昨年に社名変更、6月には会社を移転しさらなる発展目指す
キーナテック WJと高周波コアドリルおよびポストヘッドバーの2本柱
キーナテック株式会社
代表取締役社長
長尾 輝久 氏
キーナテックは、前身の「ミスミ特殊」をショーボンド建設が買収した同社の100%子会社である。1972年3月に創業し、あと施工アンカー工事の分野において高周波ダイヤモンドコアドリル削孔工法や「ポストヘッドバー工法」など、それに関連する技術・特許製品などを営業・開発してきた。そして2016年11月にショーボンドが買収し、WJ工事にも参入し、社業の2本柱として展開している。昨年は社名を「キーナテック」に変更し、今年6月には会社を移転して、更なる発展を企図している。長尾輝久社長に同社の今後の展開について聞いた。(井手迫瑞樹)
社名を変更 「波」と「技術」を融合したイメージ
WJ事業の急伸により売上・利益とも右肩上がりで推移
――昨年、社名を「キーナテック」に変更しました。この社名の意味は何でしょうか
長尾 当社はコアドリル工法とWJ工法の両事業を柱としていますが、その両方とも水を使う工法です。「キーナ(κύμα)」はギリシャ語で波を意味する言葉です。水からの連想で永遠に絶えることのない大海のように生まれ変わった会社が末永く隆盛して欲しいとの願いが込められています。それに技術を意味する「テック」を接続することで、当社の進む方向を指し示す社名としました。
――ありがとうございます。次に現在の売上と利益の推移について教えてください
長尾 直近の2021年度でいうと、売上は9億円弱、営業利益は約2億円となっています。20年度は同6.1億円、1.5億円、19年度は同4億円、同0.8億円であり、売上、営業利益とも右肩上がりになっているといえます。
――その要因は
長尾 WJ事業の急伸です。当社は当初コアドリル事業のみを行っていましたが、ショーボンド建設の買収後、WJ事業も行うようになりました。グループ会社からの発注が主ですが、WJ事業が実に売上の6割を占めるに至っています。営業利益に占める割合も半分となっています。従来のコアドリルやポストヘッドバー事業は、約4億円程度で推移しています。とりわけポストヘッドバーは後発の技術に押される展開が目立っています。
――今後もWJが主体となっていきますか
長尾 そうとも言えません。原発関連の事業が堅調に推移することが予想されている他、都内のある再開発事業でもポストヘッドバーが大量に使われることが決定しており、ここ5年は毎年少なくとも1億円程度の売上が見込まれます。ピーク時はもっと額が大きくなると思われており、こちらにも注力していく必要があります。高周波コアドリルは通常のコアドリルと比べて約2.5倍も速く削孔できるスピードがあることが特徴で、とりわけ2~7mの長いコアを削孔する現場には非常に有用であり、それが評価されての需要であると考えています。
コアドリルの施工②
コアドリルの施工②
2022年度売上げは10億円を見込む WJが6割
WJは業者と協力のもと、更なる技術の習熟目指す
――22年度の売上見込みは
長尾 売上は全体で10億円を見込んでいます。特殊コアドリル・ポストヘッドバーが4割、WJが6割という状況は変わりません。
――WJ事業は、当初内製化を目指していましたが、実際はどのような体制で臨んでいますか
長尾 当初は、人材の外部からの招聘や、M&Aなどによる体制整備による内製化を目指していました。しかし、大規模更新・修繕など維持管理事業分野の拡大により、各社とも人材の囲い込みや事業の継続意識が高く、そうした試みは難しい状況です。そのため、WJについては、協力業者を募り、それらの会社とともに事業を拡大していく方針を取っています。当社はそれらを含める現場管理ができる人材として、当グループの方に何人か来ていただいています。
――といってもWJは、特にNEXCOにおいては機械と技能者のセットではつりおよび表面処理の供試体を用いた試験を受けなければ現場では使えませんし、そうした技術を持つにはWJ専業者の協力は不可欠です。その辺はどのように考えていますか
長尾 西においては、日進機工さん、東においてはフジクスさんなどと組んでWJを展開しています。特にフジクスさんには、同社の協力のもと、本社の従業員や別の協力業者の技能者を出向させて、WJ技術の習熟を行わせていただく運びになっています。同社は全国幅広くWJを展開しており、橋梁分野へのさらなる進出を目指しています。そうした補完関係を成立させるためにも技術の習熟をお願いしています。
また、この12月から待望の自社施工班として作業員・機械一式を新たに1班整備し、さらに来年度にももう1班整備して2班の自社施工班を構築する予定です。
WJの施工①
WJ 安全面により配慮
――WJは機械施工ですか、ハンドガンですか
長尾 最終的には機械施工に行きたいと考えていますが、当初は、支承部など狭隘な箇所の施工が多いことを鑑みてハンドガンでの施工やそれに伴う設備投資に絞っています。
――WJ、とりわけハンドガン施工は、機械施工以上に安全に留意する必要があります
長尾 承知しています。安全と品質の両立無くして事業は行えませんし、利益も確保できません。対話型の安全パトロールを徹底すると共に、WJ装置や設備の安全面にもより配慮していこうと考えています。
WJの施工②
――そうした設備類や人員増に対応するため新たに事務所を移転しましたね
長尾 新大宮バイパスや首都高大宮線に面するさいたま市中央区上峰1丁目3-12に移転しました。
新大宮BPに面した社屋/広い駐車場
大型設備を格納できる倉庫
前に事務所があった場所は、WJなどに使う大型設備を格納することなどは考えていなかったため、手狭であり、人員増によって生じる従業員の駐車場不足などにも対応できませんでした。移転先は1千坪もの広さがあり、WJのポンプやそれを車載するトラックなど大型設備を格納できる倉庫もあります。また、駐車場も広く人員増にも対応できます。オフィスも耐震性を備えた社屋となり、安心して勤務できる状況になりました。心機一転して従業員も仕事に励んでいます。
――ありがとうございました