清水高架橋では板厚を70mmまで上げて2主I桁を採用
東海北陸道4車線化 旅川橋、山田川橋など長大橋架設が終盤
中日本高速道路金沢支社は、建設を進めている東海北陸自動車道の4車線化について、清水高架橋、旅川橋、山田川橋の上部工の施工を進めている。旅川橋は橋長805m、山田川橋も橋長373mでそれぞれPC・鋼の混合桁橋であり、剛結部は鋼殻セルでつなぐ構造になっている。清水高架橋は、橋長48.2mと短いながらも2主I桁となっているため、桁高を抑制するために板厚を70㎜程度まで上げて製作するなど工夫を凝らしている。その現場について取材した。(井手迫瑞樹)
旅川橋 橋長805mに達する22径間のPC・鋼混合桁
PC桁部は桁下クリアランスが低く固定支保工架設で施工
旅川橋は、富山県南砺市内の、市道上川崎上津線、県道143号線小森谷庄川線、上津清水川、一級河川小矢部川水系旅川を跨ぐ個所に建設が進む、橋長805m、幅員9.25mの22径間連続PC・鋼混合桁橋である。より詳細に説明すると、A1側からPC11径間2主版桁、PC3径間連続箱桁、PC4径間連続2主版桁、鋼4径間連続細幅箱桁橋となっている。スパン最長はPC桁部が49m、鋼桁部が67.8mとなっている。同橋は、橋長が長いため、PC桁施工はA1側とP18(鋼桁接続部側)の両側に施工班を配置する2班体制で工事を進めている。
旅川橋側面図(NEXCO中日本提供、以下注釈なきは同)
上部工施工前の旅川橋
PC桁部は現場打ちでの施工を採用しているが、田園地帯における連続高架橋で桁下高が4.0~5.6mと低いため、固定支保工架設で施工している。固定支保工は、くさび式支保工を用いた全支保工架設と、ベントと型鋼を用いた梁・支柱式支保工架設の2種類を採用している。全支保工はかかる荷重を投影面積全面で分布荷重として受け持てることが特徴で、不等沈下を防ぐ架設形式である。梁支柱式支保工は移設不可能な桁下障害物(交差道路や河川、水門等)があるときに、梁で跨いで支保する形式で、梁の強度で支保工支間に対応できる一方、支保工支間が大きくなるほど支柱にかかる支保工反力も大きくなり、より堅固な基礎が必要になる。両橋では、全支保工を基本とし、桁下障害物がある箇所に梁・支柱式支保工を採用した。
梁支柱式支保工
また、これも山田川橋と共通する課題であるが、両橋は橋脚梁部からウエブのラインがなだらかな曲線を描くような形状になっている。これは1期線同様、景観を考慮したもので、PC現場打ちの施工にあたっては、段取り鉄筋を追加するとともに、型枠の強度を高めることで施工の確実性、品質向上に努めている。
PC部施工状況
コンクリート橋の防食面では、壁高欄部にエポキシ樹脂塗装鉄筋を採用している(下写真、山田川橋も同様)。
旅川橋鋼桁部 P19-P20間の旅川渡河部は送出し架設
手延べ桁先端にはパンタグラフジャッキを取付け、2000mmのたわみを除去
鋼桁部
鋼桁はP18-A2の4径間が対象であり、P19-P20間の旅川渡河部は送出し架設を行うが、送り出し設備は後方に200t×4台のジャッキを用いるとともに、ベントとP21、P20上には1サイクル1mの桁送り装置をおき、さらに盛替え用鉛直ジャッキとして300t×4基を用意して施工した。さらに手延べ桁先端にはパンタグラフジャッキを取付け、ジャッキダウンによらず2,000mmのたわみ(上げ越し)を除去し、ジャッキダウン量を+ベントで架設していく。架設後、PC・鋼の剛結部は鋼殻セルによる接合を採用している。
現在はPC11径間連続部が9径間まで完了、PC3径間連続箱桁部が1径間目の施工中、PC4径間連続部が鋼桁との接合がある1径間を残し、3径間を完了している。また鋼桁部はP19-P20間の送り出しが完了し、P18-P19、P20-A2を架設中という状況だ。
全ての桁の架設完了後はポストスライドを行う予定。スライド量はP1支承直上で117mmに達する見込みだ。
旅川橋の施工進捗状況
山田川橋 橋長373mの10径間連続PC・鋼混合桁
PC桁部 P3-P4からの泣き別れの片押し施工
山田川橋は、富山県南砺市の市道七ツ屋荒木町線や一級河川小矢部川水系山田川を横架する位置に建設されている橋長373mの10径間連続PC・鋼混合桁橋だ。PC2主版桁部が6径間(189m)、連続鋼3主I桁部が4径間(184m) となっており、最大スパンは山田川河川内のP6-P7で約60mに達する。桁中間部にPCと鋼桁の剛結部が存在する。
山田川橋側面図
PC桁部
P3-P4-P5区間に大井川が非常に近接しており、側面に施工ヤードが確保できない。当初はA1からA2に片押し施工を考えていたが、同橋は5分割施工と施工量が少ないため、工程管理上も単径間ずつ主桁製作しても問題ないことから、P3-P4からの泣き別れの片押し施工とした。また、鋼桁範囲との接合部分の桁下に農業用水の取水水門がある(後述)ため施工には工夫を必要とした。
PC桁はP3-P4からの泣き別れの片押し施工とした
山田川橋鋼桁部 河川内架設は盛土による作業ヤードを確保
剛結部 接合部分の桁下に農業用水の取水水門
鋼桁部は、山田川河川内の架設があり(P6-P7)、左岸側から右岸側への河川上架設になる。河川内に盛土による作業ヤードを確保し、360tクローラークレーンにて施工した。盛土が河川範囲に入っているため非出水期内(2021年6月20日)までに河川内作業を終了する必要がある。
山田川橋鋼桁部架設状況
剛結部
剛結部は旅川橋同様に鋼殻セルを用いる。課題は鋼桁範囲との接合部分の桁下に農業用水の取水水門があることだ。さらに南砺市道にほど近い場所にある。そのため、構造及び施工上の工夫を必要とした。農業用水を保護するため同部分だけは土を盛らず、ベントと梁(H900)による梁支柱式支保工で施工した。
また、鋼桁の桁高は3,100mmだが、PC桁部の桁高は1,600mmであり、南砺市道付近では建築限界などの条件から1,200mmまで絞る必要がある。それをさらに鋼桁と接続するため接合部は桁高をあげる必要がある。そのためPC鋼材の配置を工夫して桁高の変化に対応している。
山田川橋の剛結部付近の施工状況
現在、PC桁部は6径間中4径間が完了、鋼桁は全桁の架設が完了している。