塗膜剥離剤では8回塗布必要
新潟県佐渡市「おけさ橋」塗替え 1500μm厚ある既設塗膜をIH塗膜剥離機『メクレル』で1回で膨潤・掻き落とし
新潟県佐渡地域振興局港湾課は、所管するおけさ橋の塗替えに着手した。同橋は1974年に供用された橋長25.8mの鋼製ペデストリアンデッキで、県道319号赤玉両津港線を跨いで、両津港のターミナルと駐車場を結ぶ箇所に架けられている。今回対象となる部位は、階段と支柱で面積は246㎡。数度の塗替えにより、膜厚は最大で1,500μmに達しており、塗膜剥離剤では「8回塗布しなければ取れなかった」ため、今回IH塗膜剥離機『メクレル』を使って除去することにした。その現場を取材した。(井手迫瑞樹)
写真右側の覆われている部分(支柱および階段)を今回塗り替えている(井手迫瑞樹撮影、以下同)
同橋の塗装は、層厚が平均で1,000μmと厚く、層構成もMIOなどを有していた。海の近くであり塗膜劣化や早期の発錆をしやすい環境にあることから塗り重ねを繰り返したためであるが、その反面塗膜剥離剤は浸透しにくい状況であったといえる。また、塗膜には「コンサルタントが診断した時には微量のPCBが検出され、さらに1.2mg/kgの鉛が検出された」ことから粉塵が出る塗膜除去方法は行わず、塗膜剥離剤を試験的に用いたが、多くの回数を必要とする試験結果となったため、平滑部や隅角部に限り、IHによる塗膜剥離を選択した(添接部は塗膜剥離剤を使用)。
メクレルによる電磁誘導加熱
一度の過熱で厚い既設塗膜を一気に掻き落とせる
掻き落とした後は、残った鉛丹をディスクサンダーなどで除去し、2種ケレンして塗り替える
その結果、1回の電磁誘導加熱で、下地の鉛丹の一部を除くほとんどの塗膜を膨潤させ、掻き落とすことができた。また「塗膜剥離剤のように現場を汚さず施工できるため、環境の面でも負担が少なかった」(元請の坂井塗装工業)その後はグラインダーやディスクサンダーで鉛丹を除去し、素地調整(2種ケレン)した上でエポキシ及びフッ素系樹脂塗装による重防食塗装を施し塗り替えていく。
今回用いたIH塗膜剥離機『メクレル』の仕様は右表のとおり。特徴は「従来のIHと比べて小型化しており、加えて発電機から1,000m以上離れても施工できる点」(総販売元のアーキHILO)だ、インバータ電源は12㎏、コイルヘッドは3㎏と軽く。施工もしやすい。施工は今回の現場は膜厚があるため1日7~8㎡ほどの塗膜除去効率であるが、「500~1,000μm程度の膜厚であれば1日15㎡程度の作業効率を有する」(同)としている。既に鉄道会社の高架橋の既設塗膜除去など数橋で実績を有している。
インバーター電源(右下)は12㎏/ヘッド(作業者が把持)は3㎏と比較的軽い
課題は、長時間施工の際のヘッドの把持。元請の坂井塗装工業は「軽いとは言え、ヘッドの重量は3㎏ある。特に上向き施工では、長時間施工するとどうしても疲れてくる。できればマグネットなど施工の際の負担を軽減できる機構があれば有難い」と話していた。
今後は「ボルト周りなど添接部の塗膜も除去可能なヘッドも年内に開発を完了する」(アーキHILO)予定で、同時にNETISへの登録も進める。また、メクレルを施工する際のマニュアルも整備していく方針だ
総販売元はアーキHILO。また好川産業も代理店に加わり、本現場での安全対策に関して、負圧除塵機や防護服、マスク等全面的にバックアップしている。同社の持つ塗装関連の副資材や塗膜剥離剤『パントレ』と同様に有力なラインナップとして営業していく方針だ
(2020年9月10日掲載)