国土交通省東北地方整備局青森河川国道事務所は、十和田市街と十和田湖を奥入瀬渓流沿いの現道を介さず、青橅山を貫く形で建設されている一般国道103号奥入瀬バイパスにおいて、青ぶな山トンネルの施工を進めている。同トンネルは本坑が4,562m、避難坑は4,573mという現在東北地方整備局が施工しているトンネルとしては最長のトンネルである。また、日本有数の観光地である奥入瀬渓流は多数の滝があり、トンネル掘削による滝への影響、十和田八幡平国立公園内で環境への影響に配慮が求められる工事である。現在は、避難坑の掘進を進めている。同現場を取材した記事をまとめた。
僅か4km弱の間に高低差が140mも変化
3,946mのうち、既に3,474mの掘進が完了
トンネル線形は、奥入瀬渓流滝群への影響を考慮し、奥入瀬渓流からなるべく離れた位置を通るように計画されており、勾配も約4%の上り勾配で、高低差は掘り始めが標高402mであるが最高点では542mに達し、僅か4km弱の間に高低差140mになる。地質は十和田湖、青橅山、八甲田山系火山噴火堆積物で、大きく分けて子ノ口側からNe層(礫岩・砂岩・シルト岩)、Wt層(溶結凝灰岩)、Alt0層(シルト・礫層・軽石凝灰岩互層)、Tb層(凝灰角礫岩・火山礫凝灰岩)、Alt1層(シルト・砂・軽石・降下火山灰互層)、Ptf1層(軽石凝灰岩)、Ptf2層(軽石・軽石凝灰岩)という岩質で構成されている。
避難坑は、掘削幅員が標準部で5.10m、拡幅部は7.30mと狭く、掘削内空断面積は標準部19.1㎡、拡幅部は30.0㎡(いずれもインバート含まず)であり、延長方向に標準部80m、拡幅部30mの繰り返しで構成されている。
南側(子ノ口側)はトンネル延長3,946mが発注済みで、既に1期工事約2,285mは掘進を完了している。現在2期工事約1,661mを掘進しており、3,946mのうち、既に3,474mの掘進が完了している(8月10日現在)。
青ぶな山トンネル避難坑平面図
地質縦断図および現在の進捗状況
硬い溶結凝灰岩の一部は発破も使用
インバート工は、全体4km弱のうち約1.8km
掘削はNATM工法(機械掘削)を採用しているが、上記のように多種多様の地質構成であり、場合によっては発破掘削や長尺先受+鏡ボルト、水抜きボーリングなどの慎重な補助工法が必要になる箇所もある。掘削は基本的にロードヘッダー、ブレーカーで、岩質が軟らかい箇所はツインヘッダーを用いて施工しており、とりわけ硬い溶結凝灰岩の一部は発破も使用している。また、Tb層に到達以降湧水が出始め、場所よっては最大600リットル/min程度あり、都度水抜きボーリングを施工し対応した。現在トンネル内には約90t/hの湧水があるが、奥入瀬渓流滝群の水量減少などの調査結果は報告されていない。
坑口付近(Ne層)はブレーカーで掘削し、次いでロードヘッダーで掘進している。ロードヘッダーは断面が小さいため鉱山用の機械を使って施工したが、掘進をより効率化させるためベルコンを外したりドラムを装着するなど様々な改造を必要とした。その後Wt層(溶結凝灰岩)までロードヘッダーで掘進していったがやや硬質であったため、発破掘削に変更し掘削を進めた。次いでAlt0層はブレーカー、Tb層初期は軟弱なためツインヘッダーで掘進していったが、転石が混じるようになり以降はブレーカーで掘削、現在Ptf1層(軽石凝灰岩)はツインヘッダーで掘削を進めている。岩質が良い箇所では月進100mといった時期もあったが、現在(Ptf1層)は、軟弱地層である軽石凝灰岩であり、さらに湧水も生じているため、1週間に10m程度(月進約40m程度)の掘進速度となっている。
Ne層の施工
ずり出し状況
Wt層/Alt0層/Tb層(右2枚)
現在のPtf1層での支保構造(全断面+一次インバート)は、1mピッチに高耐力支保工を配置し、吹付コンクリート施工して固めた後ロックボルトを施工し、更に補助工法として天端に注入式フォアポーリング、切羽面に長尺鋼管鏡補強工を12.5m(3mラップ)毎に施工しながら掘進している。なお、インバート工は、全体4km弱のうち約1.8kmとなっている。
一次吹付状況/鋼製支保工の建込み/金網設置工
二次吹付状況/ロックボルト打設状況/ロードヘッダーによる掘削
シャフローダーによるずり出し/Ptf1層
トンネルで生じた排水は、濁水処理設備でろ過処理した上で十和田湖特定環境保全公共下水道に流し、トンネル掘削土は、十和田八幡平国立公園域外の処分場で処理するなど、環境には非常に留意している。
濁水処理装置
元請は熊谷組・伊藤組土建JV。一次下請はトンネル掘削:笹島建設㈱、トンネル掘削土運搬:石田産業㈱など。