東京都市大学と6項目を共同研究
適確な点検と診断を行う技術開発が目的
こうした技術の開発をさらに促進するため、適確な点検と診断を行うための技術開発を目的として、東京都市大学(三木千壽教授)と首都高速道路(株)、首都高技術(株)、(一財)首都高速道路技術センターは今年度から3年間の共同研究を開始しています。
研究内容は①メンテナンスデータベースと点検・診断システムの構築、②非破壊検査の適用性検討、③新しい非破壊検査方法の開発、④変位誘起疲労の原因同定システムの開発、⑤構造物の劣化検知モニタリング、⑥補修補強技術の6項目です。
――開発済み、または開発中の技術について
安藤 顕著な損傷が見られる床版を例に挙げますと、鋼板接着に代わるRC床版補強工法として炭素繊維シートの格子張り工法(下面からの補強)を適用しています。メリットは窓状の未接着部から床版を直接観察できるため点検が可能な点、床版上面から浸透した水が(鋼板接着工法や全面シート貼り工法に比べて)滞水しにくい点です。
炭素繊維シートの格子張り工法(下面からの補強)
鋼床版については、12㍉厚のUリブ床版において生じているデッキ・トラフリブの溶接部の大型車輪荷重由来の疲労亀裂損傷を補強または予防的に保全する工法として、舗装基層部を従来のグースアスファルトからSFRC(鋼繊維補強コンクリート)に変えることで、輪荷重による局部変形を低減させ、耐久性を向上させる工法を標準的に採用しています。現在は、補強繊維部材を鋼ではなくアラミド短繊維とビニロン短繊維のハイブリッド繊維で補強するHFRC(ハイブリッド繊維補強コンクリート)も京浜大橋の鋼床版部などで採用しています。
SFRCによる床版補強
HFRCによる床版補強
――床版防水は首都高速道路発の複合床版防水が名古屋高速や自治体にも波及していますね。
安藤 首都高速道路では、平成19年度から設計要領でひび割れや遊離石灰など、損傷のみられるコンクリート床版部へは、補修効果と確実な防水効果を得るために浸透型樹脂材料と加熱アスファルト塗膜の二重防水としています。浸透型床版防水は床版下面の炭素繊維シートの格子張り工法と併せ、床版の耐久性向上に大きく寄与していると考えています。
――大規模更新・修繕で必要となる技術は
安藤 更新の基本的な考えを踏まえて対応していきます
更新の基本的考え方
例えば維持管理性については、供用後の点検を容易にするため、桁を覆う形で桁の下フランジ下面まで点検できる足場を更新の際、予め設置することを検討しています。
また、交通への影響軽減、工期短縮という観点からはRC床版部の撤去・更新について、既設床版の撤去を容易にし、かつ床版新設に伴う工事規制などの社会的影響を最小限にする手法を民間共同研究として募集し、IHIインフラシステム・駒井ハルテック・IHIインフラ建設、川田工業・川田建設・横河工事、大成建設の3者と研究を開始しています。2015年11月をめどに研究を完了する予定です。交換するRC床版は総じて床版厚が薄く、現行のコンクリート床版厚の基準に合わせると単位重量が重くなります。そのため鋼床版への交換やコンクリート床版でも軽量な骨材などを用いている製品への交換などを研究しています。
他にも既設PC床版の拡幅構造に関する研究を富士ピー・エス、三井住友建設と、既設橋梁の耐震性向上技術に関する研究を青木あすなろ建設、清水建設、横河ブリッジ・オックスジャッキの3者とそれぞれ共同研究しており、RC床版と同様2015年11月をめどに研究を完了する予定です。
点検技術も補修補強技術もこのように民間が保有している技術をベースに首都高速道路の要求する性能、条件にアレンジする形で開発、活用していければと考えています。
鉛含有物塗膜対策
塗膜剥離剤やIHを試験施工
――厚労省が鉛中毒障害予防規則に則った「鉛等有害物を含有する塗料の剥離やかき落とし作業における労働者の健康被害防止について」という通達を5月30日に出しました。鋼橋の塗替えの際の原則湿式による作業の実施を求めたものですが、首都高速道路はどのように対応されますか。
安藤 鉛中毒患者の発生を防ぐべく、塗膜剥離剤およびIH(誘導加熱法)を用いた塗膜剥離方法を試験施工しています。また施工にあたっては鉛濃度の測定、適切な保護具の着用、洗身や作業着の洗浄など作業環境の確保を徹底していく方針です。
――ありがとうございました