止水材は1成分タイプのウレタン樹脂系塗料を採用
KFケミカル 伸縮装置の止水機能を回復させる「KFシールテクトYKB-J工法」を展開
1日で片側1車線約5mの施工が可能
NEXCOの補修工事で採用 施工延長は610.85m
KFケミカルは、橋梁伸縮装置止水部の補修工法である「KFシールテクトYKB-J工法」を展開している。同工法は、止水部が損傷し漏水が生じている伸縮装置に対し、1成分内部速硬化型ウレタン樹脂系塗料を充填することで、伸縮装置本体を取替えることなく止水機能を回復させるもの。
1成分タイプの止水材に硬化促進剤を添加することで、早期に内部から硬化し性能を発揮するため、1日で片側1車線約5mの施工を完了できる。また、1成分タイプの採用により混合不足による硬化不良の危険性がなく、止水材全体の性能が安定していることも特徴だ。
これまでNEXCOの補修工事(37橋、72箇所)で採用され、施工延長は610.85mに達している。
YKB-J工法の概要(KFケミカル提供。以下、同)
硬化促進剤により23℃・30mmの充填では4時間で内部硬化
NEXCOの耐久試験に合格
KFシールテクトYKB-J工法では、これまで同社が各種ウレタン防水材や建築塗料で培ってきた技術を土木分野に転用して、耐久性、耐候性に優れた1成分タイプのウレタン樹脂系塗料を止水材として採用している。2液を現場で混合して反応硬化させる2成分タイプよりも人的ミスが少なくなると考えたためだ。しかし、通常の1成分タイプでは内部硬化に時間がかかることから、早期交通開放が難しいという課題があった。そこで同社では、材料のハンドリング、乾燥性、内部硬化性を調整できる複数の成分からなる硬化促進剤を開発することにより、この課題を克服した。止水材10kgに対して、硬化促進剤0.3kgを現場で添加することで、気温23℃で厚さ30mmの充填であれば4時間で性能を満足する内部硬化を実現することを可能としたのだ。「この硬化促進剤の開発により本工法を完成することができた」(KFケミカル)という。
硬化促進剤により早期に内部硬化を実現
同工法の止水材の性能については、NEXCOの弾性シール材の規格試験である試験法409で硬度を除く最大引張応力、破断時伸びなどのすべての項目で規格値をクリアしている(図表参照)。硬度はウレタン樹脂系塗料であるために、既存のシール材として採用されているポリブタチレンを対象とした規格値よりも高い数値となっており、外力に対する抵抗値を有していると判断できた。さらに、同社ではNEXCO試験法438も実施した。同試験法は900mmの供試体に30年相当の負荷をかけ、漏水試験を実施するもので、その結果、止水材に漏水は発生せずに合格となり、止水性能についても高耐久性が証明されている。
試験法409(NEXCO)の結果(左)と試験法438(NEXCO)の試験状況
簡易鋼製ジョイントなどに加え、歩道橋の突合せ目地にも適用可能
工法適用対象は、簡易鋼製ジョイント、鋼製モジュラー型ジョイント、突合せ型鋼製ジョイントで、遊間20mm以上(施工後の遊間の挙動が圧縮で50%以内、伸長で300%以内)となっている。また、歩道橋の突合せ目地にも適用可能だ。
歩道橋・突合せ目地部の施工例
施工は、既存の止水材をピックやエアハンマーで除去した後、同工具を用いて鋼材部の浮き錆を斫り落とし、ベルトサンダーやワイヤーブラシで鋼材部を研磨する。錆の斫り不足があると、錆の層から止水材が破断することにつながるため、斫り作業は「施工の中でも一番重要なポイント」(同)であり、同社では施工者に対して技術指導も行っている。
鋼材部の斫り作業(左)と研磨作業(右)
次に、遊間幅に合わせたバックアップ材(軟質発砲ウレタン)を設置し、その上にテープ材(KFシールテクトテープ300K)を敷設後、下塗材のKFウレタンプライマー50Nを鋼材部に塗布していく。また、KFウレタンプライマー50Nは含侵性が高く、鋼材だけでなくコンクリートにも高い付着力を発揮する万能プライマーとなっている。
バックアップ材設置(左)/テープ材敷設(中央)/下塗材塗布(右)
下塗材が指触乾燥するまで30分程度の養生を行った後、硬化促進剤を添加し機械攪拌した止水材(KFシールテクトベース2000)を所定の厚みの1/3程度まで流し込んでいく(1層目)。漏洩がないか確認したら、2層目を流し込み、所定の厚みを確保する。錆浸食防止のために鋼材立ち上がり部にも塗り付けて施工完了となる。
止水材塗布
施工完了
同社では今後、「高速道路会社をはじめ、国土交通省や自治体への採用を働きかけていく」方針だ。NETIS登録申請中。