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施工中にモノレール上空を侵すことを回避

首都高速道路 高速1号羽田線更新工事に川田工業製合成床版     『SCデッキ スタッドレス』が全面採用

公開日:2022.05.31

 首都高速道路が進めている高速1号羽田線東品川桟橋・鮫洲埋立部更新工事の橋梁区間(橋長1,300m、6径間連続鈑桁×4+3径間連続鋼桁(2径間:鈑桁、1径間:箱桁))の2期線部分において川田工業の合成床版『SCデッキ スタッドレス』が全面採用されている。東京モノレールから極めて近接しており、施工時にクレーンのブーム旋回によってモノレール上空をできるだけ侵さずに済む軽量な合成床版(底鋼板のみ)を用いたもの。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)

東京モノレールとの最小離隔は2mと極めて近接
 吊り重量を軽減することで昼間作業が可能に

 現在工事を進めている2期線は、東京モノレールとの最小離隔は2mと極めて近接している。そのため床版架設の際には如何にモノレール上空を通過するブーム旋回を避けるかが重要になる。上空を侵す場合は、モノレールの線路閉鎖を伴う作業可能時間が約2.5時間という限られた時間しか施工できないという制約がともない、工期が長くなってしまうためだ。


(左)ヤードは非常に狭い、(中)桁の設置状況、手前には1期線と2期線をつなぐ横梁が見える、(右)施工中も近接してモノレールが走る(いずれも井手迫瑞樹撮影)

 合成床版の施工は底鋼板を架設し、架設後に底鋼板上を足場兼型枠として使って配筋およびコンクリート打設が行えるというメリットを有する。とりわけ底鋼板は1.5~2t弱と1期線で施工したプレキャストPC床版(15~18t)と比べて10分の1と極めて軽い。本現場で重要なのはこの軽さである。今回の現場では桁の長さなどに応じて220t、300t、550tという3種類のオールテレーンクレーンを用いているが、重要なのはブームをどこまで伸ばせるかということだ。底鋼板の場合は軽いため、径間長が短く障害物がない17径間に関しては、底鋼板を積んだトラックをクレーンと桁の間に搬入し、クレーンで吊って、そのまま前にブーム(55~60m程度)を起伏するだけで架設できる。モノレール上空を侵さず施工できるため、昼間の作業となり、施工効率の低下を防ぐことができる。


2期線の昼間架設図。底鋼板を載せたトラックを手前に配置し、クレーンの旋回を回避した
(大林・清水・三井住友・東亜・青木あすなろ・川田・東骨・MMB・宮地JV提供、以下注釈なきは同)


旋回はせずに手前に出すだけとしている

底鋼板架設夜間施工時の状況

 モノレールとの離隔が大きかった1期線施工ではプレキャストPC床版を用いたが、今回の2期線は、モノレールとの離隔が少ないことと、プレキャストPC床版の重量が大きいためクレーンの吊上げ半径に制限があり、殆どの場合、パネルはクレーンの後ろに配置し、ブームを旋回させての施工となるため、夜間架設が基本となり作業効率が低くなってしまう。合成床版においても径間長が長い箇所や、水管橋など障害物がある約10径間は、同様に後ろからブームを旋回させての施工が必要になるが、5~6枚/日(2.5h)架設可能であり、6割強が昼間施工のため、プレキャストPC床版と比べて架設能率は高くなる、といえる。

底鋼板重量を従来の合成床版に比べ10%低減
 壁高欄の側面部にはKKフォームを採用し腐食耐久性を向上

 SCデッキ スタッドレスの特徴は、その名の通り、スタッドを省略し節付き突起リブを採用していることだ。鉄筋を設置する際にスペーサーが必要ないリブをすみ肉溶接とするため、スタッド溶接に比べて入熱量を少なくでき、底鋼板が従来品の板厚より2mm薄くなるため、底鋼板重量を10%低減できる。


敷き詰められた合成床版底鋼板(井手迫瑞樹撮影)

節付き突起リブを採用(井手迫瑞樹撮影)

 節付き突起リブの基本厚さは9mm、高さは床版厚によって異なるが、床版厚250mmの場合、180mmとしている。上下のフランジ状の突起(17mm)は、リブの曲げ剛性を高め、床版の押し抜きせん断強度を向上させるために設けられている。上下突起の隅角は滑らかな形状にしており、コンクリート打設時の空気や水分などを滞留させることなく、充填性に優れた構造としている。
 さらに、リブの腹板部に33mm間隔で設けている高さ3mmの節突起は、横リブ方向の水平せん断力に抵抗するために用いているもの。施工の際は、このリブの上に所定の鉄筋(D16~D25)を置いてコンクリートを打設するだけで合成床版の施工は完了する。疲労耐久性は従来のSCデッキの2倍まで向上している。
 施工性も優れている。すみ肉溶接のため、スタッド溶接に比べて底鋼板厚を2mm薄くして軽量化しており輸送・架設に優れている。リブ間隔は600mmと広く、スタッドを省略したため、配筋時や、コンクリート打設時における作業員の移動や作業を阻害しない。また、鉄筋は高さ調整のためのスペーサーを設置することなく、リブ上に置くだけで良いため、配筋作業の手間も軽減できる。

 また、本現場は海上という厳しい腐食環境にある。桁および底鋼板裏面は作業時と維持管理時を兼用した足場として、ステンレス製の恒久足場で腐食環境から鋼材を守っているが、壁高欄の側面部はそうした防護が及ばない。そのため壁高欄の海側の側面部を覆う形で、埋設型枠KKフォーム(繊維補強セメント板)を配置して、腐食耐久性を向上させている。


KKフォームを採用し、側面部も塩害から守っている(井手迫瑞樹撮影)

合成床版の配筋作業は7月~8月に施工 コンクリート打設は9月から
 スランプは15cmを採用 1期線と2期線の接合には機械式継手を用いる

 合成床版の配筋作業は7月~8月末にかけて行い、底鋼板上のコンクリート打設は9月から開始する予定だ。打設厚は210mm。コンクリートの打設は6径間分(250~300m)を支間中央で6回、橋脚支点上で2~3回それぞれ打設していくが、圧送距離は鉛直で15m、水平で最大50mに達する。そのためコンクリートのスランプ(現場受け入れ時)は15cmと少し軟らかめにして、流動性を確保した。9月打設時は暑中コンクリートとなるため、コンクリートの温度管理には気を付けて施工していく。最終的には1期線(PC床版)と2期線(合成床版)の間については、機械式継手「FDグリップ」を用いた間詰め構造により一体化する計画だ。


合成床版底鋼板とPC床版の境部(井手迫瑞樹撮影)

 同工事の元請は大林・清水・三井住友・東亜・青木あすなろ・川田・東骨・MMB・宮地JV。桁および床版架設の一次下請は金子建設、親和架設工業、小川建機など。

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