岐阜国道事務所が、岐阜県からの権限代行として進められている川島大橋災害復旧事業における旧上部工の撤去がこのほど完了した。下部工もA2橋台およびP3橋脚の撤去が全て完了し、P2、P4橋脚の撤去も基礎部を除き完了している。現在は、新設橋のP1橋脚、A1橋台、A2橋台の施工を進めている状況だ。また、歩行用仮橋(橋長395m(歩道幅員4m)については設置を完了し、令和4年8月26日に供用を開始している。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)
歩行用仮橋(左岸側はヒロセ製のプレガーダー橋を用いている)
左岸側のヤードを30m以上確保 P3~P1間は、昼夜兼行で施工
新設P1の施工と既設桁の撤去を並行作業できるよう工夫
上部工の撤去
川島大橋の既設上部工は、車道橋が橋長約343.5mの鋼5径間連続下路トラス橋、歩道橋が橋長343.6mの鋼単純下路トラス橋(5連)である。P3~A2間に関しては既報通り大型クレーンを用いた径間ごとの一括撤去を行った。ここで報じるのはA1~P3間3径間の撤去方法である。
既設桁の撤去方法
A1~P3間の撤去イメージ
A1~P3間の撤去については、まず重量の軽い歩道部はトラベラークレーン(約28t・m)のみを用いて、延長約9mごとに吊支持して切断・撤去した。
歩道橋部切断状況
車道部は架設桁を使って既設桁を吊支持して撤去する手法を用いて、順次切断しては撤去することを繰り返した。架設桁と手延べ機等を合わせた総延長は約186mに及び、製作した部分だけで、手延べ機は約39m、架設桁(連結構を含む)は約86m、手持ちの架設桁は約61mであり、鋼重は約380tに達する。撤去した桁を吊るトラベラークレーンは約42t・mの能力のものを用いている。
架設桁の送出し
架設桁の引戻し作業
架設桁は既設桁のトラス内に配置し、送り出しする形で用いている。ここで問題になったのが、左岸側(A1側)のヤードの狭さである。県道180号と堤防上の道路が交差する同箇所は、道路線形的にもヤードを取りにくい箇所であった。しかし、道路を切り回すことにより、30m以上の幅のあるバックヤードを確保することができ、架設桁の地組をスムーズに行うことが可能となった。
30m以上の幅のあるバックヤードを確保(井手迫瑞樹撮影)
さて、製作した手延べ機は5分割、架設桁は10分割(連結構を含む)、元請手持ちの仮設機材は7分割されて現場に搬入し、順次繋いで送り出していく。送り出しについては先に既設桁上(A1~P3)に軌条設備、P1、P2上に送り出し装置を設置して、施工していった。
架設桁の送出し完了後は、既設桁の撤去に入った。既設桁の切断は、架設桁によって吊支持した状態で、上横構→上弦材→斜材→下弦材を切断し、最後に架設桁が支持している横桁を切断した。桁自体にはPCBや鉛の含有が認められなかったため、歩道部、車道部とも切断前に特別な養生の必要はなかった。
架設桁によって吊支持した状態で、上横構→上弦材→斜材→下弦材を切断
最終版の撤去状況(井手迫瑞樹撮影)
上部工撤去は令和4年5月から始めたが、P3~P1間については、昼夜兼行で施工し、2昼夜で1格点(9m)の撤去を行った。撤去した部材はトラベラークレーンで背後に待ち受けている台車に載荷し、A1側のバックヤードまで運び、場外に搬出するということを繰り返した。
既設P3~P2間には新設P1橋脚が配置されていたが、既設と新設を並行して作業できるよう工夫した。具体的には、P2~P1間の既設桁撤去を行う際、新設P1橋脚の築島工(鋼管矢板打設)の邪魔になる手延べ機を夜間に一時撤去し、P2~P1間の既設桁撤去が完了して、桁の引き戻しに手延べ機が必要になった際に、夜間架設して手延べ機の復旧を行うことで、昼間に行うP1橋脚の施工を阻害しないようにした。
手延べ桁を一時的に解体し、P1橋脚を施工できるようにする
夜間架設して手延べ機を復旧
P1~A1間は昼間のみの施工とし、1月下旬には全上部工の撤去を完了している。
仮桟橋工は短期間に設置・解体できるLIBRA工法を用いた
既設A2橋台はA-CR工法を使って撤去
下部工の撤去
河川内の下部工の撤去を行うためには、先ず施工用重機や搬入出用のトラックが作業できる仮桟橋工の設置が必要となる。仮桟橋工は延長約202m、幅員8mという大きなもので、非出水期に入った令和4年10月から設置工を始めて、11月下旬までに直線部を完成させ、12月には橋脚周りの構台部も含めて設置を完了したが、出水期までには撤去を完了せねばならず、4か月程度しか使えない。そのため少しでも早く仮桟橋を設置・解体できる横山基礎工事のLIBRA工法を用いている。
P4橋脚躯体部の撤去
既設P3橋脚撤去後の状況、土の下のフーチングも撤去(左)/今後P4橋脚はフーチングを撤去しなければならない(中、右)(井手迫瑞樹撮影)
仮桟橋の設置状況
A2橋台についてはA-CR工法を採用し、令和4年12月上旬より撤去工を始めて、3月上旬までに全ての撤去が完了した。同橋台は幅約13m、躯体部の高さ約8m、基礎構造はケーソン基礎で、深さ約12mとなっている。A-CRは地面の上に全周回転機をおいて、φ3,000mm級のケーシングを使って深さ約20mまで回転、切削圧入させながら、クローラクレーンによりA-CR機をケーシング内に挿入セットし、既設基礎を壊していく工法だ。所定の位置まで掘り進める際は、適宜アタッチメントを油圧ハンマグラブに変えて、既設部材をすくい取り、搬出していく。
A2橋台におけるA-CR工法の施工
A2橋台では、こうした施工を躯体部4本、基礎部16本で、隙間が生じないように掘る箇所をラップさせながら施工していく。施工に要する日数は、1本につき3日~1週間程度となっている。というのもA2橋台は撤去深度が深く、周面摩擦が大きいため、全周回転機が入りにくい状況にあるためだ。
河川内橋脚は、河川管理者との協議の結果、全既設橋脚で基礎工まで撤去が必要となったため、残りの橋脚基礎の撤去についても同様に施工を行っていく予定だ。
撤去前のP2橋脚(井手迫瑞樹撮影)