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大規模更新事業に関する活発な意見交換も実施

道路橋補修・補強i-ギルド研究会 技術講演会を開催

公開日:2022.07.29

 道路橋補修・補強i-ギルド研究会(藤野陽三会長(城西大学)、右肩写真)は28日、東京大学工学部11号館講堂で第16回総会および技術講演会を開催した。総会では、2021年度活動報告および収支報告などの議案が承認された。
 技術講演会の冒頭では、藤野会長が開会にあたり話題提供としてプレゼンテーションを行い、世界的な地震学者の金森博雄氏が東日本大震災後に提言した「想定外の事態に備える」をテーマに、橋梁の耐震補強はほぼ完了しているが、地震に対して本当に“レジリエント”であるか、と問いかけた。同会長は、その例として本年3月の福島沖地震で東北新幹線の電化柱が被害を受けたことをあげ、道路においても照明柱や標識柱の倒壊や車両転倒などのさまざまなことで道路の機能停止が起こり得るため、それらに対する研究、対策の重要性を訴えた。
 前川宏一副会長(横浜国立大学)は、同氏が委員長を務める「首都高速道路における大規模更新・修繕事業及び機能強化に関する技術検討委員会」の報告を行い、第2期大規模更新事業対象として挙げられている羽田トンネルおよび荒川湾岸橋の損傷状況などを説明。今後、大規模更新・修繕事業を進めていくためには迂回路の確保が必要であり、首都高速道路のネットワークの機能強化もあわせて考えていかなければならない、とした。


講演を行う前川宏一副会長

 NEXCO西日本の松井隆行氏は「NEXCO西日本 中国道リニューアル工事(吹田JCT~宝塚IC)」と題して、交通規制を含めた同工事の詳細を報告。重交通路線における大規模更新事業では、警察や他事業者、地元との協議に時間を要することや工事用地(借地候補)の事前検討の必要性、ECI方式としても発注時に施工計画のイメージが必要であること、施工時の労務・資機材の平準化などが課題となることを説明した。
 JR東日本の野澤伸一郎氏とNEXCO東日本の安川義行氏は、福島県沖地震での新幹線と高速道路の被害と復旧について、それぞれ講演を行った。
 同講演会の最後には、初めての企画として「i-ギルド寺子屋」と題する橋梁の大規模更新事業についての意見交換が行われ、発注者と施工者が同事業に対する課題などを話し合った。
 発注者からは、・同事業では土木のあらゆる技術、知識が必要になり、現場の経験が重要になるが、人事サイクルの関係で経験することが難しくなっている、・社会的影響を少なくするために床版取替工事では分割施工も行われているが、新設の基準にあわせて設計、施工されているので、更新事業にあわせた設計、施工の検討が必要、・構造物を100年もたせるために発注者と施工者の間で本音ベースでのコミュニケーションができていない。徹底的な議論を行う場を設けるべきではないか、などの意見が出されていた。
 施工者からは、・規制期間内施工ありきで設計と施工の余裕がなく、施工では2024年度からの時間外労働の上限規制などの働き方改革への対応が課題となっている、・計画段階でシミュレーションはしているが、図面に記載されていないものがあるなど、現場で問題が発生することがあり、設計、施工の見直しが大変、・都市部では施工ヤード確保の課題だけでなく、進入路確保の課題もあり、綿密な事前計画が必要、・今後のためにあらゆる資料をきちんとした形で残しておかなければならない、などが挙げられた。


会場の様子

(写真提供:道路橋補修・補強i-ギルド研究会)

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