「田中賞」新設は3件、既設は1件、技術は1件
土木学会 2022年度土木学会賞発表 「田中賞」作品部門は気仙沼湾横断橋などが受賞
土木学会は15日、2022年度土木学会賞を発表した。20部門応募件数232件のうち、功績賞、技術賞、田中賞など112件を選定した。
功績賞は、大津政康氏(京都大学大学院インフラ先端技術コンソーシアム顧問、先端インフラメンテナンス研究所理事長)、河野広隆氏(京都大学経営管理大学院客員教授)をはじめ13名が受賞した。土木技術の発展に顕著な貢献をなし、社会の発展に寄与したと認められるインフラの計画、設計、施工または運用やメンテナンス等の画期的な個別技術に贈られる技術賞・Iグループでは、「ロックボルト打設機活用によるトンネル工事の安全性・生産性向上~木与第3トンネル工事における「BOLTINGER」の適用~」(国土交通省中国地方整備局山陰西部国道事務所、大成建設中国支店)、「軟弱地盤における耐震性及び経済性に優れた斜杭基礎ラーメン高架橋の採用~北陸新幹線(金沢・敦賀間)における本線構造物への適用~」(鉄道建設・運輸施設整備支援機構北陸新幹線建設局、鉄道総合技術研究所)など、12件が受賞した。
ロックボルト打設機による施工/斜杭の圧入
田中賞は業績部門4件、論文部門2件、作品部門【新設】3件、同【既設】1件、技術部門1件が選定された(詳細は下記に掲載)。作品部門【新設】は「気仙沼湾横断橋(愛称:かなえおおはし)」「南阿蘇鉄道 第一白川橋梁」「吉野川サンライズ大橋」の3橋、同【既設】は「淀川大橋の大規模更新」、技術部門は「落橋防止機能付きシリンダー型粘性ダンパー」となっている。
表彰式は、6月9日午後12時30分から、東京・ホテルメトロポリタンエドモントで行われる。
「田中賞」業績部門
・保田雅彦氏(大日本コンサルタント)
対象業績:長大橋の設計施工技術の開発と国内外の橋梁技術発展への貢献
・古田均氏(大阪公立大学)
同:橋梁等構造物のライフサイクル評価への情報学的アプローチ技術の確立
・菅野昇孝氏(富士ピー・エス代表取締役会長)
同:橋梁床版の合理化施工の研究開発と発展への貢献
・大田孝二氏(NPO法人道路の安全性向上協議会理事)
同:鋼橋の耐久性確保のためのコンクリート床版に関する損傷対策技術の発展及び普及
「田中賞」論文部門
・溶接止端に留まる疲労き裂が生じた面外ガセット溶接継手に対するUITの補修効果
上坂健一郎氏(首都高速道路技術部)、時田英夫氏(首都高速道路技術センター構造技術研究所)、森猛氏(法政大学名誉教授)、内田大介氏(法政大学デザイン工学部)、島貫広志氏(日本製鉄鉄鋼研究所材料信頼性研究部)、冨永知徳氏(日本製鉄鉄鋼研究所鋼構造研究部)、増井隆氏(首都高速道路保全・交通部)
・NUMERICAL SIMULATION OF RUPTURE AND PROTRUSION OF VERTICALLY TIGHTENED PC BARS IN PC GIRDERS WITH ASPHALT PAVEMENT USING APPLIED ELEMENT METHOD
Addisu Desalegne BONGER氏(横浜国立大学)、細田暁氏(横浜国立大学)、Hamed SALEM氏(カイロ大学)、深谷卓央氏(首都高速道路更新・建設局)
「田中賞」作品部門【新設】
気仙沼湾横断橋(愛称:かなえおおはし)
・企業者:国土交通省東北地方整備局仙台河川国道事務所
・設計者:(斜張橋部)大日本コンサルタント/(高架橋部)長大
