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内外構造、シャープ化学工業と共同開発 特化則や有機則に非該当な材料を用いたスプレー工法

阪神高速技術 小規模な鉄筋防錆やコンクリート剥落用途に応急補修スプレー剤『ファストコート』を開発

公開日:2023.05.17

 阪神高速技術と内外構造、シャープ化学工業は、高架橋点検時の小規模な鉄筋防錆やコンクリート剥落用途に応急補修スプレー剤『ファストコート』を開発し、このほど営業を開始した。成分を調整することで、換気が行えない箇所でも使用可能で、次期定期点検(最長5年)までの防錆、表面保護性能を有する。防錆と剥落防止性能を併せ持つため、施工性に優れていることなどが特徴だ。同剤は既に共同特許出願済みだ。(井手迫瑞樹)

小規模な防錆効果と剥落防止性の両立が可能
 樹脂に特殊アクリルエマルジョン、防錆顔料にステンレスフレーク

 阪神高速では従来、点検時の露出や小規模な腐食が生じた鉄筋には変性エポキシ系のスプレー剤を塗布し、その上に一液型エポキシ樹脂系浸透性固化材を施工して剥落防止性能を付与していた。しかし、閉鎖された箱桁内部や遊間の狭い箇所、その他の狭小空間においては、有機則、特化則に該当する材料のスプレー塗布は、大規模な養生設備や専用保護マスクの装備などの対策が必要で、損傷が発見されても応急処置をすることは難しかった。


吹付状況

 そのため、3社は2019年から特化則や有機則に該当しない材料を使い、さらに施工性を向上させるため、小規模な防錆効果と剥落防止性の両立が可能な製品の開発に着手した。材料は樹脂に特殊アクリルエマルジョン(特殊とはコアシェル構造を持ち、さらに金属面に良好な付着性を示す、機能性エマルジョン樹脂である)、溶媒に水、防錆顔料にステンレスフレークを用い、添加剤も有機則や特化則に非該当な材料を用いて、作業者の安全性を確保した。


ファストコートの特長・主要成分など

樹脂層中のステンレスフレークが紫外線や熱を反射、樹脂の耐久性を向上
 阪神高速道路グループを中心に3,000本程度の販売を目指す

 防錆性能はステンレスフレーク、剥落防止性能は特殊アクリルエマルジョン樹脂が担当する。樹脂中のステンレスフレークが、樹脂が形成した塗膜中にきれいに配向されることで、ステンレスフレークが紫外線や熱を反射し、樹脂内への吸収を抑制し、樹脂の耐候性を向上させる効果ももたらしている。

 3社は2019年から開発を開始したが、当初はプラスチック製のスプレイヤーの中に入れるものとして試験施工していた。材料を入れる手間や、スプレイヤーそのものの耐久性などの点で難があり、2020年からはエアゾールスプレー化を目指した。
 エアゾールスプレー化に当たっては、材料の粘性調整やステンレスフレークの粒径、高圧ガスとの相性などを試したうえで、今回、製品化に至った。
 まずは阪神高速道路グループを中心に3,000本程度の販売を目指す。将来は、コンクリート構造物だけでなく、鋼橋はもちろん、ガードレールなどの亜鉛めっき防錆されている鋼部材、プラント設備や鉄塔などに手軽にスプレーを用いて防錆できる材料として拡販していく方針だ。


ファストコート

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