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20km弱の新北陸トンネル、北陸自動車道跨ぐ橋梁も

2021年新春インタビュー④ JRTT大阪支社工事第四部 北陸新幹線のうち約40kmを所管

独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
大阪支社 工事第四部長

伊藤 常正

公開日:2021.01.01

 独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構大阪支社工事第四部は、北陸新幹線の建設のうち、越前鉄道建設所と敦賀鉄道建設所をあわせて約40kmの事業延長を所管している。中でもトンネルは突出して多く、区間延長の3分の2を超える。橋梁・高架も12.4kmと大きな割合を占め、つい先だっては、北陸新幹線を跨ぐ武生架道橋の合成桁を架設し、大蔵余座高架橋と敦賀架道橋は橋脚の施工が終わり、張出架設を進めている。伊藤常正工事第四部長に詳細を聞いた。(井手迫瑞樹)

工事は約9割完成
 トンネルについてはすべて掘削が完了

 ――管内の延長および構造物比率、進捗状況は
 伊藤部長 越前鉄道建設所と敦賀鉄道建設所をあわせて約40kmの事業延長となります。越前鉄道建設所の事業延長は20.7kmで、路盤3.9%(0.8km)、橋梁16.4%(3.4km)、高架橋31.9%(6.6km)、トンネル47.8%(9.9km)です。敦賀鉄道建設所の事業延長は20.6kmで、トンネル86.9%(17.9km)、橋梁4.3%(0.9km)、高架橋7.3%(1.5km)、路盤1.5%(0.3km)です。北陸新幹線の全体比率では、トンネル33%、橋梁14%、高架橋52%、路盤1%となります。
 進捗状況は、福井県内の用地取得率はほぼ100%で、橋梁、トンネル、土工の土木工事が92%となっています。トンネルについてはすべて掘削が完了しており、覆工も約99%は完成しています。明かり部は8割強が完成しています(2020年12月1日現在)

第四工事部担当主要トンネル(クリックして拡大してください)
(独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構提供、以下注釈なきは同)


第四工事部担当主要橋梁(クリックして拡大してください)

武生架道橋 3夜間に分けて架設
 新北陸トンネルは昨年7月に貫通

 ――特徴ある構造物は
 伊藤 越前鉄道建設所管内では、北陸自動車道を跨ぐ武生架道橋があります。大規模で重量のある合成桁を送り出しで架設しました。協議も時間がかかりましたが、3夜間に分けて施工しました。工程的にも失敗ができない状況のなかで、施工業者と協力しながら予定通り施工できました。

 敦賀鉄道建設所管内では、長野以降の北陸新幹線では2番目の延長となる新北陸トンネル(19.8km)があり、昨年7月に貫通しました。平成26年に掘削を開始し、6工区に分けて約6年かかりました。断層破砕帯があるなかでの工事、かつ大量の湧水が発生しましたが、大きな事故もなく掘削を終えることができました。



新北陸トンネルの施工状況

大蔵余座高架橋、敦賀架道橋は張出架設が進捗
 SPER工法で工期を最大2か月強短縮

 ――橋梁について。敦賀では敦賀バイパス架道橋などがありましたが、管内では
 伊藤 大蔵余座高架橋と敦賀架道橋は橋脚の施工が終わり、張出架設を行っています。両橋あわせて5径間を同時にワーゲンで施工していくものです。現在、1橋脚からの張出が始まっていますが、昨年11月ごろまでにワーゲンがすべて完成して5径間同時に架設しています。

大蔵余座高架橋の張出し施工状況



敦賀架道橋の張出し施工状況
 ――大蔵余座高架橋では橋脚構築にSPER工法を採用していると資料にありますが、どのような工法か、また採用理由を教えてください
 伊藤 工程的に厳しいところがあり、橋脚の工程短縮ということで採用しました。いわゆる埋設型枠工法で型枠の設置撤去および鉄筋組立は不必要で、ハーフプレキャスト材を使用して、そこにコンクリートを流し込むことで完成します。
 ――中空橋脚ということですか
 伊藤 違います。型枠を撤去せずに橋脚の一部の部材となります。内部は充填構造です。
 ――埋設型枠なので埋め殺し型枠となるということですね。橋脚高は
 伊藤 最大で28mとなります。
 ――埋設型枠を使用するときは30~40mが境となっていて、20~30m程度ではオールステージングで打つことが一般的ですが、本橋では30、40mの橋脚高ではないが、工期短縮のために採用したということですね
 伊藤 そうです。
 ――工期短縮効果は
 伊藤 1.5~2.0カ月短縮できました。
 ――実際の施工期間は<
 伊藤 P4橋脚(28.7m)では通常5.9カ月のところ3.8カ月で施工していますので、2.1カ月短縮したことになります。P7橋脚(24.9m)は3.1カ月で施工し、通常の4.4カ月よりも1.3カ月短縮しています。

場所打ち杭にスーパートップ工法を採用
 深度50m以上の掘削、硬質地盤の切削が目的

 ――場所打ち杭にスーパートップ工法を採用したとありますが、その工法の概要と採用理由は
 伊藤 最大63mと深さのある場所打ち杭となっています。施工では、全周回転オールケーシング工法を採用しましたが、途中にチャート層などの硬い層があり、そこで時間がかかることを避けるために、岩盤に対応できる特殊ケーシングを採用しました。さらに、ゆるい土砂層で1回当りの土砂を掴む量を増やす特殊ハンマーグラブを採用しました。
 スーパートップ工法は、従来の全周回転オールケーシング工法では施工不可とされている深度50m以上の掘削、硬質地盤の切削を目的に採用しました。
 ――それらの採用による工程短縮効果は
 伊藤 同工法は、場所打ち杭工法のひとつで、全回転チュービング装置により、ケーシングを全回転させながら、押込み圧入する工法です。 スーパートップ工法に使用される全回転チュービング装置は、クラス最大級の高トルクとクサビ型チャック機構により、高い切削能力をもち、転石のある地盤や旧構造物の鉄筋コンクリート基礎がある地盤など、従来は難しいとされていた施工条件下においても安全かつ高能率で、大深度、大口径の施工が可能な工法です。工程短縮に関しては、特殊ケーシングの採用(硬質地盤対応のファーストケーシング)により、杭1本当りの実働日数を11日から8日に短縮しました(大蔵余座P4,P5橋脚)。また、特殊ハンマーグラブの採用によって、ゆるい土砂層で1回当りの土砂を掴む量を増やすことにより、杭1本当り実働13日間を10日に短縮(大蔵余座P7,P8橋脚)しました。通常の場所打ち杭と比較すれば、20~30%の工程短縮効果です。

特殊ハンマーグラブでの掘削、鉄筋かごの施工

 ――スーパートップ工法は大蔵余座高架橋のすべての基礎杭で採用しているのですか
 伊藤 そうです。大蔵余座P4から敦賀バイパスのP1まで非常に長い杭を採用しているためです。
 ――基礎部の層は
 伊藤 砂礫層となります。
 ――軟弱地盤が続いていたということですね
 伊藤 そうです。ただ、途中に硬い地層があり、そこが支持層にならないので、杭長が長くなります。

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