・施工者:(下部工)鹿島建設、東亜建設工業、不動テトラ /(斜張橋部上部工1)エム・エム ブリッジ、宮地エンジニアリング、川田工業/(斜張橋部上部工2)JFEエンジニアリング、IHIインフラシステム、日本ファブテック/ (高架橋部上部工)高田機工、横河ブリッジ、佐田建設
・所在地:宮城県気仙沼市
・構造形式:(上部構造)3+7径間連続鋼箱桁橋+3径間連続鋼斜張橋、鋼製逆Y型主塔/(床版構造)RC床版、鋼床版/(下部構造)RC壁式中空橋脚、RC張出式中空橋脚、逆T式橋台/(基礎構造)鋼管矢板基礎、場所打ち杭、深礎杭、直接基礎
・橋長:1.344m
(下右写真)主塔の架設(撮影:井手迫瑞樹)
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南阿蘇鉄道 第一白川橋梁
・企業者:南阿蘇鉄道、鉄道建設・運輸施設整備支援機構
・設計者:(上部構造)エム・エム ブリッジ/ (下部構造)八千代エンジニヤリング
・施工者:エム・エム ブリッジ
・所在地:熊本県阿蘇郡南阿蘇村~熊本県菊池郡大津町
・構造形式:(上部構造)2ヒンジスパンドレル・ブレースド・バランスドアーチ橋(橋まくら木式開床)/(下部構造)逆T式橋台(杭基礎)、重力式橋脚(杭基礎)、壁式橋脚(杭基礎)
・橋長:154.673m
架設状況(右写真/撮影:井手迫瑞樹)
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吉野川サンライズ大橋
・企業者:西日本高速道路
・設計者:鹿島建設・三井住友建設・東洋建設JV、エイト日本技術開発
・施工者:鹿島建設・三井住友建設・東洋建設(株)JV
・所在地:徳島県徳島市河内町旭野~東沖洲
・構造形式:(上部構造)PC15径間連続箱桁橋/(下部構造)RC柱式橋脚(鋼管矢板井筒基礎・鋼管杭基礎)・逆T式・ラーメン式橋台(鋼管杭基礎)
・橋長:1696.5m
架設状況(右写真/撮影:井手迫瑞樹)
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「田中賞」作品部門【既設】
淀川大橋の大規模更新
・企業者:国土交通省近畿地方整備局大阪国道事務所
・設計者:エイト日本技術開発、IHIインフラシステム・横河NSエンジニアリングJV
・施工者:IHIインフラシステム・横河NSエンジニアリングJV
・所在地:大阪府大阪市福島区海老江地先~大阪府大阪市西淀川区野里地先
・構造形式:(上部構造)鋼24径間単純鈑桁橋(RC床版から鋼床版へ取替え)、鋼6径間単純上路式ワーレントラス橋(RC床版から鋼床版へ取替え)/(下部構造)RC円柱橋脚(オープンケーソン基礎)、RC控え壁式橋台・小判型橋脚(木杭基礎)
・橋長:724.5m
(右写真)鋼床版の架設
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「田中賞」技術部門
落橋防止機能付きシリンダー型粘性ダンパー
・開発者:首都高速道路、横河ブリッジ、オックスジャッキ
・代表的な構造物:首都高速11号台場線芝浦JCT、首都高速都心環状線浜崎橋、首都高速都心環状線赤羽橋
同ダンパーは制震ダンパー機能と落橋防止機能の両方を有する。これにより、支承周辺に設置する耐震補強構造の簡素化・効率化と、耐震補強費用の縮減が可能となっている。また、新たに開発した2軸回りに回転するユニバーサルクレビスをデバイスの両端に設置することにより、制震ダンパーを固定するクレビス機能だけでなく、落橋防止構造に要求される全方向に可動する性能を確保していることも大きな特徴だ。
(右写真)デバイスの端部に設置されたユニバーサルクレビス