道路構造物ジャーナルNET

阪神高速技術と宮地エンジニアリングが共同開発

軽く施工が容易で耐荷性が高い段差乗り越え装置『ダンパスデッキ』

公開日:2020.12.21

 阪神高速技術と宮地エンジニアリングは、地震などで橋梁に生じた段差解消の際、土嚢などを一切使用せず、軽量な素材と簡易な構造により少人数でも短時間に施工できる伸縮継手段差のりこえ装置『ダンパスデッキ』を開発し、更なる改良を進めている。対象となる通過車両は軽自動車から4t程度の中型トラックまで。橋梁のゴム支承への交換が進んでいる状況を鑑みて200mmから最大300mmの段差に対応できるように設計している。重量は1部材(幅1,625mm×長さ2,000mm)で約20㎏と軽い、そのため緊急時においても人力で素早く設置することが可能だ。耐荷性も高く、土嚢を必要としないため、通過時の手直しがほとんど不要であり、連続使用にも耐えうる。伸縮装置部に目開きがあっても設置が可能という特徴を有している。

 大規模地震が発生した場合、緊急車両が通れるかどうかは、被災地域の生活を支えるうえで死活的に重要であるが、熊本地震では、落橋のみならず、わずかな段差により車両が通れなくなり、一刻を争う救急や市民生活の支援・安定に支障をきたしたことは記憶に新しい。のみならずごく最近では上関大橋で、PC橋において段差が生じ、市民生活に大きな影響を与えた。また、地盤が軟弱な個所では、盛土部と橋梁の境目にある橋台部の伸縮継手部で段差が発生する事例も起きている。『ダンパスデッキ』はそうした箇所に素早く設置でき、かつ比較的大きい段差にも対応でき、耐荷性もある段差のりこえ装置として開発されたものだ。

阪神淡路大震災での阪神高速道路の損傷事例

熊本地震では多くの橋で段差が生じて通れなくなった

こうした箇所は従来、盛土や擦り付け舗装で対応していた

素早く設置でき、かつ比較的大きい段差にも対応できる『ダンパスデッキ』
 軽量であるのは、鋼製のフレームに渡し板としてGFRP板を載せた構造としているためだ。部材の大きさは道路パトロール車で運べる寸法を念頭に置き、部材長は最大2,000mmとした。このため平時もコンパクトに保管できる。
 『ダンパスデッキ』は、渡し材、段差材、支持材とガイドアングルで構成されている(右図)。段差材と支持材の接続部は段差材側に逆L字の挿し込み孔を設けている。支持材のボルト部分に合わせて孔を明けているため、垂直に差し込んだあと横にずらすだけでつなぐことができ、それでいて車両通行によるズレを防ぐことが可能だ。
 0~200mmの段差であれば1段、200mmを超える段差であれば2段組みにすることで対応する。段差だけでなく遊間の拡大にも対応できる。ガイドアングルの孔に生じた隙間に対応して突っかえ棒状のストッパーを挿し込んで固定することできるためだ。


ガイドアングルとストッパー(写真中央部)
 施工手順は、車両から部材を降ろした後、渡し板を支える支持材とガイドアングルをピン材で固定して枠組みを作る。次いで枠組みの中に渡し板をはめ込み、支持材に段差材を差し込む。最後にストッパーでズレを防止して完成となる。工具が不要で軽量で手軽に施工できるため、大人二人で6分程度あれば組み立てることができる。

 耐荷性についてはさらなる強化を目指しており、10tの軸重にも耐えられる構造かつ、400mmの段差にも対応できるよう改良を進めている。他社(機関)への外部販売も視野に入れている。(2020年12月21日掲載)

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