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日進機工と共同で「ウォータージェット“はつり”装置」を開発

NEXCO中日本 ボックス型防音養生パネルでWJ装置を覆って
約65dB以下の低騒音を実現

公開日:2021.06.23

 中日本高速道路(NEXCO中日本)は、日進機工と共同で「ウォータージェット“はつり”装置」を開発した。同装置は、ウォータージェット(WJ)装置をボックス型の防音養生パネルで覆って一体化することで施工中の民地境界線近傍の騒音を65dB以下に抑えられることが特徴だ。密閉された空間での自動施工が可能で、作業員や走行中の車両に対する安全性にも寄与する。今後、NEXCO中日本では同装置をコンクリート床版の補修に活用していく。



装置の外観。防音養生パネルを閉めて施工することで、低騒音を実現(撮影:大柴功治。以下、同)

トラバーサーによりWJ装置を移動
 始点と終点を設定するのみで自動施工が可能

 NEXCO中日本は管内全体で2020年度には21橋の床版補修を実施(特定更新事業の大規模修繕として実施した橋数)したが、そのうちの小規模断面修復のはつり工ではコンクリートブレーカーを使用していた。ブレーカーによるはつりでは騒音などにより作業時間の制約があるとともに、振動による床版の損傷が課題となっていた。そのため、「深夜帯においても床版上面の脆弱部をはつることができる」(NEXCO中日本)技術として同社が推進する「i-MOVEMENT」の取組みの一環で、本装置を日進機工と共同で開発した。
 ブレーカーでは施工箇所近傍の騒音が約95dBであるのに対して、本装置では近傍で約75dB、高欄から50m程度離れた民地境界線では65dB以下という低騒音を実現した。これにより、作業時間帯の制約がなくなり、都市部などでの深夜帯の作業も可能となった。同時に、WJの特性としてマイクロクラックによる床版損傷のリスクは発生しない。
 装置全体の大きさは、幅280cm×奥行187.5cm×高さ139cm、重量約800kg。内部にはノズル2本を備えたWJ装置とそれを動かすレール(トラバーサー)が設置されている。WJの最高使用水圧力は245MPa、最高使用水量は毎分40Lとなっている。WJ装置を移動、制御するモーターなどの電気機器は、噴射する水の影響を受ける内部ではなく、装置横側に格納した。側面にはタッチパネル式のモニターがあり、操作はそのモニターか付属するペンダント(端末)を用いて行う。


ノズルは2本。トラバーサーでWJ装置を移動、制御する

装置側面のモニターとペンダント。モニター下にあるスイッチで操作をどちらで行うか選択する

 WJによるはつりは自動化され、自動施工のための座標軸設定が簡易にできることも特徴だ。これまでの自動施工では数値の入力やセンサー類の調整が必要だったが、本装置では、はつる範囲の始点と終点上に操作端末でノズルを動かして設定するのみで完了する。記者が見た模擬施工では1分もかからずに設定が完了していた。X軸(奥行方向)の往復回数、Y軸(幅方向)の送り量、送り速度も端末で設定できる。1回のセットで可能な施工範囲は、幅150cm×奥行100cm×深さ13cmとなっている。


端末にはノズル位置が表示され、始点と終点を設定する

養生不要で設置時間は約30分
 排水も自動処理で騒音低減にも寄与

 施工現場にはユニック車で運搬する。ユニック車から降ろした後は、取り外しができる別付の台車により移動が可能で、施工対象箇所への設置も短時間で行える(移動は作業員ふたりで可能)。


取り外し可能な運搬台車により移動も簡易にできる

 通常のWJでは養生が必要で、機械のセッティングまで含めると80分程度かかるが、「養生の必要のない本装置では約30分で設置が完了できる」(日進機工)。防音シートや下部養生シートの設置も必要ない。施工は、前述のようにボックス内の密閉空間で自動で行われるため、ホースの伸び縮みを制御するなどの作業がなく、作業員の安全性を確保できる。また、供用中の車線にガラが飛散することもない。


超高圧ホースとエアホースを接続した状態/施工時には飛散防止カバーを取り付ける。これにより密閉度も高くなる

 約1年前に東名阪道本線で実施した試験施工では、面積0.4㎡、深さ3cmのはつりを15分で完了させている。健全部と脆弱部が混在するコンクリート床版をはつる際に、噴射する水が脆弱部を打ち抜くことがあるため、衝突噴射式のノズルを採用して、2つのノズルから出る水を衝突させ、エネルギーを相殺することにより、はつり深さを制御してはつり面を均一化している。
 排水処理は、ボックスの縁に沿って排水管が設置されていて、吸引車と接続したホースでボックスの4隅の吸水口から自動的に水とノロを吸い出す。「空気を絶えず吸い込み、内部を無圧に近づけることにより音圧を縮小しているため、騒音という点では二重の効果がある」(日進機工)という。また、ガラは1箇所施工するごとにパネルを開口して、バキュームして取り除く。


ボックスの縁に沿って設置された排水管と、4隅にある吸水口(施工時は路面側に)

 NEXCO中日本は、本装置の活用で施工時の安全性が向上するとともに、「とくに騒音の影響が大きい都市部での作業時間を延ばせるので1日あたりの施工量を増やすことができ、点在している補修箇所に対しても装置を移動させることで、1夜間で複数箇所の補修ができる」と、そのメリットを挙げた。今夏には、東名阪道で最初の実施工を予定している。

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