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荒川湾岸橋で点検新技術を公開

首都高速道路 点検ロボットの活用で視認範囲が約50%向上

公開日:2022.09.13

 首都高速道路は老朽化が進む構造物の適切な維持管理のために、目視が困難な箇所の点検をロボットやドローンなどの新技術の導入により補い、点検精度を高めることで業務を効率化する取組みを進めている。その事例を高速湾岸線の荒川湾岸橋で報道陣に公開した。

ドローンや昇降式全方位カメラも用いて点検業務を効率化

 荒川河口に架かる荒川湾岸橋(橋長840m)は約1,700の部材で構成されたトラス橋で、その複雑な構造から点検通路上や船上からの目視点検では死角となる箇所が多く存在している。死角箇所や目視点検での異常箇所はロープアクセスによる詳細調査を実施しているが、法令点検期間の5年で全数点検を行うことは難しく、点検業務の効率化が求められていた。そこで導入されたのが、今回公開されたロボットやドローン、昇降式全方位カメラの点検新技術だ。同社によると、この3技術を組み合わせて点検を実施しているのは同橋が初めてだという。
 ロボットは、トラス橋などの点検のために首都高技術など同社グループで既存の技術をもとに開発したもので、上弦材の横構を無線通信で走行し、本体上部に搭載された全方位カメラで床版下面や縦桁を撮影していく。撮影した映像は、Wi-Fiにより手元の端末で確認できるようになっている。点検通路上からの目視可能範囲は床版下面で全体の約27%(3/11格間)、縦桁で全体の約29%(7/24面)と限られていたが、ロボットを使用することで、床版下面は約81%(9/11格間)、縦桁は約75%(18/24面)の確認が可能となった。


横構を走行して床版下面や縦桁を撮影する。画像は手元の端末で確認可能だ(大柴功治撮影。写真は以下、同)

目視範囲と点検ロボットの視認範囲(首都高速道路提供。図版は以下、同)

 ロボットで確認が困難な外桁部などはドローンを活用して撮影を行う。ドローンは、橋梁点検を行うための機能を同社グループとNTTドコモが共同で開発し搭載している。非GPS環境下でも安定した飛行ができるとともに、小型ドローン(Skydio2)では狭隘部(約90cm)への進入も可能だ。


小型ドローンは狭隘部への進入も可能

ドローンによる補完範囲

 昇降式全方位カメラはロープの先端に全方位カメラを取り付けたもの。点検通路上から人力で吊下げることにより、目視が難しい点検通路直下の格点部などの撮影を行う。社員のアイデアをもとに同社グループで開発している。


昇降式全方位カメラによる点検

昇降式全方位カメラでの視認範囲

 これらの新技術は他橋梁でも順次取り入れており、点検困難箇所の点検精度向上と効率化に寄与している。
 このほか、同社で活用されている点検技術として、高所での打音検査が可能な「こんこん ~連続打音検査装置~」や、高所作業車が設置できない高所の状況確認ができる「あいあい ~軽量垂直ポールカメラ~」、赤外線サーモグラフィ法を活用してコンクリート構造物の空洞や鋼床版縦リブ内の滞水検知を行う技術が紹介された。


「こんこん」(左2枚)/「あいあい」(右から2枚目)/赤外線サーモグラフィ法を活用技術(右)

i-DREAMsの導入により生産性が約20倍向上

 同社が運用している維持管理システム「i-DREAMs」でのDX技術の活用状況も公開された。そのひとつが3Dハンディースキャナーで、複雑かつ狭隘な箇所の3次元点群データと可視映像を同時に取得し、リアルタイムで3D化ができるもの。これにより、損傷状況を面的に定量化でき、損傷診断や補修補強検討が容易になる。また、補修補強後のデータをi-DREAMsのデータプラットフォームに集約することにより、次の補修補強時に活用できるなどの維持管理の高度化・効率化を実現している。


3Dハンディースキャナーによりリアルタイムで3次元化が可能

 点検結果報告書の作成を効率化するものとしては「音声入力点検アプリ」を試行している。i-DREAMsの点検データベースと連動することにより、タブレット端末のみで点検作業と報告書作成が完結し、現場での損傷記録は音声入力により半自動化が可能となるものだ。
 i-DREAMsの導入により、点検時における資料収集などの事前準備や補修時の事前測量作業などが不要になり、生産性が約20倍向上したという。

 当日は同橋の補修状況も公開され、5月20日の現場公開時に破断していたガセットプレートの補修状況が確認できた。


ガセットプレート補修後状況

補修前のガセットプレート破断状況

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