による鉄筋破断の測定や電柱の基礎の鉄筋腐食の測定などに用いられ高い性能を示していました。現在はハンディタイプの計測機が主流ですが、より効率的な計測を行うため今後は路上からも計測できる手法の開発などを期待しています。
漏洩磁束法によるPC鋼棒の破断測定
後者はPC鋼材が破断、もしくは伸びていれば、コンクリートの圧縮力の減少が見られるわけであり、それを計測する(方法としてはコアの開放応力測定やスロットストレス法などがある)ことでプレストレス量を推定する方法です。例えばプレストレス量が半分になっていれば最悪の場合、鋼材の半分が破断している――というようなことも推定できるわけです。
――ポストテンション橋の健全性診断の方法について具体的内容を教えてください。
宮川 同様に様々な調査方法を検討している段階です。検査対象としては耐久性能を調査する方法としてPCグラウトの充填状況、耐荷性能を調査する方法としてPC鋼材の健全性に注目する手法があります。