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産官学の連携で高耐久への取組み

福島県 一ノ俣橋の架替えに県発注橋梁工事初のフライアッシュ混入コンクリートを採用

公開日:2021.12.15

 福島県は、喜多方市山都町一ノ木地内一般県道383号熱塩加納山都西会津線の一ノ戸川に架かる一ノ俣橋の架替えを進めている。同架替え工事においては、福島県発注の橋梁上部工事としては初めてとなるフライアッシュ(東北電力原町火力発電所産)を混入したコンクリート(セメントメーカーは住友大阪セメント、混和剤は山宗化学)による現場打ちRC床版の打設が行われた。フライアッシュを混入したコンクリートには、ASRや塩害などによる複合劣化を抑制する効果があることから、福島県として、道路インフラの高耐久化により、メンテナンス費用の縮減を図る手法として検討するため、試験的に取り組んだもの。打設床版厚は190mm、打設面積は約360m2。元請は矢田工業が担当した。また,福島県は,「熱塩加納山都西会津線一ノ俣橋専門技術委員会(委員長 喜多方建設事務所事業部長 湯田博文氏)」を設立し,学術経験者(日本大学の岩城一郎教授、子田康弘教授)も参画し技術検討を重ねてきた。(井手迫瑞樹)

上部工一般図/床版打設前全景

横断勾配は最大で6% 現着時もスランプ15cmを確保
 W/Bは45%以下に ASRと塩分浸透の抑制を期待

 同橋は橋長43.8mの単純非合成鈑桁橋(4主桁)で、床版支間は2.3mほどである。鋼桁は耐候性鋼材を採用しており、橋台と鋼桁の端部には塗装を施し、端部からの漏水による損傷を予防している。縦断勾配は、桁中間部はA1方向に4%ついており、横断勾配は最大6%に達している。とりわけ、A1橋台下流側が斜角となっており、合成勾配が大きくなっている。


縦断勾配は桁中間部はからA1方向に4%ついており、横断勾配は最大6%/A1橋台下流側が斜格となっており、合成勾配が大きくなっている

床版配筋図例

 打設に用いたコンクリート量は88m3。出荷時スランプは20~21cmとし、現着時でもスランプ量で15cmを超えるように配慮した。これはフライアッシュをセメント置換せず添加する形で加えており、コンクリートに粘りが多くなって、スランプが小さいと施工性に影響するためだ。


試験練り状況/松阪興産で製造した

現地到着時のコンクリート性状表/現着コンクリート1回目のスランプ確認状況

 フライアッシュは1m3あたり50kg投入した。単位水量は170kgで、W/B(水・結合剤比)は45%以下となるようにした。フライアッシュは細骨材を容積置換し、セメント代替とはしなかった。日本大学の岩城一郎教授は,「本現場に使用したフライアッシュは比較的粒度の粗いⅣ種灰を用いており、セメントに対し外割りで使用していることからワーカビリティーの向上は期待していない。期待している効果はASRと塩分浸透の抑制であり、そうした使い方であれば、Ⅳ種灰でも十分対応できる」と話している。

本施工に先立ち6×9.2mの型枠を組み試験施工
 反省点を本施工に生かす

 さて、本施工に先立ち、6m×9.2mの型枠を設置した上で、現場同様に鉄筋を組み190mm厚のコンクリートを打設する試験施工を9月23日に行った。試験施工では過密配筋部(主に桁端部)のコンクリート充填性や床版打設におけるフィニッシャビリティが確保されている生コンとなっているか、など入念な打ち合わせとその施工、終了後には結果を踏まえ本施工に向けた専門技術委員会も開催した。その結果、①天端棒の間隔を試験施工時2mから1.2mに短くする、②打込み時に打設管理者が高さ管理確認用のゲージを持ち、その都度高さを確認する、③筒先の打設高さを合わせる専任の左官工を2名配置する、などの改善を施した上で本施工に臨んだ。

試験打設した模擬床版とその後の専門技術委員会

管理者を8人、施工技能者を24人配置
 ブリージング水は殆ど見られなかった

 当日(10月31日)の打設は、午前7時40分ごろから始めた。1回目の現着スランプは17.5cm、空気量は3.6%、コンクリート温度は16℃でいずれも基準を満足し、その後も標準値である15cmを上回るスランプで推移した。88m3を1台当たり約4㎥、23台のトラックミキサを用いて運搬した。
 本工事は管理者を8人、施工技能者を24人配置した。班は打込み班、締固め班、仕上げ班、N式貫入試験班、型枠班の5班に分けて、誰がどの班に所属しているか現場で明確に分かるように、黄、オレンジ、緑、青、赤のチョッキを着用させた。

役割に合わせて違う色のチョッキを着用させた

 打設方向は、合成勾配が一番低いA1側下流から施工した。幅員方向に1.5mずつ打設していく。打設に際しては、打設高が所定の高さになるようゲージ棒の赤いマーク(高さを示す)に目を光らせると共に、高さ管理用のゲージを差し込んで、入念に天端高さを確認した。

生コン打設状況

先バイブ状況


高さ管理用のゲージを差し込んで、さらに密に打設高を確認

 特に勾配が大きい箇所に関しては、その頻度を高くしていた。打ち込み完了後は、50cm角のマスを横方向に4列×縦方向に2列配置した木製の間隔定規枠を使って、その枠内に棒バイブを8秒(挿込み1秒、振動6秒、引抜き1秒)差し込んで締固めを行った。端部や地覆部分についても木製定規を縦方向に配置したり、過密配筋となる桁端部は、ひと回り小さい棒バイブを使用することから目安となるロープを張って、締固めがきちんと行えるように工夫した。
締固め時に用いる木枠/締固め用バイブ挿入状況①


締固め用バイブ挿入状況②

締固め用バイブ挿入状況③ 桁端部は等間隔に赤いマークの付いたロープを使って施工した

「心の8秒まごころをこめて」施工した

 締固め後は表面をレイキで均し、打設したコンクリートの状況をN式貫入試験で確認した後、所定の被膜養生剤(マスターキュア)を撒きながら、トロウェルで表面をきれいに仕上げ、16時ごろには完全に打設を完了した。単位水量170kgにもかかわらず、フライアッシュを混入したこともあり、ブリージング水は殆ど見られなかった。
その後、3週間アクアマットを用いて保水養生していく。

締固め後の敷き均し/ブリージング水はほぼ出ていなかった

トロウェルによる表面仕上げ/打設後の養生状況

上空からの施工状況

産官学の連携で高耐久への取組み
 仕上げ状況は良好で、床版の高さもよく管理

 施工の際、感じたのは、監督員や作業員の人数の多さだ。20人以上が連携し,各自の役目をこなしていた。現場からは「コンクリートの性状を考慮した場合、コンクリートの打ち込みと締固めの間隔をもう少し広げることや、打ち込み後の荒仕上げをさらに丁寧に行えばもっと良くなるのではないか」とさらなる施工改善に関する意見があった。また、勾配が大きいため、締固め段階で側方流動するコンクリートをかき上げる作業が想定の通り生じた。この点,作業性に関しての改善の余地があるといえそうだ。仕上げ状況は良好で、床版の高さもよく管理できており、表面の不陸も目視上は見受けられなかった。

 福島県発注工事として施工した初のフライアッシュコンクリート床版の施工が無事に完了した。産官学の連携,官側の道路橋床版の高耐久化への強い思いが,施工に関わる全員に浸透する雰囲気が感じられた。

 一次下請は浦川工務店、宇内鉄筋工業、きねむち工業、長水組、髙橋左官工業。コンクリート製造は松坂興産。

高耐久床版取組みチーム

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