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線路閉鎖時間は113分、11回に分けて施工

JR東日本 横浜環状南線 線路9線を跨ぐ約100mの桁を送出し架設

公開日:2021.04.23

 東日本旅客鉄道(JR東日本)は、横浜環状南線栄IC・JCT(仮称)の釜利谷JCT側に架かる本線第2-1橋の新設工事を国土交通省から委託されて進めている。同橋はJR根岸線、横須賀線、東海道線など9線との交差部を含み、その上り線桁は送出し工法で架設されたが、1夜間113分という短い線路閉鎖時間内で作業を行わなければならなかった。11回に分けて148.5mを送出した上り線桁の施工を中心に、安全対策、BIM/CIMの活用などについて取材した。


位置図(JR東日本提供。以下、注釈なき場合は同)

線路上空の桁は本線桁+ランプ桁で拡幅されているすり鉢型
 上り線桁架設完了後に下り線桁を架設

橋梁と施工の概要
 本線第2-1橋は、橋長261m、幅員9.75m~23.06mの鋼3径間連続鋼床版箱桁橋(桁重量4,600t)。平面線形はR=2,000mで、縦断勾配4.0%~1.2%、横断勾配2.5%~4.5%となっている。支間長は、釜利谷JCT側のP6~P7が60.1m(上り線)/63.1m(下り線)、線路と交差する中央径間P7~P8が94.5m/89.7m、P8~P9が104.6m/106.4mだ。P6~P8は本線に加えてランプがあり、P8に向かって拡幅しているすり鉢型になっている。


橋梁概要図

 本工事は中央径間の桁製作と架設工事、側径間の架設工事で、工期は2016年3月から2024年1月までとなる。
 架設は、中央径間、側径間の順番で進められている。まず、P7横の線路際にタワークレーン2基を設置した後、中央径間の上り線桁架設のためのベントを設置して、その上部に軌条桁を架設。軌条桁上で、本設桁と手延べ桁を組立て、線路上空の送出しを行う。上り線桁の所定位置への据え付け完了後、下り線桁の架設を行って中央径間の架設は完了となる。
 側径間は、P6~P7間がクレーンベント工法、P8~P9間がクレーンベント工法とトラベラークレーン工法を用いて架設を行っていく。


架設全体ステップ図

営業線への影響範囲内の仮設備は設計水平震度kh=0.8を確保
 橋脚上とベント上には耐震ブラケットを設置

現場の特徴と安全対策
 中央径間は、根岸線(2線)、根岸貨物線(1線)、東海道線、横須賀線、東海道貨物線(各2線)の9線、幅約70mを跨いでおり、架設にあたっては安全対策の徹底が求められた。また、線路閉鎖時間内に作業を終えなければ、当該路線だけでなくあらゆるネットワーク路線に影響を与えることになることから、不慮の事象に備えた施工をしなければならない。このような難易度の高い工事にあたり、仮設備の構築から架設完了までの各工程で、あらゆるリスクを洗い出し、ひとつずつ対策を立てて実行していった。
 仮設備の耐震対策では、「営業線への影響の有無で設計を変えた」(JR東日本)という。営業線への影響範囲の軌条桁、耐震設備、降下設備はレベル2地震動の1/2(設計水平震度kh=0.8)を確保する設計とし、営業線への影響範囲のベントは設計水平震度=0.25、影響範囲外のベントは同0.1での設計とした。
 架設時の耐震設備として上り線桁の施工では、P7橋脚上と受け手側のB14ベント上およびP8橋脚上に耐震ブラケットを設置して、地震で桁が横ズレしてもブラケットが桁を支えることで落下を防ぐ対策を行っている。



上・下左写真:P7側の耐震ブラケット/下中央・右写真:B14側の耐震ブラケット(下写真3枚:大柴功治撮影)

自走台車の予備動力として水平ジャッキを設置

 上り線桁の送出しは軌条上の自走台車を主動力として行ったが、「8軌条のうち1軌条の自走台車が故障しても7軌条で送出しを継続できる」(JR東日本)性能を確保したことに加えて、それも不可能になった場合に備えて、予備動力として各軌条に水平ジャッキ(500kN)を設置するという二重のリスク対策を施した。


各軌条に設置した水平ジャッキ

 ただ、自走台車が毎分2.5mの送出しが可能であるのに対して、水平ジャッキでは毎分1.1mとなるので、B14ベントに手延べ桁先端部を到達させなければならなかった1回目の送出しでは、トラブルが発生した場合の押し引きの分岐点(送出し距離52.5m地点)をあらかじめ決めて施工に臨んだ。
 さらに逸走防止対策として、自走台車と従走台車の後方にレールクランプを設置したほか、従走台車後方には逸走防止装置(500kNレールクランプ)、軌条設備の前後に台車ストッパーを設置している。


自走台車後方のレールクランプ(左)と従走台車後方の逸走防止装置(右)

施工ヤードに制約 タワークレーンも用いる
 送出し後に横取りが必要

 現場のもうひとつの特徴は、施工ヤードに制約があったことだ。送出し設備を構築した釜利谷JCT側のヤードは、大船駅側にある工場と戸塚駅側にある会社施設や民家に挟まれていて、上り線桁の送出しでは架設所定位置にまっすぐ送出すことができずに、送出し後に横取りをしなければならないため、作業工程が複雑となった。
 ヤード内の線路に近接している箇所は幅が狭いうえに約1mの段差があるため、軌条桁の架設や桁組立てなどに用いる350t吊クローラークレーンでの作業ができなかった。そこで、650tmタワークレーンを線路際に2基(1基は東京スカイツリーの建設にも使用したもの)設置して、ベント構築や軌条桁架設、降下設備設置などの作業を行った。


上空からの全体写真。線路、工場、会社施設が近接していることがわかる

 送出しでは側径間を先に架設して、その上に送出し設備を構築するという方法が取られることもある。しかし、ヤードが狭いために先に側径間を架設してしまうとクレーンでの作業が不可能になり、ベント上に軌条桁を架設する方法が採用された。

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