道路構造物ジャーナルNET

2022年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ⑨日本ファブテック

10月以降は稼働率100%超 ベクトル合わせ全社一丸で前進

日本ファブテック株式会社
代表取締役社長

野上 勇

公開日:2022.10.24

 当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。5回目は、日本ファブテックの野上勇社長と高田機工の髙橋裕社長の記事を掲載する。

 ――前年度の業績は
 野上 売上高318億円、経常利益15億円、受注高473億円だった。鉄骨の受注は鋼材の高騰に加えコロナ禍の影響による計画見直しや海外ファブの参入増などで契約が難航したが、何とか目標は達成できた。橋梁は官庁工事の大型案件や、60億円超に達したリニューアル工事の受注などで当初目標を大幅に上回ることができた。工場稼働は過年度の受注不振によって山が低く、平均稼働率は80%前後にとどまったが、コロナ禍でも各工事がほぼ予定通りに進捗したことに加え、橋梁リニューアル工事の追加や設計変更にうまく対応できたことが利益確保に寄与した。
 ――今後の工場稼働は
 野上 鉄骨は端境期を脱し、大型再開発案件がいよいよ本格的に動き出す。弊社工場の稼働率も10月からは100%を超え、24年ごろから2~3年間は橋梁を含めて製作のピークを迎える見通しにあるので大いに期待している。
 ――22年度の業績目標は
 野上 売上高385億円、経常利益15億円、受注高370億円を目標とする。今後、生産性の向上や、工場間接費などの見直しを進め、将来的に経常利益率5%を確保し得る筋肉質な企業体質を目指す。
 ――設備投資の状況は
 野上 熊谷工場は先に新事務所が完成し、引き続き敷地内の遊休地にヤードを整備する。建築は現場の遅延で製品出荷が2~3カ月滞るケースも珍しくなく、新ヤードの整備によってそうした状況への対応力を高める。また熊谷に続き、防府など他工場でも事務所棟の建て替えを予定しているが、昨今の建設費の高騰を受けて当面の間、計画を見合わせる。その分を生産設備の拡充に振り替え、全工場において各事業分野の動向を見据えた適正な生産装置への更新を推進する。
 ――鋼材等の価格高騰の対応策は
 野上 価格転嫁活動の推進に尽きるが、特に民間主体の鉄骨はスライド条項の適用を求めても、価格上昇分全てをみてもらえることは極めて稀だ。戦略として、超高層下部のビルトボックス柱など、Sグレードしか関われない付加価値が高い物件の営業活動を強化している。さらには、再開発案件は工期が長いため、プロジェクト単位でなく、工区ごとの契約などもゼネコンに配慮してもらっている。


東広島・呉道路阿賀ICランプ橋鋼上部工事

 ――新技術・新分野の取り組みについて
 野上 橋梁リニューアル関連では合成床版、維持管理、品質向上の技術開発に取り組んでおり、このうち維持管理で開発した摩擦接合に適用できる片面施工用の「高力スタッドボルト」などが着実に実績を伸ばしている。生産性向上に向けた技術開発では、工場内の溶接工程のロボット化を進める一方、現場内での溶接ロボットの生産性向上等にも、引き続きサポートしていく。新事業関連ではビルトボックスやビルトH形鋼の施工性を改善するための実験等に取り組んでいる。
 ――課題と今後の戦略
 野上 キーワードは変革、DX、カーボンニュートラル。変革については将来構想と企業最適のふたつのプロジェクトチームを立ち上げた。当社は東京鐵骨橋梁と片山ストラテック、そしてエモトの3社が統合した企業。それぞれ企業文化が異なるが、出身母体に関わらずベクトルをひとつにし、全社一丸となって前進していきたい。DXは情報化と機械化が鍵であり、ハード面ではスマート工場化、生産においては鉄骨ではKAPシステムによるBIM、橋梁はCIMを推進する。カーボンニュートラルへの対応では、老朽化設備の更新のほか、通勤バスでのバイオディーゼル燃料の使用など、身の丈に合わせた形で対応を進めている。また人員面では橋梁リニューアル部門の拡充が最大のテーマであり、現在約30人いる技術者の倍増を目指す。
(聞き手・田中貴士、文中敬称略)

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