プレキャストリブとPC板を用いて工期短縮を図る
NEXCO中日本 新東名高速 敷地川橋 リブ付き張出床版を採用して拡幅を実施
NEXCO中日本東京支社は、新東名高速道路の森掛川IC~浜松浜北IC間に位置する敷地川橋の床版拡幅工事を進めている。本工事は、2021年7月に開通した新磐田スマートICの付加車線の必要な幅員を確保するために拡幅を行うものだ。拡幅部にはリブ付きの張出床版を採用し部材の軽量化を図り、リブと床版の底版をプレキャスト化することにより工期短縮を図った現場を取材した。
橋長612mのPRC20径間連続中空床版・箱桁混合橋
拡幅延長は上り線181.361m、下り線115.359m 拡幅幅は1.5m
同橋は、橋長612mのPRC20径間連続中空床版・箱桁混合橋。平面線形はR=3,500mで、横断勾配は3%、縦断勾配は0.827%~1.328%となっている。同橋を含む御殿場JCT~浜松いなさJCT間は2012年4月に開通し、2020年10月には島田金谷IC~浜松いなさJCT間の6車線化運用を開始した。
当該区間(遠州森町スマートIC~浜松浜北IC間)の交通量は2019年平均で、上り線が31,000台/日(大型車混入率48.4%)、下り線が30,000台/日(同46.7%)である。
新磐田スマートIC(以下、SIC)は新東名高速道路初の本線直結型のSICで、磐田市北部の新たな玄関口として、主に工業団地直結による企業集積および雇用創出などの効果を期待して設置された。2022年平日の出入り平均交通量は約730台/日となっている。
新磐田SIC(左:本線側環状交差点から料金所方向/右:料金所側環状交差点)
新東名高速道路初の本線直結型で環状交差点を採用している(NEXCO中日本東京支社提供。注釈なき場合は以下、同)
拡幅(施工)区間は中空床版橋部で、上り線がA1~P6とP7の中間付近までの延長181.361m(加速車線部)、下り線がA1~P4先までの同115.359m(減速車線)となり、いずれも1.5mを拡幅する。
施工範囲/側面図と平面図(以下、図面等は拡大してご覧ください)
上り線(左)と下り線(右)の施工範囲写真(撮影:大柴功治。以下、撮影=*)
建設時(6車線断面)の幅員構成は、第1・2走行車線、追越車線ともに3.75m、右路肩2m、左路肩3.25mで有効幅員は16.5m。新磐田SIC開通後は車線幅と路肩幅を減少させて第1・2走行車線、追越車線、付加車線(加速車線・減速車線)ともに3.5mで運用していた。
拡幅後は、第1・2走行車線および付加車線が3.5m、追越車線が3.75m、右路肩1.75m、左路肩1.5m、第1走行車線と加速・減速車線の間の側帯が0.75mで、有効幅員は18.25mとなる。
建設時(青色)と拡幅後(赤色)の幅員構成/施工時の車線運用
拡幅床版部はRC構造として照査を実施
下部工を含めて構造上満足することを確認
同橋の建設時は、供用後に拡幅することを想定していなかったことから、既設構造物への影響を考慮して部材の軽量化を図るため、拡幅部はリブ付き張出床版を採用することとした。また、リブと床版底版にはプレキャスト製品を採用して施工効率を向上させている。
拡幅断面詳細図(上り線)
プレキャストリブを架設し、その間に底版となるPC板を敷設して配筋・打設を行う拡幅床版部はRC構造として必要な照査を行い、構造上満足することを確認した。
