5月29日には新設桁の横取り一括架設を実施
首都高速道路 高速大師橋 新設橋への架替えが進む
首都高速道路は、高速1号羽田線の多摩川に架かる高速大師橋の大規模更新事業で、5月27日5時から6月10日5時までの2週間、終日通行止めを行い、新設橋への架替えを完了させる。28日夜間には既設桁を上流側に横取りし、29日には新設桁の横取り一括架設を実施した。
通行止め開始後の27日午前の状況(撮影:井手迫瑞樹・大柴功治。注釈なき場合は以下、同)
通行止め開始後、橋長約300mの既設橋(P4~P7)を横取りするために、両端部の舗装切削、伸縮装置撤去を行った上でガス切断により両端部の桁を切断。その後、橋面上に設置した120t吊クレーンで両端部の桁を撤去し、P4側(川崎側)に配置したクレーン台船を用いて台船上に吊り下ろした。撤去した端部桁は、P7側(東京側)が橋軸方向約5m、P4側が同約6mで、P7側の桁は運搬台車でP4側に移動している。これらの作業は2日間で完了した。
端部桁の撤去(左:P4側/右:P7側)(首都高速道路提供。撮影:共映)
既設桁の横取りは、28日午後10時30分頃から開始した。舗装等を含めた重量は約38,00tで、これを上流側に約33mスライドさせる。横取り設備は、ベント上に軌条梁を設置し、桁下の架台に配置したスライディングシップで軌条梁上を面的に滑らせる機構とし、ダブルツインジャッキを用いて架台下端に取り付けたPC鋼線を引き込むことで移動を行うこととした。通常の送出し等で用いる車輪タイプでは重量が重すぎて横取りが困難なため、このような機構を採用したとのことだ。
軌条梁上にはステンレス板、スライディングシップ下面にはテフロン板を設置して摩擦係数を少なくすることで滑りやすくし、スムーズに移動が行えるようにしている。ダブルツインジャッキは、外側のジャッキと内側のジャッキが交互に動いてPC鋼線を引き込めるため、連続稼働が可能になり、作業時間を短縮できることから採用している。同ジャッキは各ベントの最上流側に4基設置して施工した。
施工概要(首都高速道路提供)
横取り設備。中央・右写真は、ダブルツインジャッキ(中央写真:首都高速道路提供。撮影:共映)
作業は計画通りに進み、翌29日午前0時30分頃には横取りを完了させることができ、その後、新設桁の横取りのためのジャッキ設備の盛替えや桁固定などを行った。
既設桁の横取り。下段は横取り完了後
新設桁の横取り開始前。(左写真:首都高速道路提供。撮影:共映)
橋長約300m、舗装、設備等を含めた重量が約4,500tに達する新設桁の横取りは、29日午前に準備を行った後、午後1時頃から開始した。横取り設備は既設桁のものと同様であるが、新設桁はP7側橋軸方向に約5m移動させる必要があるため、桁にテーパー架台を設置してクランプジャッキでテーパー架台をクランプしたうえで、クレビスジャッキの押し引きにより橋軸方向の移動ができるようにした。ダブルツインジャッキは5基用いており、P7側のベント上3基は既設桁施工時と兼用、P4側のベント上2基を新設桁用として使用した。施工は17ステップに分けて反力管理を行いながら、横取り(約33m)および橋軸方向の移動を行い、午後5時頃には新設桁を所定位置に到達させた。
新設桁の移動設備(概要図は首都高速道路提供)
新設桁の横取り
その後の工程は、P7側に約3mの端部桁を架設し、桁全体の位置調整を行った後、橋脚の現場溶接を行う。
P7側端部桁の架設(首都高速道路提供。撮影:共映)
P5とP6門型橋脚は桁から伸びる梁部と全断面溶接を行うが、板厚は脚部の仕口が95mm、梁部の仕口が70mmとなっており、それを延べ32人体制、約2日間かけて施工していく。
桁から伸びる梁部と門型橋脚
さらに、端部のグースアスファルト基層(P4側約5m、P7側約20m)および全体の表層舗装の敷設、端部の附属施設物工などを実施して、6月10日5時に交通開放を行う予定。2週間の通行止め期間中、警備員を含めた延べ作業員は2,200人に達する。
基本設計(上下部構造検討)は、長大。元請は、大成・東洋・IHI・横河JV。主要下請は、日本通運、八千代建設(上部工架設)、オックスジャッキ(ジャッキ)、島川工業(溶接)、大成ロテック(舗装)など。