東京都は橋梁1206橋とトンネル121個所を管理している。橋梁についてはすでに約200橋を長寿命化対象に選定し38橋について工事着手、10橋は対策を完了するなど着々と事業を進めている。一方、トンネルも今年度末までに点検を完了し、長寿命化計画を策定する予定で、来年度以降対策を行っていく予定だ。それら道路保全の詳細について川合康文道路保全担当部長に話を聞いた。(井手迫瑞樹)
慢性的な交通渋滞が発生
道路整備はますます必要
--東京都の道路網の現状は
川合部長 区部の重要な道路は、放射・環状型の道路網ですが、未接合の部分が多くあり、依然として整備が遅れているため慢性的な交通渋滞が発生しています。このため環状方向や区部と多摩を結ぶ幹線道路のうち、未接続区間を重点的に整備しています。
また、区部には木造住宅密集地域が点在しており、老朽化した木造住宅や狭隘道路が多く、震災時の火災拡大や道路閉塞など防災上の課題を抱えており、延焼遮断や避難、救援など防災性向上に有効な都施行の都市計画道路の整備を推進しているところです。
多摩地域では、主要な幹線道路が東西方向と南北方向の格子状に配置された計画となっていますが、特に南北方向の整備が遅れており。慢性的な交通渋滞が発生しています。このため、南北方向の道路について整備を進めていると共に東八道路など東西方向の道路整備も行っています。
西多摩山間部の道路は、自然豊かで急峻な地形の中にあり、豪雨などの被害を受けやすいところから、災害を未然に防ぐ道路災害防除事業を進めています。
また、落石や土砂崩れなどの危険箇所の回避、見通しの悪いカーブや観光シーズンの渋滞解消、災害時のダブルルート化等の観点から、トンネルや橋梁などを建設し自然環境の保全にも努めながら、安全性の高いバイパス道路の整備などを進めています。
島嶼部の道路も山間部と同じような理由から同様の事業を進めています。
供用50年以上経過橋梁が全体の3分の1
トンネルは121個所を所管
--現在、都が所管する橋梁・トンネルの内訳は。
川合 橋梁は全体で1206橋あり、鋼橋が40%、RC橋が27%、PC橋が25%、その他が8%となっています。供用年次別では50年以上経過した橋梁が34%に達しています。路線別では国道(指定区間外)4%、主要地方道47%、一般都道49%で、地域別では区部が37%、多摩部が53%、島嶼部が10%となっています。
トンネルは121個所を所管しています。
--点検を進めてみての橋梁・トンネルの劣化の傾向は
川合 橋梁はA(健全)21%、B(ほぼ健全)33%、C(注意)34%、D(要詳細調査)12%、E(危険)は0%という内訳になっています。C、Dランクは鋼橋において比較的多く生じています。部位ごとにみると鋼橋のRC床版の軽微なひび割れやジョイント部からの漏水に起因した損傷が生じています。ただし、東京都では昭和46年より全国に先駆けて5年に1回の定期点検を行っており、深刻な損傷に至る前に予防的修繕を進めています。
――橋梁長寿命化修繕計画の進捗状況について。
川合 平成21年度に「橋梁の管理に関する中期計画」を策定し、隅田川に架かる関東大震災の復興橋梁などの著名な橋梁や跨線橋、跨道橋など約200橋を長寿命化対象橋梁としています。これまでに長寿命化工事として38橋に工事着手し10橋を完了しています。
現在、長寿命化工事に着手している橋梁
蔵前橋
白鬚橋(下)
豊玉陸橋(左) 鎧橋(右)
――同様にトンネルの長寿命化修繕計画は。
川合 昨年度から詳細点検を進めており、今年度に長寿命化修繕計画を策定する予定です。