浜田河川国道事務所は、山陰道の整備事業として、福光・浅利道路、三隅・益田道路、益田西道路の3道路を担当している。このうち、三隅・益田道路は2025年度の開通を目指し、橋梁19橋のうち4橋が完成、14橋が工事着手、1橋が今年度発注予定。トンネルは4本のうち3本が覆工まで完成、1本が掘削中となっている。また、地層構成が複雑で崩落しやすい箇所が至るところにあるため、改良工ではその対策が求められている。その整備事業の状況と、一般国道9号と一般国道191号の合計154.2kmを管理する同事務所の保全への取り組みについて、前田文雄所長に聞いた。
※整備区間のIC名・橋梁名・トンネル名は仮称です。
島根県の一人当たりの可住地面積は全国で46番目
一般国道9号と一般国道191号の合計154.2kmを管理
――管内の概要からお願いします
前田所長 当事務所が置かれている島根県は、東西に約200km、南北に約40kmと東西に細長いことが特徴で、山地が多いため、可住地が少なくなっています。一人当たりの土地面積は全国で5番目ですが、可住地面積は46番目です。
人口では全国に先駆けて減少が進んでいます。昭和50年代から言われていることですが、現在は70万人を切っています。東部の松江、出雲に人口が集中し、西部では3番目に当事務所がある浜田市がようやくでてきます。特に津和野町、吉賀町、川本町、美郷町は1万人未満となっています。最新の国勢調査の速報値では、前回の速報よりも10%人口が減少しているのが津和野町と美郷町で、さらに人口減少が進んでいる地域が県内にあるという状況です。
気候では、浜田市の平均気温は広島市と比較して若干低めになっています。また、全国各地で同じ状況だとは思いますが、浜田市でも近年、時間降水量50mm以上の発生回数が徐々に増えており、1990年頃と比べると発生回数が10回程度であったのが、20回程度となって、非常に災害に見舞われやすい土地柄になってきています。かろうじて、道路においては大きな被災はありませんが、そのような傾向が見られています。
――所管する道路は
前田 一般国道9号の江津市から山口県との県境までの延長138.8kmと、一般国道191号の益田市中吉田町の一般国道9号との交差点から県境までの延長15.4kmの合計154.2kmを管理しています。一般国道9号は現道に加えて、山陰道の一部として開通している区間も含まれています。
行政区分では江津市、浜田市、益田市、津和野町で、事業をしている山陰道では大田市の一部が入ります。
浜田河川国道事務所の管理区間(浜田河川国道事務所提供。注釈なき場合は以下、同)
県西部は観光ツアーの空白地帯
山陰道整備により観光客や周遊観光ツアーの増加を期待
――管内の整備事業について教えてください
前田 山陰道の整備事業として、東側から福光・浅利道路、三隅・益田道路、益田西道路の3道路を担当しています。島根県では一番西側となる益田・田万川道路も事業化をしましたが、事業主体は山陰西部国道事務所となりますので、当事務所は対象外です。
事業費では、福光・浅利道路が対前年度比1.14倍、三隅・益田道路が同1.29倍、2020年度に事業化された益田西道路が同6倍となっています。
島根県内の山陰道整備状況(2021年4月時点)
管内の山陰道整備状況(2021年3月末時点)
――整備効果は
前田 自動車専用道路が整備されていないことで、県西部は旅行会社の観光ツアーの空白地帯になっています。観光資源がないわけではなく、世界遺産である石見銀山や日本遺産もあります。整備により観光客や周遊観光ツアーの増加が期待されます。
また、平成30年7月豪雨では中国道と山陽道が同時に通行止めとなったことから、山陰側にかなりの車が迂回してきました。これにより、現道の一般国道9号では渋滞が発生しています。リダンダンシーを確保することが経済を止めないという例であると考えています。
個別の整備効果では、福光・浅利道路の浅利ICのすぐ横に工業団地がありますが、売れ行きがあまりよくありませんでした。しかし、山陰道の整備が進み、三隅・益田道路が2025年度、松江側も2023、2024年度の開通予定であることを公表すると、売れ行きが伸びて、追加造成を行っています。
山陰道の整備効果だけではないと思いますが、江津市の新卒者市内就職率が近年増加傾向にあり2018年には3割を超えました。工業団地などへの進出企業が増え、雇用も増加していると考えられます。
医療面では三隅・益田道路が整備されると、現在、浜田医療センターに60分で到達できない益田市の一部などの地域が解消されることになります。現道と比較して車両の横揺れも少なくなり、安全搬送にもつながります。
山陰道の整備効果
福光・浅利道路/三隅・益田道路の整備効果
――各事業の進捗率は
前田 2016年度に事業化された福光・浅利道路は約15%(事業費ベース、以下同)です。2012年度事業化の三隅・益田道路は51%、益田西道路は2020年度に事業化されたばかりなので0%です。
福光・浅利道路 今年度から橋梁下部工事、改良工事に本格着手
橋梁は4橋で構造物比率は6%
――各事業の詳細を教えてください。福光・浅利道路は
前田 大田市温泉津町福光から江津市松川町上河戸までの延長6.5kmの道路です。構造物比率は6%で、橋梁が4橋のみでトンネルはありません。ほとんどが土工(切土)区間となります。
今年度から橋梁下部工事、改良工事に本格着手しますので、起工式を5月16日に行います(編集部注:新型コロナウイルスの感染拡大防止のため開催延期)。
福光・浅利道路 概要図
福光・浅利道路の全体事業写真(構造物位置とその概要を含む)
――4橋の概要は
前田 道の駅「サンピコごうつ」の南側に青波ICを予定しています。その青波ICを挟んで、1号橋と2号橋があり、1号橋は橋長127mの鋼2径間連続合成少数I桁橋、2号橋は橋長136mの鋼3径間連続合成少数I桁橋を予定しており、これから設計を行います。2号橋の西側には延長40mの3号橋があり、形式はPC単純コンポ橋で進めています。あとは、浅利ランプ橋(延長52m、PC単純U形コンポ橋予定)となります。
福光・浅利道路 橋梁一覧
――河川を渡河する橋梁は
前田 ありません。
――各橋の基礎形式は
前田 すべて直接杭となります。