道路構造物ジャーナルNET

安全性向上にも3カ年で2450億円投資

構造物の大規模更新・修繕へ道筋

中日本高速道路株式会社
常務執行役員 保全企画本部長

猪熊 康夫

公開日:2014.10.01

東名道の鈑桁部で疲労亀裂
特殊橋の耐震補強はこれから

 ――鋼部材の疲労損傷の具体的事例について
 猪熊 鋼部材の疲労亀裂も増加傾向にあります。特に東名の鈑桁部において溶接部の疲労亀裂が最近再び増加しています。これは交通量、とりわけ大型車交通量が大きいためであると考えます。具体的な損傷部位は、対傾構の上部の取り付け部、溶接部の端部、ソールプレート付近などです。補修補強については、これから改めて強化していきます。


        繰り返し荷重による疲労亀裂                  【累積10㌧換算軸数3000万軸以上の対象路線】
                           中日本高速道路管内に交通が集中していることが分かる

 ――耐震補強の進捗は
 猪熊 いわゆる3プロ対象橋の固定橋脚の耐震補強、桁かかり長の確保などを優先し全て完了しています。現在は名港トリトンなど斜張橋、トラス橋、アーチ橋などの特殊橋梁の対策(詳細は下表)にかかっています。横浜国立大学名誉教授の池田尚治氏を委員長とした委員会で耐震性能を照査し、対策方法をまとめています。


              名港トリトン                 長大・特殊橋梁リスト

安全性3カ年計画を優先
最終年度は1,300億円以上を投資

 ――大規模更新・大規模修繕について1社当たり15年間で1兆円以上の額を投資するわけですが、中日本高速道路の現在の保全投資額は年間いくらくらいですか
 猪熊 550億円程度です。加えて、現在は笹子トンネルの事故を受けて、安全性向上3カ年計画を優先しています。
 トンネルの天井版の撤去や大型標識の移設、トンネルのジェットファンや照明などのフェールセーフ構造、損傷したガードレールの取り換えや舗装の打ち替えも入っています。それらに3カ年で2,450億円投入します。
 初年度(2013年度)は557億円、2014年度は577億円、2015年度に残額を使う予定です。当社はこれを優先しなくてはなりません。
 ――では大規模更新・大規模修繕はその後ということになりますね
 猪熊 現在、事業化に向けて準備を進めている所です。
 ――現在の保全投資額に加えて、年間700億円近い現場をこなさなくてはいけないわけですから、「現場力」を向上させなければ実施はままなりません。
 猪熊 各社ともそれなりの体制を組むと思いますが、組織の強化だけでなく合理的な発注方法、受注側の体制強化、それらが全部噛み合わないと、これはできません。特にオリンピックや東北の復興需要を考慮すれば人の手当てに窮することが、まず否めません。
 また、現場の損傷要因や損傷状況、供用状況を考慮して大規模更新・大規模修繕の優先順位を決めて、合理的な更新・修繕ができるようにすることが大事であると考えています。
 中日本の特徴として、非常に軸重が大きい特性があり、古い橋も多いため、床版系の更新や修繕は中日本が相対的に多くを占めます。逆にトンネルは対象が少なく、大規模修繕では膨張性地山とかでインバートがないところにインバートを新設することになっていますが、中日本はそういう悪い地盤を有するトンネルが、相対的に少ないと考えています。

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