具体的には、①供用中の既設床版部に対しては、床版が拡幅されることで既設床版側の断面力が増減し既設内部の鉄筋やPC鋼材に生じる応力が変化することから、一体化された際の応力状態について床版全体を骨組解析および格子解析でモデル化し、許容値を満足しているかを確認、②拡幅部の橋軸直角方向では、プレキャストリブと床版で構成される片持ち梁としてのRC構造の応力度について、既設床版の鉄筋と接続されたプレキャストリブと現場打ち床版が一体化された形状を完成形として、設計荷重時における曲げ圧縮応力度および引張応力度が許容値を満足しているかを確認(照査断面は最大張出位置で行い、設計荷重時のほか風荷重時、衝突荷重時の照査も実施)、③拡幅部の橋軸方向では、プレキャストリブに支持された新設床版として発生する曲げモーメントの応力度について、床版に生じる設計荷重を算出し、プレキャストリブおよび場所打ち床版の合成断面での曲げ応力度を算出して、許容値以内であることを確認――となっている。下部工についても照査により満足することが確認されたことから、補強は行っていない。
拡幅部の橋軸直角方向の照査/拡幅部の橋軸方向の照査
上り線では施工ヤードの確保が課題に
220t吊オールテーレーン1台でP2・P6付近から全延長を施工
施工は、新磐田SICの加速・減速車線が運用されていて本線の車線規制が困難だったため、橋面上からではなく本線外からとなった。
床版撤去計画図
荷役は高架下の側道からクレーンを用いて行うことにしたが、課題となったのが上り線の施工ヤードだ。生活道路になっている上り線側の側道は通行止めにすることが不可能で1車線規制で施工しなければならないうえに、高架下にある調整池が側道側にも拡がっていて、側道から本線施工箇所までの距離が離れていた。調整池は降雨時の貯留量を確保する必要があり、一時的にでも規模を縮小することは不可能だった。
高架下の調整池(撮影=*)/上り線は1車線規制を行いながら施工していった
このため、220t吊オールテーレーン1台を用いて全延長を施工することにしたが、1車線規制内ではアウトリガーを張り出すことができず、配置場所は比較的広いヤードを確保できるP2付近とP6付近に限られた。側道と高架下の道路がT字路になっているP2付近は下り勾配となっていて、枕木を井桁に組んでレベルにした上でクレーンを配置した。
P2付近は下り勾配に220t吊オールテーレーンを設置
大変だったのは、P6付近への配置だ。アウトリガーを張り出すためには側道と側道脇のスペースだけでは足りず、調整池内に盛土をしなければならなかったからである。盛土は平均延長23m、平均幅5.7mで行い、その量は128.8m3となった。外周には大型土のう65個を2段積みで設置している。
施工が梅雨時期にもかかっていたため、水の浸透を防ぐために質の良い礫混じり土を用いるとともに、盛土内に水路を設置して排水対策を行い、シートで盛土全体を覆うことで、盛土崩壊によるクレーン転倒を防ぐ対策を行った。
盛土の構築。排水対策として盛土内に水路を設置した(下右写真撮影=*)
下り線の施工は、側道を終日通行止めにして25t吊ラフタークレーン1台(移動)と120t吊オールテーレーン1台を用いている。120t吊クレーンは側道がP1付近で行き止まりになっていることから、P1~P2の中間に配置してA1~P1の荷役で使用した。
下り線の施工
仮設防護柵にはセーフティガードを採用
クレーンは電子制御で作業範囲を管理
本線上の通行車両と施工者に対する安全対策では剛性防護柵を既設壁高欄から400mmの位置に設置し、それを基礎として支柱を立てて2mの高さで防音シートを設置している。剛性防護柵の設置延長は上り線244m、下り線174mで、セーフティガード(ケイコン製)を採用した。1基4mを橋軸方向に専用金具とボルトで連結し設置することが可能なうえに、天端に防音シートを設置できることから、その採用を決定した。
剛性防護柵(セーフティガード)の設置。専用金具とボルトで連結(右写真撮影=*)
剛性防護柵設置後には防音シートを設置した。
クレーンの作業範囲管理では曲線橋でレーザーバリアシステムが上手く機能しないため、ブームの長さ、高さ、旋回範囲をすべて電子制御できるクレーンを用いて対応した。