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送出し部材長は119.0m、総重量251.8t

熊本県 (仮称)第二天草瀬戸大橋 航路上の桁を4日間で送出し

公開日:2021.11.24

下り勾配と曲線での送出し
 逸走防止対策ではおしみ装置配置と前方台車にジャッキ装置を設置

 熊本県は、天草上島と天草下島をつなぐ「(仮称)第二天草瀬戸大橋」の本渡港南川地区泊地の航路をまたぐ桁を、18日から22日の4日間で送出しにより架設した。施工は日立造船。
 架設したのはP6~P7径間(支間長65.7m)の細幅箱桁(2主桁)で、桁長55.0m、鋼重172.4t。手延べ機(50.0m)や連結構、後方桁をあわせた送出し部材長は119.0m、総重量251.8tに達した。送出しにあたっては、架設済みのP7~P9径間に主桁腹板数と同じ4本の軌条を設置した上で前方台車と後方台車を配置し、レールクランプジャッキ(500kN)とクレビスジャッキ(ストローク1,000mm)を組み合わせて設置している。送出し側のP7上と到達側のP6上には仮受けジャッキ(2,500kN)4基、スライドベース(3,000kN)4基およびトラニオンジャッキ(ストローク1,000mm)4基を設置した。


架設計画図(熊本県提供)/P6設備

 P6~P7径間は平面線形がR=550~A=210、縦断勾配が2.27%であり、「下り勾配と曲線での送出しになるので、安全と施工管理に万全を期した」(日立造船)という。逸走防止対策では、送出し桁後方におしみ装置を配置し、送出し部材をワイヤーで引っ張った状態で送出すとともに、送出し推進力はP7設備と後方台車(またはP6設備)で与えるため前方台車にはレールクランプ装置などのジャッキは不要だったが、本施工では前方台車にもレールクランプ装置を設置・使用することで、盛替え時に台車が逸走しないようにした。さらに、送出し完了後の不安定な状態での足場組立作業をなくすため、送出し中に桁下へ足場を設置して、危険度の高い作業を削減している。
 曲線対応では、軌条を平面線形にできるだけ近い形で設置するとともに、P7設備で2mごとに手延べ機・主桁の横ズレ量を算出して、管理と位置調整を行った。
 送出し桁組み立て時には、P8~P9径間の下を通る本渡港臨港道路(平成橋)の夜間通行止め期間短縮を図る工夫を行った。計画ではP8~P9径間で桁を組み立てることになっていたが、それでは臨港道路を複数日にわたり夜間通行止めにする必要があった。そこで、昼間にP7~P8径間で桁を組み立て、夜間1日で桁を39.5m後進させる方法に変更することにより、夜間通行止めを1日にしたのだ。



送出し桁組立ての施工ステップ(熊本県提供)

1回目の送出し長は約41m
 2回目は手延べ機到達直前にたわみ処理

 1回目の送出しとなった18日は、21時から臨港道路(平成橋)の通行止め規制を行い、21時30分ごろから送出しを開始した。送出し量は1時間あたり6m程度(計画)で、盛替えを行いながら送出しを行い、到達まで残り約17m地点(合計送出し長約28m)に達した段階で前方台車の反力を解放した。計画ではこの段階で1回目の架設完了となっていたが、作業が早く完了したため、到達まで残り約10m地点(合計送出し長約41m)まで送出しを継続して作業を終えた。完了時間は翌4時45分だった。


1回目送出し開始前(南西側から)

1回目送出し開始前(東南側から)/前方台車/後方台車

送出し作業中①(右写真は北東側から)

送出し作業中②/1回目の送出し完了写真

 19日夜間に実施した2回目は、1回目と同様に臨港道路(平成橋)の通行止め規制後、21時30分ごろから数mを送出してP6設備直前に到達させ、たわみ処理に移行した。手延べ機先端のたわみは、P6設備到達時に約2.6mになると予想されたため、P6側の仮桟橋上に設置した100t吊ラフタークレーンで手延べ機先端を吊り上げ、P6設備に到達させた。その際、P7設備でジャッキアップ、後方台車でジャッキダウンすることにより、たわみ量を解消し(約2.6m→約1.2m)、クレーンの吊上げ力軽減を図っている。なお、実施工でのたわみ量は約2.6mよりも小さかったが、クレーンでの吊上げ、ジャッキ調整は行われていた。P6設備には23時30分ごろに到達し、さらに送出しを行い、合計送出し長約63.5m(2回目の送出し長約22.5m)に達した段階で後方台車の反力解放を行い、翌4時30分に作業を完了した。


2回目の送出し。P6設備に向けて作業を進めていく

到達直前にたわみ処理を開始。手延べ機先端がたわんでいるのが分かる/(右写真)P6設備に到達


P6設備到達後、さらに送出しを進める

2回目の送出し完了

 3回目は21日昼間に実施し、合計送出し長約84.5m(3回目の送出し長約21m)になる地点まで施工した後に、手延べ機2ブロックを解体して作業を終了した。最終4回目の22日昼間は約14m(合計送出し長約98.5m)を送出し、最終位置の微調整を行って送出し架設完了とし、作業を終了した。翌23日には、手延べ機3ブロックの解体を行っている。桁降下は12月9日に約6.3m行う予定だ。


送出し完了(日立造船提供)

(仮称)第二天草瀬戸大橋はG1~G6の6工区で上部工全面展開
 2022年度の開通を目指す

 同橋は、地域高規格道路「熊本天草幹線道路」(延長約70km)の「本渡道路」(延長約1.3km)の一部で橋長は1,148m(幅員は橋梁部9.5m)。上部工形式は、PC5径間連続中空床版橋(153m/G1)+鋼4径間連続細幅箱桁橋(200m/G2)+鋼4径間連続細幅箱桁橋(191m/G3)+鋼3径間連続鋼床版箱桁橋(236m/G4)+PC6径間連続中空床版橋(180m/G5)+PC5径間連続中空床版橋+PC単純中空床版橋(188m/G6)で、G1~G6の6工区で上部工工事が全面展開されている。


橋梁概要図

 今回、送出し架設が行われたのはG2の渡航部で、G4の本渡瀬戸渡航部(P14~P15径間、支間長100m)は2022年3月の送出し架設を予定している。G2~G4の設計は、オリエンタルコンサルタンツ。本渡道路は2022年度の開通を目指している。
 19日の夜間架設には、熊本大学工学部 土木建築学科・大学院自然科学教育部 土木建築学専攻の構造システム研究室(松村政秀教授)の9人(教授含む)が現場見学に訪れた。熊本県天草広域本部の職員から本渡道路事業および同橋施工の説明を受けた後に、P6側で実際の施工の様子を見学した。


見学会の様子。現場では日立造船の社員も質問に答えていた

 12月には、同橋の設計とPC橋部の施工を中心とした同橋の詳細記事を公開する予定です。

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