道路構造物ジャーナルNET

㉙JRになってからかかわった鉄道橋

次世代の技術者へ

土木学会コンクリート委員会顧問
(JR東日本コンサルタンツ株式会社)

石橋 忠良

公開日:2022.01.01

 あけましておめでとうございます。コロナに行動が制約された昨年でした。私も出張や旅行、人数の多い会食などにはほとんど参加しない年となりました。
 その代わり、会議や講演会のWEBでの参加にだいぶ慣れました。かえって講演会や教育などはWEBを用いたほうがより成果が上がるのでは、とも感じました。

 今回は、主に橋梁の写真を紹介します。特に大きな橋ではなく、国鉄分割後、JR東日本になってから私がかかわった橋梁です。
 1987(昭和62)年に国鉄がJR各社に分割されました。それまでは新幹線建設も、当時の日本鉄道建設公団と国鉄で手分けして行っていました。たとえば、東北新幹線は国鉄が、上越新幹線は鉄道建設公団が担当していました。国鉄分割後は、新幹線の建設はすべて鉄道建設公団(現在は鉄道建設・運輸施設整備支援機構)が担当しています。
 私は民営化したJR東日本に配属されたので、橋梁工事はほとんど在来線の改良工事が中心となりました。
 新線建設は、八ッ場ダムにより水没する吾妻線の付け替え工事がありましたが、あとは既設構造物のスパンを拡幅するなどの改築の工事です。そのため、軌道の高さは前後に影響させないため、それまでと同じ高さとすることが多くなります。交差する河川や、道路の条件からスパンを大きくしたり、桁下の空頭を大きくする必要が生じる場合もあるのですが、軌道の高さは変更できず、かつ桁下も制約されるので、上路桁では桁高を大きくすることは難しく、そのため主桁を軌道の外側に配置して桁高を確保する下路桁形式を選ばざるを得ません。
 下路の桁高を高くすると、壁状になり、景観上は望ましくなく、また車両からも視界が遮られ評判が悪い構造物となります。そのため、必然的に車両の窓下までの桁高とし、不足する桁高を補うためにアーチやトラス、あるいは吊り構造での組み合わせの構造が選ばれます。そのようなコンクリート構造物を主に紹介します。

1.東北本線 名取川橋梁(1996年)

 東北本線名取川橋梁(40.9m+51.5m、108.4m+108.6m、51.9m+52.9m、51.9m+52m/写真-1)は、斜材をPC版とした橋梁です。


写真-1 名取川橋梁

 この橋梁は河川改修にともない造り変えられたものです。下路トラスや、斜張橋、斜版橋などの案がありました。堤防の付近に住宅もあり、騒音を考慮して、経済性と合わせてこのコンクリートの斜版橋を選定しています。PC斜張橋も比較しましたが、斜材のコストが高く、コスト面で斜張橋より優れているこの構造としています。
 斜材がPC部材ですと鋼材の許容値が斜張橋の許容値よりも倍近く大きくとれます。また鋼材の定着具などのシステムとしてのコストも斜張橋のケーブルはPC部材の場合の倍近くなるので、斜材をPC部材としたこの構造としています。斜張橋のケーブルの斜材は、応力振幅も大きく疲労面の配慮や、斜材の防錆対策などの配慮が必要です。
 PC部材の斜版を採用していますので、コンクリート部材の応力振幅となり、鋼材の疲労の心配は生じません。
 PC版のケーブルは主塔部に定着体を設けないスルー構造となっていますので、鋼材の防錆上も上縁定着がなく、鋼材はコンクリートに覆われているため安心です。
 コスト的には下路の鋼トラスとほぼ同じ程度となっています。

2.秋田新幹線(田沢湖線) 第一玉川橋梁(1996年)

 この橋梁は、秋田新幹線(田沢湖線)の角館駅近くの橋梁です(写真-1/図-1)。これも在来線の線路高さが前後で決まっているので、河川からスパンを広げる必要があったのですが、桁高を大きくできないので箱型桁にPC斜材を併用してスパンを伸ばしています。


写真-2/図-1 第一玉川橋梁(51.5m+85m+51.5m)

3.雪を落とすために床に穴をあけた開床式の下路桁 五能線 十川橋梁(1997年)

 東北地方で雪が多く、かつ人家が近くにない場合は床から河川に直接雪が落ちるように床を格子にした構造物も造られます。点検などに人が通ることもあるので、グレーチングが敷かれています。在来線の河川改修などではレールレベルが上げられないので、下路桁形式が多く採用されます。新幹線構造物にも開床式の構造物はあります。一般部で開床式のラーメン高架橋が採用されています。写真-3、図-2は五能線十川橋梁です。グレーチングの目の大きさは、人の足が入らないで、かつ雪が落ちるように選ばれています。


写真-3/図-2 十川橋梁(3径間114m(35+44+35))

4.フィンバック橋 仙石線 鳴瀬川橋梁(1999年)

 仙石線鳴瀬川橋梁(75.8m+4×85m+71.3m/写真-4)は高欄部分を構造部材にデザイン面も考慮して取り入れた橋梁です。箱型断面の桁と、防音壁を一体にした構造となっています。


写真-4 鳴瀬川橋梁(75.8m+85m×4+71.3m)

5.左沢線 須川橋梁(2003年)(写真-5/図-3)

 2径間連続桁で斜材をPC部材としている橋梁です。桁長が左右でアンバランスなために、長いスパンには軽量コンクリートを用いています。



写真-5/図-3 左沢線須川橋梁

6.内房線 姉ヶ崎橋梁(2002年)

 内房線の姉ヶ崎橋梁(79.5m/写真-6/図-4))は、U型断面主桁に支点上から直線的に配置した圧縮部材を取付けて,その頂部から2本の吊材で主桁を支持する構造形式の橋梁です。いずれもコンクリートの斜材となっています。


写真-6/図-4 姉ヶ崎橋梁

7.大糸線 除沢川橋梁(2002年)

 本橋梁は大糸線豊科-柏矢町間の万水川を斜め急角度で横断するスパン48.5mの橋梁です(写真-7/図-5)。中間のアーチにて主桁を吊った構造となっています。


写真-7/図-5 除沢橋梁

8.羽越線 山倉川橋梁(2005年)

 羽越線山倉川橋梁(51.8m/写真-8)は、PC下路桁のウェブにコンクリートを充填した鋼管斜材に置き換えた橋梁です。降雪地帯を考慮して,下床版は開床式としています。


写真-8 山倉川橋梁

9.東北線 天間川橋梁(2007年)

 東北線(現在は「青い森鉄道」)天間川橋梁(56.4m+66.1m+56.4m/写真-9、図-6)は、橋脚とアーチを剛結し、このアーチから桁を吊った構造となっています。アーチの水平反力はPCケーブルで橋脚を結んで対処する構造となっています。



写真-9/図-6 天間川橋梁

 吊り材の構造は高密度スパイラル鉄筋の中に鉄筋比20.5%の高密度軸方向鉄筋を配置した構造です(図-7)。


図-7 吊り材の構造

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