2022年わが社の経営戦略 大手ファブ トップインタビュー ①横河ブリッジ
国内道路橋20万t超え期待 フロントローディングで効率化実現
株式会社横河ブリッジ
代表取締役 社長執行役員
吉田 昭仁 氏
当NETの姉妹メディアである「週刊 鋼構造ジャーナル」では、毎年、橋梁を主事業のひとつと位置付ける鋼構造ファブリケーター各社のトップに経営戦略を尋ねるインタビュー記事を掲載している。その内容について、数回に分けて転載していく。1回目は、横河ブリッジの吉田昭仁社長と、IHIインフラシステムの上田和哉社長の記事を掲載する。
――業界を取り巻く環境については
吉田 国内鋼道路橋の発注量は、重量ベースでは19年度の13万1,000tから20年度18万3,000t、21年度18万9,000tと回復傾向にあるが、業界としての最低ラインである20万tに届いていないので、今年度こそ20万t超えを期待している。受注金額ベースは新設橋梁が2,000億円台で推移している。保全事業は以前までは500億円前後だったが、20年度2,052億円、21年度1,345億円と増加しており、保全事業の重要性が増している。これからは新設と保全の2本柱と捉えて進めていく必要がある。
今年度第1四半期の発注量は、約2万2,000tと対前年同期比約35%減となった。直轄事業は前年並みだが、高速道路会社の発注が前年に比べると低水準なためで、今後の発注に期待している。
――昨年度の業績は
吉田 昨年度は、売上高760億円、営業利益114億円、経常利益114億円となった。売上高、営業利益、経常利益ともに前年度を上回り、数字としては満足している。
――22年度の見通しは
吉田 今年度は受注高760億円、重量ベースでは橋梁以外の製品を含めて4万6,000tを目指す。第1四半期終了時点では、関東地方整備局の「三坂新田高架橋上部その3」、東日本高速道路の「広内川橋」、西日本高速道路の「富野高架橋」などを受注し、ほぼ目標通りに推移している。
――設備投資については
吉田 20年から進めてきた大阪工場内のブラスト設備のリニューアルが完了し、大型の設備投資はひと段落した。今年度は各事業所・工場の既存設備の老朽化対策を進めていく。
――DX推進については
吉田 DXに関しては、担い手確保・人材育成においてもポイントになると考え、成果が出るように取り組んでいる。具体的には、基幹業務系のツールは横河ブリッジホールディングスが主導して推進しており、技術系のツールに関しては事業会社ごとに推進している。
まずはDXを活用することにより、現場の生産性向上・作業環境の改善に注力していきたい。現時点では、3次元モデルを用いて架設計画や不具合確認に活用している。工場では3次元製造モデルから加工データや帳票類を自動生成させている。設計の不具合チェックでは、3次元モデルに排水管や検査路など付属物の3Dデータを搭載し、製作開始前に干渉確認を行うフロントローディングを数年前より実施し、不具合件数は格段に減少している。
また、既設の構造物を3Dスキャナーで撮影し、点群データを3Dモデル化し、保全工事の施工計画などに活用している。
新大栃橋(高知県発注)
――新技術・製品開発は
吉田 建設会社やメーカーと共同で、保全工事用の工法、製品の開発に注力している。これまで床版取替工法、橋梁更新工法、IHを利用した塗膜剥離技術などを開発、実用化している。また、アルミ合金製の常設足場「cusa」、検査路「KERO」などの橋梁維持管理関連製品に注力している。さらに、吸音機能を付加した「吸音cusa」を開発、発売した。
――海外事業については
吉田 事業の撤退は一切考えていない。継続して実施していく。海外事業に取り組みたい若い社員がかなりいるので、その夢を実現できるようにしていきたい。現時点では東南アジアからアフリカまで、ODA案件を中心に受注活動に取り組んでいる。ただ、コロナ禍の影響もあり、発注案件が少ない状況にある。
――カーボンニュートラルについては
吉田 会社として、二酸化炭素排出量(スコープ1、2)を2024年度には20年度に比べて20%削減、30年度には同50%削減を目指す。さらに各部署には具体的な数値目標を決め、削減に取り組んでいる。
(聞き手・佐藤岳彦、文中敬称略)