道路構造物ジャーナルNET

2022年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑩高田機工

収益基盤の構築、企業価値向上へ 全天候型塗装工場が完成

高田機工株式会社
代表取締役社長

髙橋 裕

公開日:2022.10.24

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。5回目は、高田機工の髙橋裕社長と日本ファブテックの野上勇社長の記事を掲載する。

 ――2021年度の業績は
 髙橋 売上高は前期比3%増の156億円で、橋梁事業が約121億円、鉄構事業が約35億円となった。売上高全体としては前期比でわずかに増加したが、橋梁事業の構成比率が減少した影響で、営業利益と経常利益は前期実績をやや下回っている。
 ――今年度の見通しは
 髙橋 橋梁事業においては新設鋼橋発注量が今年度こそ20万tの水準になることを期待しており、加えて、新たな保全工事の受注も視野に入れている。
 また、鉄構事業では首都圏の大型再開発工事を中心に建築需要が堅調であるため、社内体制の強化、生産性向上などにより増産を目指し、当面の目標である全体売上の4割を占める水準まで持っていきたい。
 ――設備投資について
 髙橋 ブラスト工場の更新に合わせて併設した全天候型塗装工場が完成した。良好な条件での塗装作業による品質の安定化に加え、工程管理の精度が向上した。特にブラスト処理後、4時間以内に塗装する必要がある第1層の無機ジンクリッチペイントの塗装作業が天候の影響を受けずにできるようになったことの効果は大きい。設備投資としてはこのほか、工場稼働以来長期間使用している設備の更新などを進めていく。


全天候型塗装工場が完成

 ――中期経営計画に基づく取り組みについて
 髙橋 当社は今年3月に会社設立90周年を迎えた。昨年5月に開示した第6次中期経営計画では、会社設立100周年を見据えた経営基盤強化のため、3つの主要戦略として「安定した収益基盤の構築」「企業価値の向上」「魅力的な企業創り」を掲げている。
 収益基盤の構築については、保全工事が増加する流れに対応することはもとより、設備投資による生産性向上、鉄構事業の強化とともに、新たな事業の柱の構築を模索していく必要があると考えている。
 今年度からは各種デバイス製品の開発と販売強化に向け、専任者のいる「デバイス推進室」も設置した。当社ではこれまでの制震ストッパーやシェイプアップブレースなどの制震デバイスに加え、新たな製品としてFRP製ハンドホールの販売などを手掛けており、導入実績も着実に伸ばしている。
 このほど、鋼橋継手の高力ボルトのナット部に手で被せ、さびの進行を防ぐとともに目視で確認できる「ボルトキャップ」を新製品として販売予定であり、さらなる新製品の開発を推進していく。
 企業価値の向上については、デジタル化推進による生産性向上として、3Dスキャナーにより現場風景上に投影した橋梁の3Dモデルに時間軸として工程データをリンクさせ、施工手順やスケジュールなどの施工工程を管理できる「4Dシミュレーション(KOLC+)」の導入を進めている。
 国土交通省東北地方整備局の国道4号箱堤高架橋上部工工事では、架設開始から完成までを「4Dシミュレーション」で管理するとともに、架設現場ではMR(複合現実)技術を利用した3次元のホログラムにより桁の塗装色を決定する試みも行っており、今後もDX推進の取り組みで、生産性の向上や効率化を進めていきたい。
 このほか、地域活性化の取り組みとして和歌山大学とアントレプレナーシップ(起業家精神)教育による人材育成に関する包括連携協定を締結した。学生と当社の若手社員が一緒に当社の将来事業を検討する実習を通じ、起業家精神を持つ学生の育成に協力している。
 また、魅力的な企業創りについては、昨年度にバックオフィスの充実を図り、計画的な社員教育や規程の見直しなど人事制度の改革を進めている。将来への布石となる取り組みを今後も進めていきたい。
(聞き手・八木香織、文中敬称略)

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