関門橋の添接部における錆の除去などで実績
IHI検査計測 有害物質を含む塗膜や錆を非接触で除去できる表面処理装置「レーザークリア®」を橋梁用途に展開
IHI検査計測は、PCBや鉛などの有害物質を含む塗膜や、耐候性鋼材などに発生した強固な錆を除去する用途として、同社の保持するファイバーレーザ発振器を用いた非接触の表面処理装置「レーザークリア®」を橋梁用途に展開すべく開発を進めている。レーザーの形式はファイバーレーザー(Qスイッチパルスレーザー)で、レーザー出力は100Wと比較的小型であるが、180mm程度の離隔から照射されたレーザーによって、瞬間的に3,000℃以上の熱が一時的に鋼材表面の細孔内に溜まり、それが断熱膨張して瞬時に蒸散する過程で塗膜やさびなどを一気に吹き飛ばす作用をもたらす。1回の出力で10~20μmの塗膜を除去できる。照射1サイクルは200n(ナノ)秒照射し、10μ秒静止するものであるため熱入力のタイムラグが大きく、他のレーザー工法と比べて熱が溜まりにくいため、「酸化被膜が形成されず、鈑桁ウエブなどの照射した裏面の塗装にも悪影響を与えない」(同社)という利点も有する。既に試作機は関門橋の添接部における錆の除去などで実績を有している。
レーザークリア®は100Wという比較的小出力であるが、前述の様な能力があることに加え、電源はAC100V、15Aの家庭用コンセントで対応可能で、総計800W程度の電力で集塵・集煙装置も含めたすべての電源を賄うことが出来る。また水冷の冷却設備も必要としない。出力装置自体もコンパクト化でき、比較的軽量(39kg)で車輪を付けて足場内を動かすことが可能だ。照射を行うヘッドの重量も2.4kgと軽いなど、桁内の足場を想定した施工性に配慮している。
装置外観/操作パネル/サイクロン式の集塵・集煙装置も開発(写真はいずれもIHI検査計測提供、以下同)
サイクロン式の集塵・集煙装置も開発
有害物質を含む塵や煙を外に出さず吸引
現在は、有害物質を含む粉塵や煙などの影響を無くすことが出来る、サイクロン式の集塵・集煙装置も開発し、より安全に使用できるよう改良を重ねている。サイクロン式というのは遠心軸流を用いた集塵・集煙機で、通常のバキュームのように全体を覆わないものでありながら、遠心軸流によって発生させた円状の渦の壁により、有害物質を含む塵や煙を外に出さず吸引できる。全体を覆ってないため、施工品質の確認も容易に行える。
有害物質を含む塵や煙を外に出さず吸引
施工後の塗膜除去状況
今後はレーザー照射を行う際の安全性の徹底(レーザーの角度・方向やサイクロン式装置が作用していない時には決して稼働させないことを安全装置として組み入れる)や照射の際の幅をさらに狭くすることによる既存塗膜・錆除去能力の向上などを図り、橋梁の塗替え分野に積極的に提案していく方針だ。(文=井手迫瑞樹)