橋自体の耐久性に大きな疑義
既設ポストテンション橋のPCグラウト問題への対応
公益社団法人プレストレストコンクリート工学会
既設ポストテンション橋のPCグラウト問題対応委員会
委員長
京都大学教授
宮川 豊章 氏
ノンブリーディング剤による有意差は明確
局部的に空隙率が4割に達する個所も
――ノンブリーディング剤を使用しているかどうかで健全度に有意差はあるのでしょうか。
宮川 ノンブリーディング型PCグラウトが採用されたのは1990年代の後半からです。この時には、施工管理方法の改善(流量計の設置)も標準化されていることから実橋の分析ではノンブリーディング剤採用による明確な有意差は確認できませんが、これまでのPCグラウトの実験などの結果を見ると有意差は明確であると思われます。とはいっても凍結防止剤の使用の有無や床版防水工設置の有無によって損傷の有無、深刻さは大きく変わります。また、3つ目に申し上げました先流れの問題と合わさることで、特にグラウトの上部に空隙が大きくできてしまい(場所(主として上縁部付近)によって空隙率は4割に達する)、鋼材が露出してしまう箇所もあります。また、ブリーディングが発生している箇所のグラウト表面はレイタンス(フレッシュコンクリート中のセメントの不活性な微粒子や骨材の微粒分が、ブリーディング水とともにコンクリートの上面に上昇して堆積した、多孔質で脆弱な泥膜層)層が形成されるため耐久性に乏しくなっています。そこに水や空気、凍結防止剤をまく箇所では塩分も浸入するため、重大な損傷を招く危険性があるといえます。
ブリーディング発生状況
平成2年度までは上縁定着が基本
横締めにも対応する必要
――そもそも上縁定着しているポステン橋はどの程度存在しているのでしょうか。
宮川 国交省の基本設計は、平成2年度(1990年)まで上縁定着を基本としていました。平成2年度に桁のウエブ端部に定着部を設けることを原則化、平成6年度からはそれを義務化しました。裏返せばそれまでのポステン橋はほとんどが上縁定着があるといえます。またプレテンション橋も横締めはポストテンションで施工していますから、これにも対応する必要があります。
――PCグラウトの充填性調査手法について具体的な内容を教えて下さい。
宮川 本委員会では、PCグラウト充填調査方法として様々な調査方法について検討、整理している段階です。検討対象としては放射線透過法(いわゆるX線)、打音振動法、広帯域超音波法、衝撃弾性波法(インパクトエコー法)、削孔調査法などです。
広帯域超音波法(上下とも)
横締めPCについては衝撃弾性波法で大方のものは計測、調査できるようです。しかし橋軸方向の調査手法については試行錯誤している段階です。ただ、先ほど申し上げたような手法も開発されてきており、これを組み合わせることできちんとした調査が可能になると考えています。
インパクトエコー法(上下とも)