溶射被膜が損傷
百道出入口のランプ橋
――鋼橋の塗替の今年度面積は。
羽野 福岡高速の鋼橋塗替は今年度香椎線・環状線で約13,500平方㍍を施工する予定です。ケレンは1種ケレンにより施工する予定です。ほとんどが百道出入口のランプ橋で、少し特殊な塗替え事例となっています。
百道入口(上)、百道出口(下)
現在の防食便覧では適さない環境
スプラッシュゾーン上の桁
――具体的には。
羽野 同ランプ橋は平成11年に補修工事を実施しており、塩化ゴム系の塗装を剥離剤により全除去し、亜鉛・アルミニウム擬合金溶射で塗り替えたのですが、再劣化してきたことから、塗り替えるものです。当該橋梁の架橋場所は海面のH.W.Lに近接したスプラッシュゾーンであることから、現在の防食便覧では溶射が適さない環境の箇所です。当時はまだ溶射での塗り替え事例がなく、百道ランプ橋の施工も、その後に全面採用された環状線の板付~福重間の溶射施工の試験採用的な意味合いで行われたものです。
溶射の損傷
位置図詳細
構造詳細
宇美川橋も同じ仕様
――溶射の全面的な補修は初めての事例かもしれませんね。
羽野 少なくとも福岡高速管内では初めてです。スプラッシュゾーンという環境下なので劣化の再発が懸念されますが、重防食塗装系(Rc-1)で塗り替えて経過観察を行うこととしています。
また、粕屋線の宇美川橋も百道ランプ橋と同時期に同じ仕様で補修を実施しており、下フランジ周りを中心に溶射皮膜の損傷が生じています。今後、百道ランプ橋での施工結果を踏まえて対応していきたいと考えております。
宇美川橋
――PCBおよび鉛含有塗膜の除去については。
羽野 鉛含有塗膜の除去は労働者の安全に配慮したものになるように塗膜剥離剤などを念頭に現在社内で対応を検討しております。ただ塗膜剥離剤はあくまで塗膜の剥離のみであり、錆の除去やアンカーパターンの形成を行うには結局ブラストが必要なため、どのような施工を行うか、慎重に検討しています。
PCB含有橋梁は福岡高速管内にはありません。北九州高速管内にあるPCB含有橋梁10橋については、塗膜剥離剤を使用して既に除去しており、除去した塗膜片は現在、PCB廃棄物保管場所に保管しています。
――トンネルについては。
羽野 福岡高速は福大トンネル(延長約800㍍)のみで、大きな損傷はありません。北九州高速は多数のトンネルがありますが、平成15~20年度のリフレッシュ工事の際にトンネル補強を完了しています。
ロープアクセス、レーダー探査車を採用
合成床版の内部調査技術を要望
――新しい点検技術、補修補強工法、材料の選定について具体的に教えてください。
羽野 新しい点検手法としては、高所作業車ではアクセス困難な個所に対してロープ・装備具を使用し近接目視点検を行う技術を北九州高速の山間部にある大谷付近の高架橋下部工点検や、福岡高速の百道付近の高架橋上部工点検で採用しています。
また、交通規制を伴わず舗装上からコンクリート床版の状態を非破壊で調査できる技術として、レーダー探査車による調査を採用しており、鋼製橋脚の根巻きコンクリート地際部の腐食状況を非破壊で調査できる技術として、渦流探傷技術の活用を検討しています。
今後、開発してほしい技術としては、主に環状線の板付~福重間で採用されている合成床版に対して、内部の状態を調査できる技術です。(底鋼板の)水抜き孔等から漏水やエフロレッセンスの析出が確認されることがあります。今後、内部の損傷が発生してくるおそれがあることから、早期に内部の状態を把握できる手法を切実に望んでいます。
――当該地の場合、開断面箱桁ですから余計、合成床版の健全度には配慮しなければいけませんね。
羽野 桁と床版との合成効果により構造体としての性能を発揮する構造ですから、仰るとおり、注意して点検し、速やかに補修補強していく必要があります。
――ありがとうございました。