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追越車線規制期間も撤去 壁高欄一体で撤去および架設

NEXCO中日本 北陸道常願寺川橋 橋長400m超の床版を取替え

公開日:2020.09.10

 中日本高速道路金沢支社は、北陸自動車道の富山IC~立山IC間の常願寺川渡河部に架かる常願寺川橋(下り線)の更新工事を進めている。同橋は1980年12月に供用された。今回対象となるA1~P9間の上部工形式は鋼4+2+3径間連続非合成鈑桁橋で、各連続部の長さは127.25+116.2+173.75m、総幅員は11.15m(有効幅員10.26m)だ。支間長はA1~P4までは30mピッチで、P4~P9の河川内は50mピッチとなっている。1日交通量は22,500台で大型車混入率は27.9%。床版上面の土砂化や下面からのエフロレッセンスの析出、コンクリートの浮きなど塩害を起因とする損傷が生じており、抜本的な対策として、220mm厚の既設床版を床版厚240mmのプレキャスト(PCa)PC床版に取替えるものだ。床版取替枚数が176枚と多いことから、対面通行規制(上り線への振り替えによる下り線の全面通行止め)の前の追い越し車線規制時(中央分離帯の改良工事)から、アスファルト切削やカッター切断などの作業を行うなど、施工上の工夫を凝らしている同現場を取材した。(井手迫瑞樹)

 今回取替えるのは、常願寺川橋(下り線の)A1~P9間(橋長417.6m)の床版4956.4㎡である。5月22日から7月28日までの68日間、下り線を通行止めにして上り線を用いた対面通行規制にして施工した。完全な対面通行区間は2.65㎞、渡り線も含めると規制区間の総延長は3.65㎞となる。




常願寺川橋A1~P9(平面図)(NEXCO中日本提供、以下注釈なきは同)

常願寺川橋A1~P9(断面図)

 同橋は、他の北陸道の大規模リニューアル対象橋梁と同様に凍結防止剤の影響と見られる損傷が散見されている。床版上面では、凍結防止剤による塩害が生じており、表面の塩化物イオン量は4kg/m3の値を示した。その影響によりかぶりコンクリートの浮き、剥離により、舗装路面にポットホールの発生が生じている。床版下面では、床版上面から塩化物イオンを含んだ水が床版に生じたひび割れより浸透し、床版下面にエフロレッセンスの析出やコンクリートの浮きが生じている状況にある。床版以外で特に損傷が顕著なのが、ジョイント部や桁端部と床版張出し部の漏水に起因する劣化だ。特に張出し部は凍結防止剤の巻き上げによって山側海側のフランジ上面に塩分が溜まって、劣化を助長しているような状態にある。



床版下面および舗装の損傷状況

PCaPC床版の製作
 同橋のPCaPC床版は全部で410枚撤去し、176枚配置した。新設パネルの内訳はプレキャストPC床版が176枚、延長床版が4枚という構成だ。延長床版はA1側に配置した。床版厚は標準版が240mm、突起版が240mm+突起部最大280mm、斜角調整版や端部版が最大290mmとなっている。



床版割付配置図

 床版は元請であるオリエンタル白石の関東工場(真岡市)で製作し壁高欄一体化とした。床版の長期耐久性をより向上させるため3Mシートを表裏両面に張って封緘養生した。打設した翌朝迄は蒸気養生し、その後は場外ヤードに出して3Mシートを張ってシートをかけて養生するもの。製作した床版は、毎日4~8パネルを現場に陸送した。陸送には24t積トレーラーを用いた。




床版および高欄製作状況写真(配筋、打設、封緘養生、蒸気養生、シート養生)

陸送には24t積トレーラーを用いた

 床版及び壁高欄の鉄筋は、塩害対策のためエポキシ樹脂塗装鉄筋を使用している。エポキシ樹脂鉄筋の供給は安治川鉄工。

床版の撤去・架設
 撤去・架設は2台の220tオールテーレンクレーンを用いてP5-P6中間部から両側に施工していった。


施工方法図

2台の220tオールテーレンクレーンを用いてP5-P6中間部から両側に施工(井手迫瑞樹撮影)

