2023年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑥駒井ハルテック
3カ年中期計画完遂が使命 工場の収益改善に取り組む
株式会社駒井ハルテック
代表取締役社長
中村 貴任 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。3回目は、駒井ハルテックの中村貴任社長と、日本ファブテックの鎌倉孝光社長の記事を掲載する。
――前期を振り返って
中村 23年3月期の連結業績は売上高が前期比34.4%増の397億2,700万円と増加したが、営業利益が同79.1%減の3億1,500万円と厳しい結果となった。材料値上げを販売価格に転嫁しきれなかったことと、インフラ環境事業で先行投資が膨らんだ影響などにより減益となった。材料価格上昇分などの転嫁をゼネコンや施主などにお願いしている段階だが、厳しいネゴシエーションが続いている。受注残高は橋梁事業が同16%増の296億2,000万円、鉄骨事業が同12.7%増の351億9,4000万円と大きく増加した。
――マーケットは厳しい
中村 橋梁は年間発注量20万t以上を国土交通省に陳情しているが、令和になってからは一度も到達していない。大阪湾岸道路西伸部の一部は今年度第3四半期には発注見込みであり、当社は積極的に受注に向けて動いている。橋梁補修は大規模更新が一段落となっており、厳しい受注競争が続いている。鉄骨はトーチタワー、内幸町、日本橋、品川、渋谷、新宿、六本木など首都圏の超高層ビルを中心に案件があり、インバウンド需要を見込んだホテル、大型物流施設、データセンターなどもある。ただ、材料価格や人件費の高騰などの影響もあり、中小案件では延期などもあるだろう。子会社の東北鉄骨橋梁(宮城県)は地元案件が少ないので、首都圏案件を中心に収益基盤を再構築していく。KHファシリテック(福岡県)は特殊鉄骨を中心に案件がある。全体的に鉄骨需要のピークが後ろにずれており、25年度以降となりそうだ。
――今期の業績について
中村 24年3月期の連結業績は売上高540億円、営業利益9億円を予想している。第1四半期は売上高が前年同期比78.9%増の135億7,900万円と大幅増益だったが、工事原価が先行して発生したことに加え、一部の子会社で不採算案件が売上に上がったことなどにより、営業損失は4億4,300万円と遺憾ながら赤字だった。
大津能登川長浜線補助道路整備工事
――強化ポイントは
中村 引き続き工場の収益力向上に取り組む。今年度から26年3月期を最終年度とする3カ年の中期経営計画を策定し、売上高600億円、営業利益50億円を目指しており、これを達成することが使命だ。橋梁、鉄骨ともに受注残があるので、それを収益につなげていくことが最大のテーマとなる。首都圏の大型案件は30年度くらいまで続く見通しであり、中でも富津工場(千葉県)の収益改善が課題になる。現状ではこれまでの設備投資の効果が発揮できていない。図面の決定遅れにより外注コストが膨らんでいることなども、収益が好転していない要因の一つであり、外注管理の強化による収益力向上も必要だ。富津は今年4月に機構改革し、新しい体制で臨んでいるが、結果が出るのにはもう少し時間がかかる。もう一つは、足元では人材が不足しており、特に40歳代の中間層が少ない。次世代の若い担い手を育てるのが、この業界の喫緊の課題となっている。BIM・CIMへの対応も必要になっているが、CIMは国土交通省の指導もあって標準化できつつあるものの、BIMはゼネコンなどによってやり方が違うので、標準化にはまだまだ時間がかかりそうである。
――環境インフラ事業は拡充する
中村 陸上風力では、30kW風力発電機の実績があり、このラインナップを拡充して、リプレース需要も含めて取り込みたい。現在は1MW風力発電機を開発している。洋上風力発電は浮体式設備のタワー製作に参入するために、富津の工場レイアウトを変更している。今年度の全社の設備投資も富津の洋上風力発電タワー設備が中心になる。
(聞き手・岡辰巳、文中敬称略)