基層を防水層化 耐久性や水密性、施工性を向上
土研など4者 改質グース、特殊樹脂充填Asを実用化
国立研究開発法人土木研究所と大成ロテック、東亜道路工業、日本道路は、防水性を高めたコンクリートおよび鋼床版用橋面舗装として、改質グースアスファルト基層および特殊樹脂充填アスファルト混合物基層を実用化した。改質グースアスファルトは、基層を防水層化するため、防水工を別途施工するという工程を無くすことができる。透水係数0cm/secと水を通さない。動的安定度(DS)は、改質グースで1,200回/mm程度、特殊樹脂充填Asでは3,000回/mmと、通常の天然グースアスファルト(トリニダードレイクアスファルト(TLA)、同300回/mm)と比べ、高い耐流動性があることが特徴だ。また、従来の床版防水層のようにμm単位の薄膜ではなく、基層(35mm程度)を防水層化しているため耐久性が高く、床版表面の水分量に伴うブリスタリングに鈍感という利点も有している。(井手迫瑞樹)
各種実験を行った土木研究所内の舗装走行実験場
改質グースアスファルト
改質グースアスファルトは、TLAに替わりポリマー改質材を用いている。ポリマー改質材は国内生産であることから、安定的に入手可能だ。製造温度はTLA入混合物が240℃であるのに比べて、材質および製造方法を工夫することで190℃程度に低くできるため、混合物のクッキング(製造)時間を短縮でき、施工時においても蒸発水によるブリスタリングが起きにくく、さらには基層の養生時間を30分~1時間とTLAの半分以下に短縮できると想定している。一方、舗設温度が急激に下がる冬季を想定して、混合物温度を現在の設定温度である190℃よりも高くすることで施工温度領域を拡げることも試みている。
施工はまず切削機とバックホウを用いて舗装を撤去する。「床版の出来形管理は通常±2cm程度で最大4cmの凹凸があることや、切削時にやむを得ず床版を傷つけてしまいマイクロクラックが生じて付着強度が落ちる可能性がある」(日本道路)ことから、素地調整としてショットブラスト(投射密度は50~100㎏/㎡)を用いる。端部は瀝青系のシール式成型目地材を断面に貼り付けて熱溶着させて防水する。その後、プライマーを塗布し、専用のグースクッカと、グースフィニッシャを用いて基層に改質グースアスファルトを舗設し、タックコート(速乾性の付着防止型の改質乳剤)を散布し、表層を施工して完了となる。
バックホウによる舗装切削
ショットブラストの施工は必須条件だ
端部は瀝青系のシール式成型目地材を断面に貼り付けて熱溶着させて防水
クッカ車
アスファルトフィニッシャによる施工
施工時、蒸発水によるブリスタリングが発生した場合は、針状の器具により水蒸気を抜き、転圧する。一度安定化すれば、通常の床版防水層(厚さはμm単位)と異なり、防水層が35mm程度と厚くさらに表層(40~50mm)の厚さと重さが加わるため、供用下において新規のブリスタリングによるポットホールなどの劣化が生じることは「ほとんどないと想定される」(同社)としている。
既に、福岡北九州高速道路公社の福岡高速2号線の高架橋(径間長55m、幅員9.1m)、約500㎡で車線規制下での夜間施工(2夜間)を行い、無事時間内に施工を完了することができた。同現場は最大4%の縦断勾配を有したが、舗設温度の調節や特殊添加剤を入れることなどで、施工時のワーカビリティ確保と勾配に応じたレベリングを実現することができた。来年度以降も、同高速で本仕様の工事が発注される予定だ。
現在、大成ロテックはグースフィニッシャを2台、クッカ(灯油式)を5台、同(電気式)を4台、日本道路はグースフィニッシャを4台、クッカ(灯油式)を13台、同(電気式)を2台有している。両社とも工法の普及を企図して、機材を増やしていく方針だ。
特殊樹脂充填アスファルト混合物
特殊樹脂充填アスファルト混合物(以降、特殊As)は、熱可塑性を有する植物性特殊樹脂が、基層舗設時の熱で溶融し、基層のアスファルト混合物の空隙に浸透することで、水密性を確保し、耐流動性も向上させるものだ。一般的なアスファルト混合物の施工機械で施工可能なため、専用機械を必要としない利点もある。また、8割以上がバイオマス成分であり、環境負荷が少ないことも特徴だ。
ペレット状の特殊樹脂を現場において溶融罐で融かして刷毛やレーキで床版上に塗布していくものだが、融点(軟化点)が80℃と低いため、特殊な罐を必要としない。塗布した樹脂は基層舗設時の熱によって染み出し、基層アスファルト内の空隙に浸入し充填、舗設温度の低下によって固化する。共同研究の施工試験では塗布量1㎏/㎡の場合、基層下部に10mm、同2㎏/㎡の場合15mm、同3㎏/㎡の場合21mmの厚さで隙間なく充填されることが確認された。
ペレット状の特殊樹脂を溶融し、レーキで塗布していく
施工は、改質グース同様、舗装を切削した後、コンクリート床版をショットブラストで研掃し、その後、グースにない工程として「コンクリート床版に含まれる残留水分によるブリスタリングを抑えるため」(東亜道路工業)、接着力を高めた1㎡当たり0.25㎏のエポキシ系プライマーを塗布し、さらに5号珪砂を散布し、その上から溶融して液体状なった特殊樹脂を1~3㎏/㎡塗布し、基層(SMAないし密粒度アスファルトを想定)を舗設し、その舗設熱によって樹脂を充填させ、緻密な防水層を形成し、表層を舗設する。端部は改質グースと同様、成形目地材によって保護する。
フィニッシャや敷き均しは一般的なアスファルト混合物と同様
特殊Asを鋼床版に使う場合は、NEXCO総研と共同開発した高剛性舗装を用いることを念頭に置いている。高剛性舗装は、交通規制を低減でき、かつ一定程度(約30年)の高耐久性が期待できる舗装。熱可塑性樹脂を添加したアスファルト舗装で、一般のアスファルトと同様の施工が可能だ。鋼床版の耐久性は、高剛性舗装を基層部分に施工した場合、累積損傷度をグースアスファルト舗設時の約1/3に抑えることができる。鋼床版補強の際の事実上の標準工法となっているSFRCほどではないが、施工の際の交通負荷を軽減しつつ、ほぼ現在の基層打替サイクルと同様の期間、鋼床版の耐久性を確保することが期待できる。
高剛性舗装
コスト及び耐久性
単位面積当たりコストは、両工法とも材工価格ではTLAに比較して1.5倍と割高であるが、NEXCOが規定しているグレードⅡとは同程度で、さらに施工時間を短縮できる。水密性、DSに優れているため、「少なくともTLAより優れた耐久性を有しており、舗装補修頻度の減少にも繋がる」(土木研究所)。
両工法とも来年度に予定されている道路橋床版防水便覧において、床版防水工法の1つとして記載される見込みだ。(2021年2月9日掲載)