――具体的には。
深澤 現実に合わせて官と民の仕事を線引きするということです。ただし最終的に住民への説明責任を有するのは官側であり、それを担当する官側の技術者の役割は変わりません。
自治体の合意形成が必須
構造物の撤去や道路の廃止
――今年度の土木学会の全国大会では残すべき道路と(限界集落などに通じる道路で数十年後を見越して)限定的に管理・ないしは撤去する道路などに分けていくべきではないかという議論も出ています。限られた予算を効率的に使用するため、アセット・マネジメントの視点を入れて何らかの線引きを行っていくということはありませんか。
深澤 国道などの全国幹線道路については、人口減少あるいは(大都市圏への)人口集中が起こっても、国の屋台骨となる幹線として、適切に維持管理あるいは更新していくべきでしょう。問題は地方自治体が所管する道路、とりわけ市町村道をどう管理するかです。アセット的な視点はもちろん必要かと思います。しかし、道路は公共ストックであり通常の意味での効率性だけでは判断できないと思います。全国一律の条件付けは難しいですし、地方自治の観点からも、橋梁やトンネルひいては道路そのものの廃止といった判断は当該自治体の中での合意形成がより大切であると思います。
――東北地方整備局で復興道路事業に適用されている事業促進PPPや、指定管理者委託制度、発注ロットの大型化を道路保全事業にも援用するということはありますか。
深澤 当然、考え方としてはあるでしょう。確かに保全工事は、新設工事と比べて一つひとつは小さいですが、それらをまとめることでロットを大きくすることは、これまで以上に必要になってくる可能性があります。
また、そうした保全事業においては積極的に複数年度による発注を行うことを心がけていく必要があると思います。また、一定区間ごとにPPPや指定管理者制度を援用することにより官・民双方がWin-Winの関係が築かれることを期待しています。
雨の強度の概念も考慮
土砂崩れは民地対策が課題
――水害がここ数年頻発しています。山岳部が多い国土を考えますと特に法面の崩壊により道路が閉塞するなどの事例が今後多く発生するように思いますが、どのような対策を考慮しておられますか。
深澤 集中豪雨による災害が頻発する状況に対応して、人命の確保を第一に考えて事前通行規制の新しい基準を考えなくてはいけません。例えば「雨の強度」(1時間など限定的な時間内の雨量)の概念を取り入れて、フレキシブルに規制をかけられるようにすることなどです。
また、土砂崩れは法面だけでなくその上の民地(私有地)から起きるケースもあります。道路管理者の管理外の場所から災害が起きるこのケースについても、土地保有者の注意を喚起する施策は以前からとっていますが、もう一つ踏み込んで、国などの道路管理者が積極的に代行して危険防止工事を施工するという手法も検討する必要があるように思います。
集中豪雨は橋桁、橋脚をも流す(左は会津豪雨、右は九州北部豪雨)