5年間で5,000人を技術講習
基礎的な技術判断能力を養成
――地方公共団体、とりわけ規模の小さい基礎自治体は人材の不足も深刻です。
深澤 ある意味お金よりも深刻な課題です。
その状況を改善するための人材を拡充すべく、年間1,000人、5年間で5,000人の地方公共団体の担当者に必要な技術講習を受けていただくということを今年からはじめています。
ベーシックな技術的判断のできる職員を養成するためのもので、日常点検の実施や計画の策定をきちんと行うことのできる職員を各基礎自治体に2、3人は常駐する必要があると考えます。実際に点検するのは建設コンサルタントや地場建設業の技術者になると思います。しかし、それが本当に適正かどうかはインハウスエンジニアがきちっと判断しないといけない。そのための職員の研修を始めたということです(第一段階)。
その上で、彼らの手に負えないものは都道府県や国から技術者を派遣すればよいと考えています。具体的には国が代行して行う直轄診断も今年度から始めています。今年度は試行的に3件の診断を行っています。(第二段階)。また、直轄診断以外にも、該当する都道府県が基礎自治体の分をまとめて発注する手法などを各都道府県の道路メンテナンス会議で議論してもらっています。
今年度に直轄診断を試行した3橋梁(国土交通省HPより)
その上でなお、詳細な点検や分析が必要な場合は、学識経験者や土木研究所、国総研のスタッフなど高度に専門性を有する技術者が当たればよいと考えます。理想をいえば地方整備局ごとに10人程度高度に専門性を有した技術者がいれば大丈夫だと思います。(第三段階)。
非破壊検査も充実しつつある(写真はイメージです)
この3つの段階が機能すれば、維持管理の点検・診断の適正化は今まで以上に向上すると考えます。
――人材の面でもうひとつ懸念されることは、自治体を中心に技術者の民から官への流れの傾向があることです。官は一番ものを作ってきた技術的に場数を踏んでいる団塊の世代がリタイアしており、それを補うために技術職の募集をかけた結果、民間から充当する形になってしまい、民間の技術者不足を助長しかねない状況になっています。
深澤 それは難しい問題です。計画(地域のニーズを踏まえた計画作り)、設計、製作、施工、全体マネジメントという各段階でエンジニアが必要だと考えますが、現在は計画およびマネジメントを行政が行い、設計を建設コンサルタント、製作以降を建設会社が担っています。3種類の技術者の連携の下でやってきたわけで、どこかがいびつになってきたら、それに合わせて、役割分担をうまく変えていくしかないと考えます。