道路構造物ジャーナルNET

2023年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ④川田工業

大型物件は順調に推移 生産性改善や新技術推進

川田工業株式会社
代表取締役社長

川田 忠裕

公開日:2023.09.25

 当NETの姉妹メディアである「週刊鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。2回目は、川田工業の川田忠裕社長と、IHIインフラシステムの上田和哉社長の記事を掲載する。

 ――まず、業界を取り巻く環境について
 川田 公共事業では、ここ数年の新設橋梁の全体の発注量が20万tを下回り、昨年度も鋼道路橋15万4,000tと低調な状況が続いている。民間工事では、当社が建築鉄骨のターゲットとしている大型物件は数件の着工遅れがあるが、順調。ただ、原材料費やエネルギーコスト、輸送費等の高騰による計画の延期、図面設計段階での遅れが懸念材料といえる。
 ――今年度の状況は
 川田 橋梁の発注量はほぼ横ばい、建築鉄骨の発注量は順調に推移するとみている。新設橋梁は依然、受注競争が激しい情勢にあるが、更新・保全市場の割合が増加しており、拡大が見込まれている。現時点では昨年度の受注が好調に推移したため、配置予定技術者がひっ迫し、応札の絞り込みを余儀なくされている。一方、ここ数年、大規模更新工事や大型工事を受注できたことから、工場操業度は維持できている。
 建築鉄骨については、首都圏を中心に大型再開発計画が始動するとともに、札幌、名古屋、大阪、福岡などの大都市圏でも大型プロジェクトが始動している。さらに、半導体工場や物流施設なども出件しており、当面は順調に推移すると見込んでいる。
 ただ、着工時期の延期、図面等の納まりの悪さによる施工の遅れが出始め、生産管理に影響が出ている。製作工程のずれによる稼働率の急な上ぶれ、完成製品のストックなど課題が出始めている。24年の超繁忙期が25年にずれ込むと見込んでいる。
 システム建築については、数年前から、より付加価値の高いものを目指して、多層階や冷凍倉庫などへの展開も推進している。資材価格高騰などで採算面では厳しい状況にあるが、物流施設の需要がまだまだ旺盛なことから、今年度は回復すると見込んでいる。


気仙沼湾横断橋(愛称:かなえおおはし)


呉羽丘陵フットパス連絡橋


千丈高架橋

 ――設備投資については
 川田 栃木工場では生産性向上、生産品種の拡充を図るために、一昨年から生産ラインをはじめとした全体レイアウトの見直し、4面ボックスラインの増強、コラムラインの拡張などを引き続き進めている。今年の秋ごろには建屋の拡張工事が竣工する予定。
 富山工場では製作が増加している合成床版「SCデッキ」の増産に向けて、塗装ヤードを新設する。四国工場では塗装設備を増設するとともに、門型クレーンなどの老朽設備の更新作業を実施する。


Landcube坂戸

 ――DXの取り組みについては
 川田 川田グループが持つIoT、AI、ロボティクス関連技術を、施工や工場の現場ニーズにマッチングさせる。事務作業には引き続き、ロボティック・プロセス・オートメーション(RPA)の活用を積極的に展開していく。
 グループ内のロボット技術者数名を橋梁開発部門に異動。彼らが工場や施工の現場を視察することにより、本格的な生産性の変革や改善を進めていくことを目指す。また、すでにNETIS登録された、クレーンの吊荷の移動に追従して介錯ロープを緊張しながら繰り出す吊荷ロープ介錯装置「EGガイド」や、ボルト締め付けマーキング用スタンプ「ボルトライン」なども、生産性改善への取組みの成果といえる。
 生成AIに関しては、導入を検討している。例えば、今までは経験者がいないと注意喚起できなかったヒヤリ・ハット情報を、AIを活用して、その日の作業内容や気象条件で発生しやすい危険を喚起するなどの安全活動に応用展開する。また、会社への問い合わせを、過去の内容を蓄積して、対応することなどが考えられる。さらにRPAを活用し、幅広い応用展開を進めていく。
 ――新技術・製品開発については
 川田 高周波誘導加熱装置を用いたリベット打設の新工法『KMリベット工法』を実用化した。また、今年販売を開始した独自開発の新技術「超広視野可視化技術を備えた3Dデジテル溶接マスクを用いた溶接技能教育システム」では日本溶接協会の開発奨励賞を受賞した。
 ――海外事業については
 川田 川田グループのグローバル展開の一環として、開発・実用化した保有技術・製品などの海外への提供を検討している。地政学的なリスクも考慮しながら、東南アジアやインド、アメリカなどを中心に進めている。ローカルパートナーとの協業や技術支援、人材活用なども視野に入れている。
(聞き手・佐藤岳彦、文中敬称略)

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