 176枚の床版パネルを取り替えるには「対面通行規制切り替えが完了する5月22日からやっていたのではとても間に合わない」(元請のオリエンタル白石)。そのため、追い越し車線規制が始まった5月12日から路面切削、コア削孔や床版のカッター切断など半断面分を先行して作業を始めた。



追い越し車線規制中の路面切削、コア削孔、床版カッター切断状況

 2日間かけて追越車線側の全延長の舗装を切削した。切削と同時に仮設防護柵の設置、転落防止網の撤去も行った。舗装切削は初日に入口側半断面、2日目に出口側半断面の施工を行っているが、その他の撤去・仮設工は舗装切削と干渉しないように施工している。
 その後は、すぐに測量を行い、カッターラインを出して削孔やカッター切断を行った。対面通行に切り替わった後はすぐに残った半分について路面切削を行い、カッター、コア、ワイヤーソーによる切断を開始した。7月28日には、お盆を含む繁忙期を迎えるため一旦、対面通行規制を解除する必要がある。そのため床版防水工は行わず仮舗装を施工し、工事を止めて供用した。この後、8月下旬から11月上旬にかけて仮舗装切削、A1延長床版工の施工、床版防水工、舗装工や路面標示などを行って完成となる。前半戦は68日の規制日数内に176枚のパネルを全部設置しなければいけない非常にタイトなスケジュールとなる。

 撤去床版は地覆付きが1枚当たり(橋軸)2m×(橋軸直角)5.825mで8.5t、壁高欄付きが2m×6.075mで9t。新設床版は2.35m×11.150mで約20t。P5-P6中間部を境として両側に220tオールテーレンクレーンを1台ずつ配置し、1日に10~20枚既設床版を撤去して、4~8枚新設床版を設置していく。
 施工は基本的に午後に剥離撤去、ケレン、ジンク塗布まで行い架設の準備を整え、午前中に架設をするという工程だ。遠方から現場へ新設の床版パネルを毎日運ぶことを考えれば、午前中に撤去・ケレン作業し、午後に架設という工程は取りにくいためだ。朝から施工すると決めておけば、無用な待機時間をなくせ、前日夕方に工場で床版パネルを積んで夜間にトレーラーを走らせ、朝に現場に運び込み、日中に工場に積みに帰るということがルーチンワークできる。実際には、朝は、早朝に現場近くの有磯海SA内で待機し、現場から連絡を入れて、朝八時半から順次場内に入って、11時ぐらいには積み荷を架設し終えるという状況だった
 さて、撤去は床版と壁高欄を一体化した形で、床版部はカッター、壁高欄部はワイヤーソーにより切断する。通常は地覆・壁高欄と床版は別々に撤去するケースが多い。しかし「地覆・壁高欄だけ切るのであれば、8mほど一括で切断撤去できるが、床版と一体化して地覆・壁高欄も撤去するため(別々に撤去する場合と比べて)3倍ぐらいの切断量が必要になってくる。壁高欄切断のためのワイヤーソーは時間がかかるが、PC床版架設開始箇所であるP5-P6径間を先行して行い、その後床版撤去・架設作業を行いながらクレーン作業に影響しないよう進めていく事で工程短縮できると判断した」(オリエンタル白石)。


壁高欄部のワイヤーソーによる切断/床版のカッターによる切断

地覆付き既設床版の撤去(井手迫瑞樹撮影)

壁高欄付き既設床版の撤去(井手迫瑞樹撮影)

トレーラーで搬出

 床版の剥離は50tの能力を有するセンターホールジャッキを4台使用して撤去した。面白いのはジャッキ反力の取り方で、両側の床版の上に置いて真ん中の床版を剥離させる形で順次施工している。流れ的に床版の剥離および撤去を繰り返すのではなく、剥離を先行していくためこうしたことができる。「1日4台か5台、産業廃棄物収集運搬の許可を取ったトレーラーを入れているが、立山ICで降りて、常願寺川橋のすぐ上流にある、エコモという処分場で降ろし、破砕している。トレーラーに合わせて仕事をすると手を止めなければいけない時間も生じるため、剥離を先行し、トレーラーが到着したら剥離を止めて2ピース積んで、出す。そしてトレーラーがくるまで剥離を続けるということを繰り返した」(同社)。


床版剥離作業(井手迫瑞樹撮影)

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